第9話:バルバトス

寮周辺から場所は移り、今現在商店街で悪魔バルバトスと名乗る男と戦ってる。空中には魔術の檻でフォルネウスが囚われている。

バルバトスの攻撃を凌ぐので精一杯だ。ヤツは武器を使わず素手で来る、そんでもって魔術でサポートしている。常に上下前後左右を意識させられる。

「クッ…!ヤバいな…」


流石の槍でも届かない位置から色々と飛ばしてくるのでまともに近づけない。と思ったら自ら僕の懐に飛び込んできて近接戦を繰り広げる。

「『ジャイアントマリオネット:ルーツ』」


「!!ここに来てゴーレム召喚かよ…!」


これはまずい、悪魔と呼称するほどはある!これで実質2体1、圧倒的に不利だ…!

「春二風『花風はなかぜ』」


たった一撃でゴーレムの右半分を切り落とした。この技は見覚えある。

「アラヒサ君!」


「大丈夫か、フォルネ君!」


「今ので助かった、ありがとう」


だがゴーレムは再生し始めている。

「増援かよ。ってかお前タフすぎ、なんで一学生がそんな戦えるん?さっさと死ねよ」


「生憎チョーゼツ厳しい師匠に鍛えられたんでね」


「何それ、意味わかんない」


再びバルバトスは近接先頭に入る、僕が攻撃を上手い事避けたり受け止めたりしている間にアラヒサくんが死角から切りに行った。だがもちろん読まれているようでアラヒサくんは肋に蹴りを喰らった。

「アラヒサくんッ!!」

一瞬目を離した隙に僕も腹に強烈な一撃を喰らった。それでも攻撃の手を止めず、すぐさま攻撃体制に入る。何度も攻撃を受け、何度も反撃をした。そうこうしているうちにバルバトスの攻撃の手が止んだ。流石に二人同時に相手するのはキツいのか?

「あーあ、面白くない。もう終わりにしちゃおっか」


「…!」


奴の周りに魔法陣が出た、これはマズイ!魔法陣は神級魔法を唱えるためのもの、他の魔法や魔術は魔法陣が省略できるが神級魔法は高難易度が故省略ができない。だが同時に使用できる者も限られる。

「I Sacrifice My Blood, In Exchange I Demand The Power To Destroy. One Blast Is All I Need」


「それって… 神との対話…!それは神級魔法をも上回る… 天体魔法!」


「『神之拳メテオ』」


あたり一面が赤く染まる。それは全てを無に帰す魔法、不平等で理不尽な純粋な暴力。頭上よりはるか先から見える身だるまになった隕石、この都市よりも遥かにデカく、そして一瞬で消し去ることのできる隕石。

避ける?どうやって。逃げる?どこに?阻止する?それこそ絶対無理だ。

「終わった」


誰もがそう確信した。だがその時、どこからともなく黒い影が迫り来る隕石の前に現れた。ものの数秒でその隕石を吹き飛ばした。自分の目を疑った、なんせ天体魔法に対抗できるのは同じ天体魔法だけだ。それをいとも容易く吹き飛ばし無かったことにした。都市の皆は安堵と絶句を同時に体験し言葉も出ない。

「バルバトス」


突然をそれは喋り出した。耳元で喋りかけられているような、すぐそばにいるような気配で。

「無用な手出しはするなと忠告したはずだ」


「別にこの都市ぐらい無くなってもいいじゃん、何をそこまで怒ることがある」


「…だからお前はいつまで経っても成長しないのだ」


あいつはダメだ。直感がそうワタシに呼びかけた。さっきのバルバトスとやらとは全く違う、オーラが違う!あれと対峙したら、いやそもそも相手にされないだろう。奴はいま隙だらけだ、武器も持ってない、奇襲などいくらでもできる。奴は誘っているだ、ワタシたちを。どうせ殺せないだろうとワタシたちを見下している!

「帰るぞ、バルバトス」


「あァ?なんでこんな奴らに背中向けて逃げなきゃ…」


「2度は言わない… 従わぬのなら切るぞ」


背筋が凍った、俺が生きてきた中で初めての体験だった。この俺が悪魔如きに怖気付いてるのか?いやそんな事じゃない、なんだこの殺気は!?この身の全てを掌握するようなこの感覚!!この俺でも手が震える… こいつに勝つイメージが湧かない!

「へいへい、分かりましたよ」


途端に空にポータルを開いた。

「フォルネウスは置いていけ」


「チッ… ハイハイ」


バルバトス達は檻を解除し、ポータルに入ってった。周りの人間は呆気にとられ時間が静止したかのように止まっていた。フォルネウスは上空から落ちてきた。

「フォルネウス!」


猛ダッシュでフォルネウスをキャッチにし行った。ギリギリの所で何とかキャッチできたが僕は瓦礫にぶつかった。

「フォ…ルネ…」


「フォルネウス!?無茶しないで、今治癒魔術を…」


フォルネウスが僕の胸を触れた瞬間彼女は光に包まれ僕の体に吸収されてった。最初は戸惑ったがやがて理解した、フォルネウスは僕の魂に戻ったのだ。少し彼女の鼓動を感じた気がした。



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