第12話 俺には一切関係ない

「なん……だと……?」

「ウソ……でしょ……?」


 俺とレンは、同時にセレナに振り返った。


「セレナ、今なんっつった……?」

「レンちゃんが『完治』する方法……」


 全部言い終わる前に、俺はセレナに食い入るようにガン見した。


「それは本当なのかっ!? レンの持病が治るって!?」

「ちょっとアレク、落ち着いて! 私も『噂』しか聞いたことがないわ」


 セレナは若干引き気味だが、俺にとっては『最重要』だ。レンに関わることは、全てにおいて『優先』する。


「私が元『冒険者』だってことは、以前話したわね? その時にある『噂』を聞いたのよ。この街から、遥か北上した所に『未踏破の遺跡』があるみたい」


 遺跡か……そりゃ確かに初耳だ。というのも、シーカーは登録している迷宮を『攻略するまで』は、他の迷宮に出稼ぎにいくのは『ご法度』とされている。


「その遺跡は『貴族連盟』が、直轄ちょっかつで管理しててね。世界でもまれに見る希少な鉱石が、沢山採れるみたい。貴族連盟はその鉱石を独占する為、近場の森に棲んでいる『エルフ』を無理やり、採掘に使役しているって聞いたわ」


 貴族連盟……俺も噂程度なら、聞いたことがある。『人間のク○』の吹き溜まりで、鼻持ちならぬ連中みてぇだな。


「で? 貴族サマや奴隷のエルフが、レンの完治にどう関係してんだ?」


「そのエルフは、“秘術”をもちいるみたいなの。なんでも『あらゆる病』を治す、エルフにしか使えないスキルみたいよ。って、アレク? 何をしているの?」


 その話を聞いた瞬間、俺はパッカーに荷物を詰め始めた。


「何って、見りゃ分かるだろ? 可及的速やかにエルフの救助に向かう。酷使されて、潰される前に俺が貴族連盟を潰す」


「……っ!? あなた、自分が何を言ってるのか分かってるの!? 貴族連盟だけは敵に回すなというのは、全ギルド『暗黙の了解』よ! って、聞いてるの!?」


「さぁな。暗黙の了解とか、俺には一切関係ねぇな。それに貴族連盟じゃなくて、俺を敵に回すなって言いたいね。素直にエルフを解放するなら、見逃してやる。別に『小物』が何しようが興味もねぇしな、俺の邪魔さえしなければ」


 唇の端を吊り上げる俺に、セレナは頭を抱えた。


「……やっぱり、話すべきじゃなかったかもね。それに遺跡だって、迷宮に『認定』されているか分からないわ」


「そいつぁ現地に行ってみねぇと、なんとも言えんな。とりあえず、貴重な情報提供に感謝する。レン、待ってろよ。お兄ちゃんが、必ずなんとかしてやるからな!」


 レンが「いってらっしゃい、お兄ちゃん♪」と見送る一方、セレナが「待ちなさいアレク、まだ話は終わってないわ!」と慌てて、俺んを飛び出した。

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