第18話 『力』が欲しいか?

「いいだろう。エルフの情報を聞き出す為、助けたんだからな」

「……分かりました。アナタを信じて、お話するッス」


 リラはゆっくりと話し始めた。


 元々エルフは、森の奥地にんでいた。だが貴族連盟を中心に森の開拓が進み、エルフの生活は一変した。


 貴族と契約した民間私兵団により、森は焼かれ多くのエルフは連行された。無論、エルフの若い衆は立ち上がったが、人質を取られた為にあまり抵抗できなかった。


 結果的に男のエルフは遺跡に強制連行され、鉱石採取などに従事させられた。女のエルフは採掘場では使い物にならないと判断され、見せ物小屋に移された。


 リラは団長に「ロクに芸も覚えない無能」とムチを打たれたが、とある奴隷商に『再生能力』がバレた。リラは見せ物小屋の『メイン』となり、今日こんにちに至る。



「成程な、今までよく耐えたな。『交渉次第』で、俺がエルフを解放してやってもいいぜ?」


「……………………」


 リラはうつむいて、黙ったままだ。まぁすぐに信用しろってのは、流石に虫が良すぎるか。


「まさかとは思うが、今後もずっと貴族の言いなりか? 連中はお前らのことなんざ、ほぼ眼中にねぇ。いつかは『報われる』なんて、愚かな考えは今すぐ捨てろ。俺自身、それで騙され続けてきた」


「アレク……」


「けど、騙され続けて色々とモノを覚えた。お前らが『望まない』限り、現状は何も変わらねぇ。俺は『力』を渇望した……その結果、ツキが回ってきた。お前らは『負け犬』のままでいるつもりか!?」


 かつて、精霊に言われたことをリラに伝える。リラの瞳に光彩が甦った。


「……いいわけないッス! 私たちは静かに暮らしてただけなのに! あんな奴らの私利私欲で、何もかも滅茶苦茶にされたッス!!」


 今まで溜め込んだモノを、ダムが決壊したかのように吐き捨てるリラ。俺の満足いく答えだった。


「いい返事だ! ならば、俺がお前らに『力』を与えよう!」


「え……ちょっと待って、アレク! あなたまさか……!?」


 早とちりするセレナに俺は、「ん?」と小首を傾げた。


「何を勘違いしてんだ、セレナ。俺が直接、貴族連盟に乗り込むとでも思ったか? ヒマ人に構ってるほど、俺もヒマじゃねぇ。俺が言う『力』ってのは、こいつエルフらを『鍛える』って意味だ」


「「え…………??」」


 唖然となるセレナとリラ。


「ん? なんか変なことでも言ったか? 考えてもみろ。俺が貴族どもをボコっても、根本的な解決にはならんだろ? ア○どもにエルフに手を出すと、“痛い目”を見るってのを学習させねぇとな」


「な……成程ッス。エルフ族はあまり戦闘は得意じゃありませんが、よろしくお願いするッス」


 これを聞き、俺は唇の端を吊り上げた。


「俺も戦闘は、得意じゃなかったぞ? けど、心配すんな。俺が『責任』を持って、お前らを強くしてやるからな。リラには迷宮に潜ったら、他のエルフの場所に案内してもらう」


 意外とすんなりいったな、交渉。

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