第18話:復活
通常、生き物にはリミットが存在する。そのリミットとは自分自身が無自覚に掛けている制限であり、そのせいで本来の70%から80%しか使えない。が、これを意図的に超えさせることができる、それが『ソウル・アーツ』。初期段階である『ソウル・アーツ:スターツアップ』では人間本来の100%の力を解放し、『ソウル・アーツ:ボイリングポイント』では150%、『ソウル・アーツ:エヴァポレーション』では200%から300%まで底上げする。強化されるのは魔力,腕力,筋力,体力の四つ。
だが、これを常時展開している人間がいる。それがクーフーリン。大海の呪いによって精神と自我が壊滅するのを防ぐために『ソウル・アーツ』で常に呪いを中和している。『ソウル・アーツ』を高める事でクーフーリン本来の戦い方を、呪いに身を委ねる事で大海の主としての戦い方をすることができる。
「邪魔だ…」
立ちはだかる敵を全て槍で斬り、刺し、投げ捨てながら突進していく。だが彼の目は敵ではなくある男を探していた。
フォルネ… どこだ。
「クソっ!うじゃうじゃ湧いて出てきやがる」
あーくそ、物事を冷静に考えられねー。在すべきことは… まぁいい、敵の殲滅だけだ。
はぁ…はぁ… いつになったら終わるんだ…?流石に… 魔力も、うぐっ… 体力の精神力も… 限界だ…!!
「なぁんだ、死に損ないじゃねぇか」
なんだ… 亜人の集団…?
「おい、誰かテキトーに殺っとけ」
「へい!」
「先に奥に向かうぞ」
奥…? !奥はダメだ!あっちは安全地帯!この状況下であそこを失うのはダメだ…!
「行か…せ、ないッ!!」
「ふんっ。いい目してやがる… くり取ってネックレスにでもしてやろうか。オレさまが相手してやろう」
「はぁはぁ…うっ、行かせ…はぁ…はぁ… ない…」
ダメだ、頭がくらくらする。足もガタガタだ… 立ってるので精一杯。でも…
「てめぇ、もう虫の息じゃねぇか。安心しろ、目は死んだ後綺麗に取ってやる」
「かかって来いやッ!!」
顔を上げて見た時にはもう剣は振り下ろす寸前だった。これはもう避けれないな。あーだめかー。
「諦めなぁ〜!」
鋭い音がした。いやそれ以前に待ち望んでいた声が聞こえた。あれは… フォルネウスだ。
「全くお主はだらしないのぉ。なに、安心してそこでわちの活躍を見るが良い!」
よかった… とりあえず助かった…のか?まぁ、いい、や…
「おっと、寝ちまった」
「おいガキ、オレさまはガキを殺す趣味はねぇ、殺されたくなけりゃ逃げな」
「誰がガキじゃと?お主に言われる筋合いはない、お主はわちにとっては童当然」
「おいおい笑わせるな、ここはガキのいていい場所じゃねぇ——」
頭を潰した。わちの右手で、なんの躊躇いもなく。
「は…?グラーダー様が…」
「口ほどでもなかったぞ」
「う、うわぁぁぁ!バケモンだぁーー!」
取り巻きの亜人どもが逃げてゆく。逃げるなら追わなくても良いのだが… あとあと寝込みを襲われちゃ後味悪いからのぉ、やるか。
「『ハイドロショット』」
「うぎゃ!」
遠距離から逃げてゆく敵を狙い撃つ。一発で当たった箇所が吹き飛ぶ威力じゃ、到底生き残れん。
「さてと。こやつを安全地帯に… 」
「おい… てめぇ… フォルネに何する気だ?」
「ん?なんじゃこの感じ… なんかお主… なに者じゃ」
「そんなことは…どう—」
ありゃ、倒れちまった。なんかフォルネの友人ぽいし、見捨てたって知ったら殺されそう… 仕方ない!コイツもどっか安全なとこに移動するか。
「おーい!フォルネウスちゃん!」
「んー?おー!ミランダか!ひさしゅうのぉ!」
「うん、久しぶり。この二人は、大丈夫なの?」
「どっちも限界が来ただけじゃ。そうじゃ、どっか安全なとこ知らんかの?こやつらを置いておきたんじゃが」
「それなら多分心配いらないよ、ほら」
「ん?亜人どもが一気に押されてる…?」
「この戦い、私たちの勝利みたいだね!なんでか知らないけど、数人そこの死体を見て叫びながら逃げていってたよ。もしかしてその亜人…」
「多分指揮官じゃな」
「ははは… あ、そうだ。とりあえずその二人おろして、応急処置するから」
一人一人に治癒魔術をかけているのか。じゃがこの治癒魔術… 手印魔術で起動しとる故出力がやや低下しとるのぉ。文字通り応急処置か。
「よし!これで多分大丈夫」
「わちが眠ってる間何があった?」
「それは…」
遠くでリンリンリンとベルの音が聞こえた。その音で目を覚ます。まだ少し視界が安定しないけど、横に座ってる青髪の子は…
「フォルネウス… 久しぶり」
「おう!わちはそんな気はせんがな」
「このベルの音… 勝ったんだね」
「うむ」
「フォルネウスは怪我ない?」
「大丈夫じゃ。そんな事より休め、とっくにここは戦地じゃないからのぉ。安心して休め」
それ聞いて安心したのか、フォルネは眠った。
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