第2話:魔術と魔法

「諸君、ようこそエンランド魔道院に来てくれた。ワシはここの現魔道議員、マラクス大魔道騎士じゃ」


彼は18年前この魔道院の建設に大きく貢献した大魔道騎士。

「では少し前の話をしよう、と言ってもほんの18年前じゃ。この大陸は海の先に浮かぶ帝国、アトランティス帝国によって支配されていた。その支配下から人々を解放するために立ち上がった英雄がいた、そうアーサー・エンランドじゃ。彼はソロモン帝王を打ち倒しこの地を含め世界各国を救った。じゃがその時、ソロモンが吸い上げていた魔力が溢れ各地で異常現象が起きた。それが魔力暴走スタンピード。その正の面は魔の才能が開花する人間の数が増えた事、負の面は魔力を帯びた生物の活動は活発化した事じゃ。それに対処するべくワシはこの魔道院を設立し魔力暴走スタンピードに対抗しうる魔道騎士を、魔力暴走スタンピードについて研究する魔道士を育ててきた。お主らはここで4年間学び世界を魔力暴走スタンピードから護るんじゃ!それが我ら魔道の役目!」 


すっごいなぁ!やっぱり直で聞く演説は一味違うなぁ。

「というわけでこの一ヶ月は自分の進みたい道を決めるために基本知識を学ぶのじゃ。各自、解散!」


あれが魔の道を極めしお方かぁ。

「ねね、フォルネ。選択するコースはもう決めてるの?」


「うん、僕は魔道士コースを選ぶよ。ミランダさんは?」


「私は魔道騎士コースかな、意外でしょ?」


「なんで魔道騎士コースを選ぶのか聞いても?」


「もっちろん!実はね、私のおねぇちゃんが魔道騎士なの。大して凄い理由じゃないけどね」


「理由は人それぞれだよ、君のそれも誰も否定できない立派な理由さ」


僕達はまず歴史について学んだ。これまでの魔法や魔術の成り立ちやソロモン打倒までの歴史だ。まぁどれも村の教会で師匠に教えてもらったから特別新しい発見は無かった。次に受けたのは魔学だ。主に大地に根を張る魔力の川を見定める方法や静め方、これも師匠から教えてもらった。最後は模擬戦だ。魔力の籠った武器を用いて剣術を学んだ。僕は別に好きではないが、師匠に槍の稽古をつけられてたから嫌というほど上手い。まぁ第一志望は魔道士だから身につけなくてもいいはずなのに、師匠はやるって決めたら断固として変えない性格だからな。

「フォルネ君は凄いよね、全部トップレベルで才能がある!」


「僕はまだまだだよ、凄いのは僕の師匠さ」


「師匠?」


「うん、師匠は僕の村の教会に居候していて神父様の手伝いをしてる人なんだ。ある日からに僕に魔学や槍術を叩き込んだんだ、それでここまでの運賃も全部出してくれたんだ」


「へぇー凄い人なんだね。名前はなんていうの?」


「あーそれが、『俺にゃ名前なんざいらネェ、テキトーに師匠とでも呼びやがレェ』って言って聞かないんだよ、だから名前も知らない。っていうか村の人も知らないと思う」


「ミステリアスな人なんだね…」


「あ!あれクーフーリンさんじゃない?ご無沙汰してます!」


「ん?フォルネか。探してたところだ、この後暇か?」


「え?まぁ今日の授業は終わったので暇です」


「じゃあ俺の部屋に来い、話がある」


僕は半ば強制的に連れてかれた場所は中央塔の個人魔道工房だった。中は落ち着いた雰囲気でソファーと机が窓側に、壁側には本棚と広い空間、多分魔法陣とか描くためのスペースだろう。

「座れ、紅茶がいいか?」


「はい、痛み入ります」


「んでだ、話というのはな… 魔道騎士コースを受けろ」


「んぐっ!え?僕がですか!?」


「ああ、魔力量が多い者が入るのは必然的だと思うのだが?」


「魔力量が多いって、そんなわけ無いでしょう?僕は常人並みですよ」


「嫌味か貴様?」


「そ、そんな滅相もない!」


「じゃあ本当に自分は常人並みと錯覚しているのか?一回この魔光石持ってみろ」


渡されたのは、正確には投げられたのは手のひらサイズの魔光石。魔光石とは触れている物の魔力量に合わせて光るという便利な魔力測定器、しかもこのサイズとなると上限はそこそこの物だがグランドが触れると破裂する。グランドになる者は魔力量を測るのに1m3のものが必要となる。

「使い方は手のひらに魔力を集中させる」


「は、はい。ええとこうです…」


魔力を込めた瞬間、石が破裂した。

「ほらな」


「え、これ…不良品じゃないすか…?」


「そんなわけあるかアホ。これがお前の魔力量だ、ちゃんとした量を測るには地下にある大魔光石チェインバーに行かないといけないわけだが」


「でも僕は魔道騎士になるつもりは無いですよ」


「…ならお前に一つ重大なことを伝えなければいけないようだな」


「なんですか急に」


「魔道騎士を育成し続けてる理由は知っているだろう?」


「えぇ、さっき演説で説明してました」


「あれは表向きの理由に過ぎない、今から教えるのは本来グランドの称号を得た者だが知ることのできる情報だ、くれぐれも多元無用に」


「はい」


「ソロモンが倒されたことによって生まれた副産物が魔力暴走スタンピードだ。だがもう一つの副産物も産んだ、それが魔王復活だ」


「魔王?そんなのいましたっけ?」


「…12英雄詩に出てくる魔の王アレイスター、流石に知っているだろう?」


「あーあの子供に聞かせる詩に出てくる魔王の話ですか。もしかしてクーフーリンさんってそういうの信じちゃう人?」


「俺を痛い奴みたいに見るな!実際にいるんだよ、魔王」


「いやいやそんなわけないじゃないですかハハハ…」


「こいつ俺の事舐めてんな…ん?もう時間か。俺は今から円卓会議に出席するから帰っていいぞ、とにかく考えといてくれ。」


「えぇそんなこと言われましても…」


と半ば強制的に外に出されました。僕は確かに適任かもしれないけど、僕は僕のやりたい事がある。それを諦めてまで世界清和の為に命を賭けるのは… 師匠だったらなんて言うかな…

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