第23話 『最強 vs 最弱』

「へ……? お師匠と『模擬戦』ッスか? って、あ痛っ!?」


 俺の『先制』が、リラのドタマに直撃した。リラは頭を抱えながら、涙目になる。


「ヒドイじゃないッスか、お師匠っ!? いきなり仕掛けてくるなんて!」

「敵は『待たない』って言ったハズだ。今ので『致命傷』になったら、どーするつもりだ?」


 俺の『本気』を悟ったリラは、慌てて弓で反撃してくる。それでいい。迷宮ここじゃ『判断ミス』が、4に直結する。

 リラの反撃はかわすまでもなく、明後日の方へ飛んでいった。てか、この距離で外すか……?


「もっとよく狙え! 『反撃』のチャンスは限られてるぞ! みすみす敵に『ターン』を渡してどーする!?」

「ちゃんと『狙って』るッス! あーお師匠の『必中』スキルが、羨ましいッス」


 本人リラ的には、大真面目らしい。以後、一方的に俺に『タコ殴り』にされる展開が続いた。『攻撃』に関しては論外だが、リラにはそれを『補って余りある』ほどのモノがあった。


 それは自他共に認める『耐久力』だ。俺の必中スキルに、精霊のブーメランによる状態異常。ランダムで何らか効果があるハズなのに、リラは特に問題なく・・・・動いてた。


 まさかとは思うが、リラは『全状態異常』に強耐性があるのか……? これは俺にとっても『想定外』だ。

 同時にこれは、今後の『課題』でもある。今後、状態異常に耐性、あるいは『無効』の敵は必ず出てくる。


 皮肉にも今まで、ほぼ『ワンパン』で仕留めてきた弊害があらわれた。早急に『対策』を練る必要がある。

 俺の頭の中は『それ』で埋め尽くされ、気がつけばセレナが『ストップ』を掛けていた。



 ◇ ◇ ◇


「ヒドいッスよ、お師匠っ!? 『模擬戦』なのにボコボコにするなんてぇ!?」


「ごめんなさいね、リラ。彼、加減ってのをあまり知らないから。でも、ちょっと8り過ぎよね」


 流石のセレナも、リラに同情していた。


「俺も反省しとる。とりあえず『合格』だ」


「えっ……!? マジっすか! 頑張って耐えた甲斐があったッス! 兄者、見てました!? 今まで迷惑を掛けたお詫びとして、アデ○ンスのヅ○を買って……」


「48のサツ人技の一つ! 宇宙旅行スペーストラベルッッ!!」


「おぎゃぎゃぎゃぎゃはぎょえぇええええええええええええええええええええっっ!?!?」


 兄貴バッツに担がれ、力任せにブン投げられたリラ。瞬き厳禁で、キラーンと☆となった。あの距離で『吸い込む』か……リラの奴、無事に戻ってこれるのか?


「……複雑な気分だぜ。俺は将来、最も『脅威』となる存在ヤツを育ててるかもしれねぇ」


「ん? アレク、今なんか言った?」


 セレナに俺は、「なんでもねぇ」とかぶりを振った。さてと。リラの育成も一段落ついたし、俺も本格的に迷宮の探索を始めるか。

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