第5話:模擬戦

生徒2人による戦闘を見守る他の生徒たち、その中にワタシはいる。これは助太刀したほうがいいのか?だが聞いた話だと決闘を遮るのは侮辱に値すると、これは観戦しておいたほうが良さそうだ。

「ガレフ・オーランド…!?」


「知っているのですか、ミランダさん」


「え、ええ。彼は凄く有名な傭兵よ」


「傭兵?こんなに若いのに?」


「彼、身寄りがいないのよ。だから傭兵として金銀を稼いでいたの」


「詳しいですね、そんなに有名なのですか?」


「うん、私の街ではね。友達だったの」


あー幼馴染かー。これは一嵐吹くな。

「とりあえず君、僕を狙う理由教えてくれる?」


「これ以上答える義理はねぇな」


「そうか、残念だよ」


最初に動いたのは僕だった。地面を蹴り槍を胸めがけて前に押し出す、入った。

「な訳あるか、バーカ」


え、避けられ…

「うぐっ!」


殴られたのか…!メイスのリーチは槍よりも少ないはずだ。なのになんで。

「なんで?みたいな顔してんな、お前」


「…君、心でも読めたりする?」


「俺とお前とじゃ機動力が段違いなんだよ」


「らしい、ね」


「特に長引かせる理由もねぇから終わらせるか。次の一撃で完全に仕留める」


「やれるもんなら…やってみろ」


両者同時に地面を蹴った。

しょうがない、魔術を使うか。

錯覚魔術イリュージョン応用技『湯気突鬼フェイントインパクト』」


「こんなもんか、フォル… うがぁ!」


なにがおきた!?今確実避けたぞ?なんで顔面に当たってんだ!?

「魔術を用いた技だ」


「!?」


「君、これ以上怪我をしたくないなら下がれ。それでチャラにしてあげる」


「舐めんじゃねぇよ、このタコッ!」


「はいはいそこまで!」


「ドグマ先生!」


「チッ」


「僕ちんのいない間になーに喧嘩してんのー?流石に怒るよ?」


「すみませんでした」


「…」


「ガレフ君は何か言うことあるでしょ?全部見てたんだから」


じゃあ早く止めに来いよ、と一同思った。

「今回は俺の負けじゃねぇ。引き分けだ」


「全くツンデレなんだからー」


「違うわ!」


「はいはい、今日の授業はここまで、みんな帰った帰ったー。あ、ガレフ君とフォルネ君は僕ちんと来るよーに★」


あ、これ怒られるやつだ。まぁ僕はなにも悪い事はしてないし?ただの正当防衛だし?大丈夫でしょ。

〜一方その頃、クーフーリンは〜

こんな田舎に住んでいたのか。確かにこれじゃ見る物全てが新鮮なわけだ。この村にあいつの師匠が… 探すか。

「なんだい、あんた。見ない顔だね」


「… ええ、少し都会の方からやってきました。とある人物を探しているのですが… クレートス、この名前に聞き覚えは?」


「… ないね。さ、要は済んだだろ?帰った帰った」


隠し事をしているな。そんなに合わせたくないのか?まぁ円卓がした事を考えると妥当だな。

「じゃあ質問を変えよう。フォルネ・ボイルという少年は知っているか?」


「… まずあんたが誰か知ってから答えてやろう」


「レディ、俺は彼とは知り合いだ。信用していい」


「知り合いがなんのようだい?同級生とかなら今は授業中じゃないのか?」


「まぁそこは色々とややこしい。俺は彼の師匠に会いにきただけだ。なに、ちょっとした家庭訪問だ」


「… はぁ、別に悪い人じゃなさそうだし、あたしは嘘がつけない性格でね。あたしはドロテーア・ボイル、フォルネの母よ」


「そうですか、中に入っても?」


「ええいいわよ、大した物なんてお出しできないけど」

〜魔道院 ドグマ専用室にて〜

「それでー?ガレフ君はなんで攻撃したの?」


「…言いません」


「ま、君口硬そーだし?特別に僕ちんの魔術使っちゃお。『心情上書オーバーライト開示カミングアウト』。さっさと話しちゃって」


「はい、俺は昨晩の彼の戦闘を見ました。その時彼が使っていた槍に身の覚えがあって、もしかしたらと」


「へー、もしかしたら何?」


「神倉の軍神クレートス、彼が持っていた槍は軍神クレートスの槍ではないかと」


「へー」


確かに報告書にはそう記載があった。僕ちんも最初は疑ったけど、他の誰でもないクーちゃんが書いた報告書だもの、僕ちんも信じちゃうわよ。

「それで、本当に軍神クレートスの物ならそいつを殺して奪ってやろうと思った次第です」


「うわー凶暴ね。ま、とりあえず『心情上書オーバーライト解除ディスエイブル』っと」


「うわぁー!気持ち悪いぜ!頭では分かっていても抗えないこの感覚!!マジ気味が悪りぃ!」


「こーら、術者本人の目の前でそんなこと言わないの!」


「…さーせんした」


「とりあえずフォルネ君への不要な戦闘行為はしないように。これ破ったら除名よ?」


「ええ…でもコイツの了承さえあればいいっすよね?」


「まぁそれは時と場合によるかな、フォルネ君がいいと思ったなら戦闘してもいいわよ」


「ぜっっっっっっっっっったい、嫌です」


「んでだよ!いいじゃんかたまには!」


「だって痛いんだもん」


「んな幼稚な理由知るか!」


騒がしいわねぇ、今回の生徒たちは。

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