第10話:悪魔の足跡
あの日から3日が過ぎた。主な戦地となった場所は復興が続いており、僕とアラヒサくんは怪我をミランダさんの治癒魔術で大方治してもらった。時々痛むけどそれは我慢だ。この騒動を受け魔道院側は魔道士教育を無期限停止とし、派遣できる魔道騎士を総動員で警備体制にした。この都市が狙われたのが今回で2回目なこともあってか一般兵も通常よりを多く動員されている。ちなみに停止となった理由は親側からのクレームだ。
後日マラクス大魔道士から今回の騒動についての言及が記述された新聞が都市の住人を釘付けにしていた。
「ふぅぅぅ… これで大方終わったかな…」
魔道生は実家に帰らず残った者達が招集され復興の手伝いをさせられている。
「フォルネくーん!そっち終わったー?」
「うん、終わったよ」
道に散乱した瓦礫を荷台に乗せる作業を延々と繰り返す。太陽の庇が体を突き刺す。
「フォルネウスちゃんは?まだ返事がない感じ?」
「うん… でも多分に寝てるだけだと思う。上手く言えないけど気配は感じるんだ」
「そう…」
どうやらあの檻はただ閉じ込めるだけじゃなくて対象を無力化する力があったらしい。現にあの檻から解放されてもなお寝ている。
「おい!フォルネウス、テメェ!サボってねぇでこっち手伝え!」
「分かった、すぐ行くよガレフくん。それじゃまたあとでね」
「ったく女なんかにデレやがって… よりによってミランダかよ」
「あれ、君たち知り合い?」
「…テメェに教える義理はねぇ、さっさと片付けんぞ」
えーすごい気になるなー。まぁ本人が嫌だっていうなら別にいっか、諦めよ。
〜ラース・セントラルに位置するラムセス城内にて〜
「ご用件はなんでしょうか、マラクス先生?いや今はマラクス大魔道士でしたか」
「フォッフォッフォ、ワシらだけの時は先生で良いですぞ、プトレマイオス殿」
「先生もそんなかしこまった言い方しなくて大丈夫ですよ」
「そうかそうか。それでは本題に移ろう。ここ近頃ラース内で所属不明の魔物や魔道士に攻撃されているのは知っとるじゃろ?実はその裏でさらに危険な事が起こっておる」
「北の大地の魔力活性化ですね」
「…お耳に入っておられましたか」
「ええ、そちらが派遣した調査隊の報告よりも先にね」
「今回の活性化によって流石に勘付き始めておる輩も出てくるじゃろうと予想しておる。じゃから…」
「討伐隊を編成し派遣したい、と」
「そうじゃ、間違った手の者より先に彼の地へ行き大亜帝王の復活を阻止する!それのための許可をとりに来た次第じゃ」
「確かに今は敵国は居らず平穏になって来つつある、けど10年前みたいな大掛かりな軍はもう存在していない。今いる兵の大半はあの戦いを経験していない若者だ、経験不足が過ぎる」
「ならあの男を呼び戻すのはどうじゃ?あの軍の生き残りの一人じゃ、奴一人いるだけでだいぶ変わるはずじゃ」
「僕も実はそうしたいが、所在がわからない以上何もできない。そこは分かってくれ」
「…この件は一旦保留という事でよろしいかの?」
「ええ、返事はまた後日」
「分かりました、それではワシはこれにて」
「…ふぅぅ… 国王の座は辛いさ、クレートス…」
〜同時刻 フォルネの育ったマージニア森林近辺に位置するカラタカラス村〜
教会の外に置いてあるベンチに腰をかける一人の男。目の前には広場で遊ぶ子ども達、微笑みながら見護る彼はどこか疲れ切っている。
「おれがアーサーだー!」
「ならぼくはべでぃー!」
何度も読み聞かせた英雄の話に準えて子ども達は遊んでいる、木の棒で作った剣と盾をぶつけ合いながら。
男はどこか懐かしそうな顔つきになりふと暗くなる。胸を締め付けているような苦しそうな顔だ。
「おっちゃんどーしたのー?」
一人の男の子が寄ってきて聞いた。最初は言葉が出なかったが、少し間を置いてから返事をした。
「なんでもネェさ、ほら遊んでこい」
男はその男の子を見送ると自身の重たい腰をあげどこかに歩いて行った。たどり着いたのは森の中に無秩序に散乱する石が置いてある場所だ。真っ直ぐ一際大きい石に歩いて行きそこに座った。懺悔するように、あるいは答えを求めるかのように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます