第24話 『御神体』

――ドゴォオオオオンッ!


 迷宮下層。凶悪種は断末魔すら上げられず、上半身が消し飛んだ。


「フム? ドワーフが開発した『ろけっとらんちゃー』というのは、なかなか使えそうだ」

「……アンタなら、素手でも殴り56せそうだけどな」


 手応えを感じるバッツに、俺はこっそりツッコミを入れた。


「これなら『訓練』次第で、即使えそうだ。アレク、迷宮の攻略は?」

「こっちも順調だぜ。ボス部屋前まで攻略済みだ。だが、ちょいと気になることがあってな」


 バッツの「気になること?」に俺は、「ああ」と頷いた。


「貴族とその取り巻きどもだ。最近動きがねぇと思ってたら、最下層で何やら崇めてたな」

「なんだそりゃ? 崇拝熱心なのは結構だが、余所でやれ」


 そりゃそーだ。そもそも迷宮は、誰のものでもないしな。


「気になるわね。不穏な動きをされる前に、私たちで様子を見にいきましょう」


 セレナに俺は、「違いねぇ」と同意した。バッツと別れ、最下層へと向かった。



 ◇ ◇ ◇


 ボス部屋直前。雰囲気は一変し、ならず者どもが跳梁跋扈ちょうりょうばっこしていた。てっきり『拠点』の奪還に来るかと思ったが、武装した私兵は各自せわしなく動いていた。


 その中央ででっぷりと太った貴族が、陣頭指揮を執っていた。連中の親玉と思われるが、一目で『素人』だと判った。大方、カネに物を言わせた感じか。


「さぁ皆さん、御神体様に『貢ぎ物』を捧げなさい! 必ずや、我らに味方してくれます! このトレーダーの名に賭けて!」


 御神体……? トレーダーと名乗るデ○は、目の前の巨像を熱心に拝んでいた。高さ30メートル以上で、筋肉質で身の丈ほどの巨剣を携えていた。


「……っ! アレク、あれを……!」


 セレナが指差す方向。そこには、私兵に引きずられたエルフの亡骸が多数あった。長い奴隷生活に耐えられず、命を落としたのか。

 ト某は鼻息を荒くしながら、一心不乱に何かを唱える。そしてデ○の号令下、山積みの遺体に火を放った!


「なんて酷いマネを……!」


 憤るセレナ。まぁ気持ちは解るぜ。4体蹴りする奴は、例外なくク○だからな。さて、どうするか……デ○だけ生け捕りにするか?



「――あ"ぁあ"あ"れぇえ"え"え"え"ええええっっ!?!?」


 俺の考えがまとまらないうちに、御神体の上から何かが降ってきた。よく見ると、バッツに投げ飛ばされたリラじゃねーか!?


――ドゴォオオオオンッッ!!


 リラは『御神体』の顔面にダイブし、ずるずると墜落した。俺たちはもちろん、デ○一同も呆気に取られる。


「なっ……誰ですっ!? 新鮮な儀式を妨害するのは!?」


 デ○は興奮しながら、ドスンドスンと地団駄を踏んだ。お前は、なんつータイミングで戻ってくるんだ。


――ゴゴゴゴゴゴ……!


 御神体が、ゆっくりと動き出す! 閉じていた両目がカッと『開眼』し、台座から飛び降りた! 真下のリラが、慌てて避難する。

 御神体は咆哮ほうこうを上げながら、巨剣で薙ぎ払った! 私兵は為す術もなく、肉塊を散らした。


「なんということだ……! 御神体の『コロッサス』様がお怒りだ! もう終わりだぁ!」


 コロッサスだぁ……? 探索者ギルドで、討伐リスト最上位の『迷宮ボス』じゃねぇか! ボス部屋前かと思ったら、なんてことはねぇ。この空間そのものが、ボス部屋だったとは。


 コロッサスが、全身に突き刺さるサツ意を放った! 目に入るもん、例外なくぶっ56すってか? この緊張感は、カマキリ以来だ。


 俺は唇の端を、広角度に吊り上げた。いいぜ、来いよ。とことん8り合おうぜ。最後に立ってたモン勝ちだ!

 


 

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