第10話 忌まわしい記憶

「で? セレナはいつまで、俺について来るつもりだ?」


 陽が沈む刻。ようやくギルドから解放された俺は、素材を換金。大金でレンの薬を買って、帰路に着いてる途中だ。何故か、セレナがついて来ている。


「ちょっと気になることがあってね。アレクこそよかったの? ギルドで、有名なパーティーに多数勧誘を受けたのに」


 お節介なセレナに俺は、「あのなぁ」と嘆息した。


「俺は『しばらく』誰とも組む気はない」

「……まぁ『あんなこと』があったから、人間不信になるのも分かるけどね」


 なんか勘違いしてるみたいだな。


「別に俺は、人間不信じゃねーよ。奴らと組んでたのも、止むにやまれねぇ『事情』があったからだ」


 俺はセレナに事情を話し始めた。シーカーの訓練期間を終えた直後、生まれつき体が弱いレンの容態が急変した。


 深夜帯に高熱でうなされ、俺はレンを抱きかかえて病院に転がり込んだ。結果、緊急入院しないと今夜が峠と医師に告げられた。

 俺は医師に頼み込み、金は必ずなんとかするから、レンを助けてほしいと泣いて訴えた。


 もうなり振り構ってられなかった。レンが助かるなら、何でもすると固く誓った。

 ギルド内で必中スキルをアピールし、片っ端から「俺を至急雇ってくれ!」と土下座した。


 そこを幸か不幸か、奴らに目をつけられた。


 最初は雑用係だったが、俺の必中スキルが『本物』だと分かると、奴らはコロっと手のひらを返した。

 俺を戦闘メンバーに加え、希少種狩りが始まった。給金も予想以上に貰えた。


 俺が装備品を買わなかったのは、レンの入院費に充てたからだ。


 この頃からだ。奴らの態度が、一転したのは。給金も徐々に減っていき、酷い時はピークの10分の1以下だった。

 役割も希少種狩り以外は荷物持ち、見張り、囮、パシりなどエトセトラだ。


 流石の俺も抗議したが、ゴ某は「ハァ? 何でもするっつったよなァ?」の一点張りだ。この時、俺は感覚が麻痺していたかもしれん。


 で、決定的だったのが、あの『追放劇』だったワケだ。なんか長い『悪夢』から、解放された気分だった。



「成程ね……よくそんなブラ●ク環境に長くいたわね?」


「全てはレンの為さ。血が繋がってない義妹とはいえ、俺にとっては唯一の『家族』だ。それに奴らに騙され続けた所為せいで、色々と覚えた」


 俺は唇の恥を吊り上げながら、続けた。


「この世界に『神』などいない。あるのは、残酷なまでの『理不尽』さ。『敵』に遭遇したら、逃げるか56すかの二択。そして、改めて俺のレンは可愛い」


「……最後のがよく分からないけど、まぁいいわ。ねぇアレク。折角だからあなたの妹さんに挨拶あいさつしておきたいのだけど、構わないかしら?」


 セレナがレンに? 俺はしばし考え……


「まぁ知らない仲でもねぇしな。ただし、最初に断っておくぞ? レンは、ちょいとばかり『個性的』なんだ。俺んで何があっても、目を瞑ってくれ。約束できるならいいぜ」

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