第8話 イキるも地獄、4ぬも地獄(ざまぁ回 ②)

「「「漏れるって……漏れ……もう」」」


 意味不明な雄叫びを上げながら、武器を振り回すゴートら。思ったより、カマキリと善戦している。あの古狸ども、叩かれてやっと『本気』になったか。


 ここからは死闘というより、泥仕合だった。


「オデはラ"イ"ノ"ス、大男ォウデが鳴ァるぜ~ガメにガメついドケチは~ご臨終だなァ~!?」


「あっそ~れ、はっするはっするぅ!?」


「ア"痛かったッ!? ア"痛かったッ!? ア"痛かったァウェイ"イ"ィイ"イ"イ"イッッ!?!?」


 ライノスとルウが、ゴートを巻き込みながら攻撃を繰り出した! まぁ仮にもレベル30代だし、アレくらいはやってもらわんとな。


「アレク、さっきの件だけど……」

「ん? 俺の『手品』に関してか?」


 俺はブーメランの刃先で、カマキリの右腕を解体バラした。ボスの『素材』は大変高価で、換金して義妹レンの薬代に充てる予定だ。


「茶化さないで、真面目に答えて。『必中』スキルだけでも常人離れしているのに、あれほど大量の魔物を瞬時に制圧するなんて」


 その『常人離れ』したスキルを、使い込なせなかった連中がいるらしい。


「なんてことはない。このブーメランは命中した相手に必ず、なんらかの『状態異常』を引き起こす。んでもって、俺の『必中』スキルとはすこぶるほど相性がいい。以上だ」


 俺の淡々とした説明に、セレナは何故か頭を抱えた。


「そんなことが……いえ、訊き方を変えるわ。そのブーメラン、どこで・・・手に入れたの?」

「そいつは最高機密トップシークレットだな。まぁ強いて言うなら、ようやくツキが向き始めたってところだ」


 セレナはそれ以上は、何も訊いてこなかった。丁度、泥仕合も終わったところだ。


「イクぞ、ルウっ!」

「いつでもイイよ、せーの!」


「せーの! じゃねぇお"まえ"らァあ"あ"あ"あッッ!?!?」


 ライノスとルウが、ゴートを人間○雷にしてカマキリは絶命した。さぞかしカマキリも、こんな連中にやられるとは無念だろう。


「ゼェ……ゼェ……! なんでカマキリより、ポンコツの方がタフなんだよ。まー何はともあれ、解毒剤はルウと分け合うぜ」


「しかもボス倒したから、アタシら昇格じゃないっ!?」


 ハイタッチする二人。いやいや、普段からそれくらい働けよw


「……まぁ一応、約束だからな。ホラよ」


 俺は二人に解毒剤を投げた。が……


「ワイは4にませぇえ"え"え"えん"ッッ!!」


 あろうことか4んだと思ってたゴなにがしが、解毒剤のビンごとパックンチョ。そのまま飲み込んでしまった……。


「「ア"ア"ア"アーッッ!? ナニさらしとんじゃオマエ"ェエ"エ"エ"エッッ!?!?」」


「グヘヘ……最後に勃ってたモン勝ちだぜィ♪ ぱんぎゃをぽぽぉお"お"お"おっ!?」


 某がその場にひっくり返って、のたうち回る。それもそのハズ……飲んだのは、解毒剤ではなく『下剤』だ。

 昔、コイツらに腹いせで下剤を混ぜられ、酷い目に遭わされたからな。


「アレクぅうう! 解毒剤がキマってないのデスがぁああッ!?」


「そんなハズないんだけどなぁ……(すっとぼけ)毒の致○量が、解毒剤を上回ったとか? お前がイキてられるのも、あと一分ってところだな……」


「ウヒヒィイインッ!? ワイはどーすればええんやッ!? ハッ! これはユメや! 別の世界線のワイは、ギルドのエースで(ry 」


「「お前は今スグ4ねやぁああああああああっっ!!」」


 キレたライノスとルウによって、某はボコボコにされて生き埋めとなった。


「うぉおおんっ! 俺らもうオワリだぁああああっっ!!」


「落ち着け。粗大ゴミを始末してくれた礼と言っちゃなんだが、この迷宮のどっかに回復スポットがある。そこなら……」


 最後まで聞かず、猛ダッシュする二人。てか、もうとっくに10分過ぎたの気づいてないのな……。



    ◆ 元メンバー視点 ◆


「……っ!? アレじゃねーかっ!?」

「アタシら、助かったんだよ!」


 豪快に地底湖にダイブする。二人は抱き合って、助かったことを喜ぶ。


『うっさいわねぇ。静かに過ごしてたのに』


「ひぃいいっ!? 出たぁああっ!」


『ちょっとぉ、私をなんだと思ってるのよ? てか、アンタら誰?』


「「くぁwせdrftgyふ○こlp」」


『ハァ? もういいわ……“思考”を直接読むから』


 精霊はしばらくした後……


『成程ねぇ……で? アンタらが落としたのって、この荷物? それとも財宝? 正直に……』


 二人はボロい荷物より、財宝に目が眩んだ。


「「財宝です……!」」


『ふーん? 私はアンタらに“最後”のチャンスを与えようと思ったけど、ムダだったみたいね』


 精霊が呟くと同時に。二人の姿は、形容しがたい軟体生物となった。


「「…………っっ!?!?」」


『似合ってるじゃない? これからはここで、末永くお幸せにね。あっ、元には戻れないから諦めてね♪』



 ◆ ◆ ◆


 その後、アレクの元メンバーの姿を見たものはいない。迷宮はアレクの活躍で『安全』と認定された。

 が、ヒトとも魔物とも判別できないモノが、迷宮内を徘徊していると噂になった。


 そこで、ガチの『討伐隊』が組まれた。その徘徊してるのが、ゴートと呼ばれていたなど誰も知らないし、興味もない。


 まさにイキるも地獄、4ぬも地獄である。


 

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