第9話 俺のレベルがバグった件

「アレックス・メンフィス。任務完了で、迷宮より帰還しました」

「あっ! アレク君、無事なのっ!? 心配してたんだよ?」


 探索者ギルドで受付嬢のリゼさんが、俺とセレナを迎えてくれた。


「ええ。色々・・ありましたが、なんとか帰ってこれました」

「いやぁ元気そうでよかったよぉ。ゴート君からは、行方不明って聞いてたからさ」


 あの野郎ども、よくギルドにウソ報告が出来るな。


「ゴートらは迷宮内で、アレクを見殺しにしようとしたわ。その報いで、彼らは命を落とした」


 セレナが約束通り、“事故報告”した。厳密には4んでないが、まぁ『探索者』としては終わった。


「そうかい。ま、いなくなっても惜しくもなんともない連中だったからね。アレク君も災難だったね。ゴート君らの『死亡』手続きは、私でやっとくよ」


『除名』され万が一戻ってきても、もう奴らに籍はない。


「しかし、ゴート君も呆れたねぇ。迷宮ボスを倒す! とかイキ巻いて、結局『帰らぬ人』になるなんて」

「ええ。職務放棄したものですから、俺とセレナで迷宮ボスを『片付けて』おきました」


 俺の討伐報告にリゼさんは、「えぇっ!?」と驚いた。


「君たち二人でかいっ!? そりゃ不可能じゃないだろうけど……」

「私は特に何もしてないわ。手柄はアレクに与えてちょうだい」


「それにきっちり、“証拠”も持って来ました」


 俺はカウンターの上に、カマキリの右腕から採取した素材を置いた。リゼさんは『専用ルーペ』で鑑定し、目の色を変えた。


「本物だ……! いやぁ驚いたね。迷宮ボスをほぼ単独ソロで撃破するなんて」


「リゼさん。ついでに今の俺のレベルを、計測はかってもらってもいいッスか? 迷宮で『色々』あり過ぎて、それどころじゃなかったんで」


「はいよ。ちょっと待ってて……って、え?」


 ん? リゼさんの様子がおかしい。明らかに困惑している。パリンッ! 音を立て、専用ルーペは砕け散った。


「……っ!? リゼさん、大丈夫ッスか!? ケガは?」

「……私は大丈夫。こんなの初めてだよ。アレク君のレベルが、上限・・を振り切ったんだ」


 ざわ……ざわ……


 ギルドの探索者らが、ざわめき始めた。


「リゼ殿、アレクの今のレベルは……?」

「……測定可能だった段階で、186は越えてたよ」


「「「なにぃいいいいいいいいいいいいっっ!?!?」」」


 ギルド内がどよめいた。ガタッ! 席を立つ者もいた。まぁ無理もない。ギルドの平均レベルは『40前後』で、しかも上限は『99まで』と認識されていた。


「……リゼ殿。疑うわけではないが、専用ルーペの『故障』ということは?」


「それはないね……。このルーペは『最新式』さ。つまり、アレク君のレベルは『少なく』見積もっても、186以上は『確定』さ」


 俺自身も驚いた。てっきりレベル50前後だと思ってたいたのに、まさか4倍近いとは……。しかも、あくまで(仮)だからな。


 同時にほとんどのギルドメンバーが、俺に殺到した。


「アレク、俺たちと組まねぇか? 給金はたんまり弾むし、ボーナスもつけるぜ!?」

「お前らには勿体ねぇ! こんなのウチのギルドが始まって以来だ!」

「ゴートらもバカだよなぁ。逃がした魚は、デカイどころじゃねーだろ」


 揉みくちゃにされる俺。この後、勧誘の嵐でギルドを出るのも一苦労した。てか、さっさと素材を換金して薬買って、レンが待つ家に帰りたいんだがな。


 この頃からだ。俺のレベルが『バグり』始めたのは。

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