第34話 『精霊の力』

 俺たちがアンドロスを発って、三日が経った。航海は順調、しかもエルフの船は簡単な操作で、目的地まで『自動渡航』してくれる。

 いやぁドワーフの鍛冶技術テクノロジースゲェわ。これを活かせなかった貴族ア○どもは、6能のキワミだな(笑)


「アレク、リラの姿が見えないけど?」

「反対側で、盛大にリバースしとる」


 俺が親指で差すと、セレナは「ご愁傷さま」とお祈りした。多分、生まれて初めて船に乗ったんだろう。


「レンは船酔いとかないか?」

「うん。大丈夫だよ、お兄ちゃん」


 レンは必要以外、外出したことはほとんどない。これも精霊の『加護』の賜物か。


「お兄ちゃん、この船はどこに向かってるの?」


「とりあえず、大陸の西端だな。そこは魚人族が棲む地域らしい。まずはそこで情報収集だ」


「……情報収集『できれば』いいのだけどね」


 何やら、意味深なことを呟くセレナ。


「あっ、見てお兄ちゃん! イルカさんの群れだよ!」


 イルカだぁ? こんな寒い地域を遊泳しとるかいな? レンの指差す方向を見ると、確かにイルカ『っぽい』集団が、こちらに猛スピードで迫ってきた!


「ヒャッハー☆ ヒャハハハハッ!?」


「……………………」


 ウンザリするほど聞いた世○末の雄叫び。イルカに偽装したモーターボートで、モヒカンどもが愉快に爆笑していた。

 コイツら、節操ってもんがないのか。ヒマなのは結構だが、俺たちに関わるな。百●あって一利ねぇんだからよ(呆)


「セレナ、まさかとは思うが……」

「帝都とは無関係な『海賊』ね」


 んだよ、そりゃ。何故か、敵同士で潰し合わない『謎ルール』でもあるのか?


「アレク、このままじゃ接舷せつげんされるわ!」

「分かってるさ!」


 ドワーフご自慢の船でも、振り切れんとは。ったく、ムダな箇所だけ張り切るなっての。


「お兄ちゃん、私に任せて! あっち・・・にいっちゃえ!」


 レンが両手を組んで何かを唱えると、晴れ渡った空が急に曇り雷雨を呼び寄せた!


 これが『精霊』の力……ナイスだレン! 後はお兄ちゃんに任せな! 俺は強くイメージしてブーメランを巨大化、水面スレスレで投擲とうてきした!


――ゴワァアアアアッッ!!


 刃はその場で高速回転、海賊を巻き込み巨大な竜巻となって、天空へと巻き上げた!

 これは俺の予想以上だ。今までは状態異常『オンリー』だったが、物理的に攻撃できるようになったのはデカい。


 討ち漏らしはセレナが掃討し、海はあっという間に静かになった。『あっち』というのが何処を指すかは、敢えて言うまい(ゲス顔)


「うぅ……やっと収まったッス。あれ? なんか騒がしかったッスけどお師匠、何かあったんッスか?」


「リラ。お前はサボったから、甲板清掃な」


 海水まみれの甲板を見て、リラは「なんでぇ!?」と頭を抱えた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る