第30話 この野郎、4ねぇっ!

 ギャグ回 ② です^^


 ◆ ◆ ◆


 俺はセレナとレン、それに人質となってたエルフらを連れ、大型馬車で『エルフの森』を目指していた。


 孤児だった俺らは、物心ついた頃から色んな施設をたらい回しにされた。その都度、汚ぇガキだと大人に暴行された。


 レンも当時は発作が酷く、いつ突発的に死ぬか分からない状態だった。俺はレンを庇い、毎日顔が盛大に腫れた。

 レンの薬代も高く、孤児への支援金や俺が路上で靴磨きのバイトをして、なんとかまかなった。我ながら、よく当時を乗り越えたなと思う。


 長年苦しんできたレンが、やっと『完治』する。俺たち兄妹はえらく『回り道』をして、ようやく『人並み』になれるのだ。


「レン……完治したら、どうしたい?」


「……ずっと、お兄ちゃんの側にいたいな。今まで、離れてた時間が長かったから」


 なんて健気な妹なんだ。お兄ちゃん、感激! これからは、俺たちの『時間』を大切にしような! そうこうしてる内に、乗り合い馬車は『エルフの森』へと入った。


 ◇ ◇ ◇


「お師匠っ、お久し振りッス! うぅ……またお会いできて光栄ッス」

「ハハハ、たったの『一週間』だけどな」


 俺たち『師弟』は、再会を喜んだ。リラもあれから兄貴バッツにシゴかれたのか、精悍せいかんな顔つきになっていた。


「お師匠、ここから先は私が案内するッス。申し訳ありませんが、徒歩でお願いします。なんせあちこちに、ゲリラトラップや地雷を仕込んでますので」


 成程……そりゃ馬車じゃ引っ掛かるわな。今後、貴族はうかつに攻められない。『地の利』を活かした難攻不落の森となった。


「お兄ちゃん、その女性ひとがリラさん?」

「ああ。俺の『秘蔵っ子』だ」


 リラを紹介すると、レンは舐めるようにリラを見回した。


「あの……何か?」

「お兄ちゃんは渡さないから」


 凄みを利かせるレンに、リラは戸惑った。俺を手招きし、レンに気づかれないよう囁いた。


「……お師匠、話が違うじゃないッスかぁ!? 華奢きゃしゃでお淑やかで、保護欲をそそるんじゃなかったんッスかぁ!?」

「……シッ! 声がでけぇ! 『普段』は、とてもいい子なんだよ」


 リラは案内しながらも、「本当ッスかぁ?」と疑り深かった。



 ◇ ◇ ◇


 俺たちはリラの案内で、無事にエルフたちの『拠点』にたどり着いた。巧みな偽装カモフラージュが施されており、もう森というより密林ジャングルだ。

 拠点ではムッキムキの精鋭エルフらが、張ち切れんばかりの筋肉で訓練に励んでいた。


「兄者、今戻ったッス」

「出迎えご苦労。久し振りだな、アレク」


 俺は指揮官コマンダーのバッツとガッチリ握手をした。丸太のような太い腕で、血管が浮き出ている。


「よぉ、久し振り。まずは故郷の奪還、おめでとさん」

「ウム、これもアレクが人質を解放してくれたお陰だ。改めて礼を言おう」


「にしても、壮観だな。鍛え過ぎなんじゃないか?」

「これでもまだ足りないくらいだ。よければ、アレクも一緒に『やらないか』?」


 バッツの甘い誘いを俺は「だが、断る」とスマートに拒否した。危ねぇ……『引き返せない』世界に、足を踏み込むところだった……(汗)


「それは残念だ。約束通り、妹君の為に『秘術』を使う準備は出来ている。森の最奥の洞窟で、日の出に『儀式』をり行う。念の為に言うが、本来なら門外不出だ。くれぐれも……」


「分かってるって。見聞きしたことは生涯、口外にしないさ」


「ウム。お前たちなら、信用できる。改めてようこそ、我が故郷に。奪還を祝して、我らエルフ族が盛大にもてなそう!」



 日が暮れ俺たちは祝賀会に参加し、見たこともないご馳走や酒が振る舞われた。リラはべろんべろんに酔っ払い、羽目を外した。


「いやぁ本当にめでたいッス! 兄者が私兵どもを千切っては投げ、千切っては投げての獅子奮迅の大活躍っ! 最近は『薄毛』に悩んでいたので、私がアデ○ンスの増毛剤を……」


「この野郎、バッツ○リーカー! 4ねぇっ」


「んぎょえ"ぇえ"え"え"え"え"え"え"えっっ!?!?」


 兄貴の『愛の抱擁』で、リラは昇天した。スッゲェ生々しい音が響いたけど、リラのやつ大丈夫かいな……(´・ω・`)?

 いくら酔っ払ってたとはいえ、少しは学習しような残念エルフ(-。-;)

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