『ロレア編』

第33話 『未知の大陸』

 ボチボチ書いてます(><)ゞ


 ◆ ◆ ◆


「元皇女か。なんで家名を棄ててまで、冒険者からシーカーになったんだ?」

「……あまり驚かないのね?」


「セレナの太刀の柄、帝都の紋章が入ってりゃな。なんかワケありだった雰囲気だし、敢えて突っ込まなかった」

「そう……黙ってて悪かったわ。『ストラスブール』というのは、帝都で私が唯一尊敬した剣の師匠から拝借したわ」


「別に気にしてねぇさ。身分を棄てたってことは、相当込み入った事情があったんだろうな」


「ええ、私の故郷アケメネス。別称べっしょう『暴虐の帝都』……その二つ名通り、圧倒的な力を用いて蹂躙じゅうりんの限りを尽くしているわ」


 蹂躙ねぇ……ケベックで、オラついてた連中の『下位互換』か。


「帝都の目的は、武力による世界統一。その為には手段を選ばないし、非業なことも一切躊躇ためらわないわ。私は……帝都のやり方についていけなかった」


「ふぅん? 世界○服とか、このご時世にそんなヒマ人がいるんだな」


 俺は耳をほじりながら、聞いた。見せ物小屋でも飛び掛かりそうだったし、セレナの性格的にも耐えられなかっただろう。


「帝都は『敵対』する者には、等しく『滅び』を与えたわ。外部はもちろん、内部もね。特に『皇族』のやり方に反発した者が、どんな末路を辿ったか……知る者は少ないわ」


 知らぬ間に消されるか。よくそれで『国』が成立するな。


「……帝都内部では、皇族による『独裁』状態が長く続いているわ。アレク……あなたが行こうとしている帝都領は、安全地帯なんて一つもない。国境を越えし者、一切の『希望』を捨てよ。それが『暗黙の了解』となってるわ」


 セレナの『警告』を俺は、「くだらねぇな」と一蹴した。


「んなもん、本物の『地獄』を知らねぇ奴らが言うことだ。俺には一切、関係ねぇしな。セレナだってウンザリして、帝都に見切りをつけたんだろ?」


「そう……ね。ただの『自己欺瞞ぎまん』かもしれないわ。それでも私は、帝都のやり方についていけなかった……」


 セレナは目を伏せた。よほど、過酷な環境下にいたんだろうな。


「心配すんな。危険地帯っつっても、地上の話だろ? シーカーからしてみりゃ、こんな『安全地帯』はねぇ」


「あなたはブレないわね。けど、行ってみたら分かるわ。この世の『地獄』を見ることになる。それと帝都で、要注意人物がいるわ。名前はサミュエル・ディクス・アケメネス。帝都『第一皇子』にして将軍。そして、私の実兄でもあるわ」


「セレナにも兄貴がいるんだな。将軍サマか……ヤベー奴なのか?」


「とてもじゃないけど、そんなレベルじゃ収まらないわ。兄が通った道は、例外なく屍の山。その数は少なく見積もって、5桁以上……。兄と刃を交わして、生き残った者は唯一人とていない」


 ふぅん? 俺が『狩ってきた』魔物らも、それくらいの数だ。将軍サマは、俺と『同じ臭い』がするな。まともにぶつかれば、どっちかが『確実』に4ぬだろうな。


「成程。一応、頭の片隅に置いとくわ。貴重な情報、どうもな」


「……今の話を聞いて、全く臆さないのがアレクらしいわね。もう止めないわ。私も『覚悟』ができたしね」


 人間にビビってたら、シーカーなんて務まらんだろ。冷えてきたし、ここで俺とセレナは解散した。



 ◇ ◇ ◇


――翌朝。


 エルフの森を出て、近くの波止場から俺たちは大陸に渡る直前だった。船はバッツから借り受け、航海図も用意してもらった。


「レン、もう体は平気なのか?」 


「うん。まだちょっとダルいけど、大丈夫だよ。もう発作もほとんどないし、お兄ちゃんと初めて旅に出れるから楽しみだよ」


 流石は俺の妹。まさか家以外で、レンと一緒に過ごせるなんてな。


「私もまた、お師匠にお供できて光栄ッス!」

「……ちょっと待て。なんでどさくさに紛れて、ついて来ようとしてんだお前は?」


 俺は体の3倍以上ある、荷物を背負ってるリラに突っ込んだ。


「いやぁ……これはその。部屋で寝てたら、兄者にもっと鍛えてもらってこいと肘を落とされまして、慌てて準備してきました。朝ごはん食べてなくてよかったぁ……」


「お前は残っても、なんの役にも立たんだろうが。アレク、荷物持ちでも雑用でも好きに使ってくれ。このムダ飯食らいをな」


「お……おう。しかし悪いなバッツ、色々と準備してもらって」


「気にするな。何かあったら、この笛を吹いてくれ。我ら『エルフ連合』が、いつでもどこでも駆けつける」


 そいつは頼もしいな。いざとなれば、バッツらの力を借りるかもしれねぇ。



 帆を揚げ、俺たちは大海原に漕ぎ出した! この先、かつてない『死闘』が待ち受けている未知の大陸へ!

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