第6話 セレナ・ストラスブール
「この迷宮も、だいぶ
俺はブーメランを
俺はフードを深く被りながら、ひたすら進んだ。途中で力尽きた探索者から、服を頂いた。後ろめいた気持ちは、一切ない。俺に出来ることは、彼らの無念を晴らすことだけだ。
レベルも順調に上がり、今は推測で45前後といったところか。ギルドに戻って、計測してもらわないと判らない。
既に迷宮の適性レベルは余裕で超えているので、そろそろあのカマキリに
ここまで確認したのは、以下の通りだ。
『猛毒』『睡眠』『混乱』『麻痺』『幻惑』『沈黙』『鈍化』『吸収』『炎上』『凍結』『感電』『魅了』『石化』『挑発』『脱力』
『悪夢』『錯乱』『浄化』『無効』『破壊』
この中でもヤバいのが、悪夢・錯乱・感電だ。それぞれ睡眠・混乱・麻痺の『上位互換』で、行動を封じてダメージも入る。
次いで、脱力・無効・破壊だ。脱力は全ステータス低下、無効は全属性の耐性を無くし、破壊は一定時間経過後、問答無用で死ぬ。
他にも使いどころによっては、有効なのが魅了。相手を操れるので、混乱より
とまぁエトセトラだが、やはり上位互換は発動しづらい。まぁその辺は『重ね掛け』で、どうにでもカバーできるが。
ん……? ここで俺は、誰かが戦っている気配に気づいた。一方は忘れもしない、あのカマキリだ。
もう一方は……誰だ? 俺以外にこの迷宮で、カマキリと『互角以上』に戦える奴がいるのか? 俺は気配を殺しつつ、慎重に進んだ。
◆ ◆ ◆
――キキンキキンキキンキキンッッ!!
広間に出ると、カマキリと初顔の女剣士が激しい
そーいや奴らが、俺の『代わり』を雇うとか
それに肝心の奴らが見当たらない。大方、カマキリにビビって
――キキンッ!
そう考えてるうち、剣士の太刀が弾かれた。おまけに、壁際まで追い詰められている。カマキリは二本の前肢を広げ、獲物を逃すまいと退路を封じた。
成程……俺の二の舞は、演じないってワケか。しかも眼がガチだ……ありゃ仕留めにいくな。彼女は目測で、太刀との距離を測った。
その一瞬をカマキリは見逃さない! 前肢が残像を残し、一閃する……ハズだった。
――ビシッ!
「「…………っっ!?!?」」
剣士とカマキリの動きが止まった。剣士は『想定外』の出来事が起きたことに。カマキリの右腕は、状態異常の『麻痺』で物理的に動けない。
「何が……?」
「ジャマするぜ。余計なお世話だったか?」
剣士は俺の登場に驚くも、それは一瞬だった。
「あなた……もしかして、アレックス・メンフィス?」
「はて? アンタとは、初対面のハズだが?」
俺は小首を傾げるも、剣士は澄ました顔で太刀を回収した。
「ゴートから聞いたわ。『必中』スキルの使い手がいるってね。けど、
見かけによらず、
「初対面の探索者に、手の内を晒すと思うか?
「それは失礼したわ。私はセレナ・ストラスブール。つい
フム? 嘘は
「最近なった割には、動きにムダがないな」
「……元々、私は『冒険者』だったのよ。色々とワケありで、シーカーに転身したけどね。さぁアレク、次はあなたについてよ」
成程、隙のない剣士だ。今のところ『敵対』はしないだろうから、俺としては話しても構わんが。
――ザンッ!
カマキリが動く左腕で、麻痺した右腕を切断した! なかなか利口な奴だ。使えないなら、早々に切り捨てるか。
ギロリと血走った眼を向けるカマキリ。まだ殺る気満々だな。俺はセレナに、ある提案を持ち掛ける。
「とりあえず、コイツをなんとかしないか? 話すと長くなるからな」
「別にいいけど、あなたは手を出さないで。さっきだって、カウンターで一気に仕留めようとしたのよ?」
やっぱり、余計なお世話だったか。セレナは見た目に反して、相当戦い慣れてるな。
――ブゥウウウウッ!
カマキリは
奥から、ワラワラとミニカマキリが湧いて出た! どうやらカマキリの幼虫らしい。そーいや、迷宮のあちこちに『産卵』してあったな。
『それだけ』なら、大した問題じゃなかった。ミニカマキリの中に『
「「「ふぉお"お"お"お"っ!? 虫をムシしたら、乗っ取られたでござるぅう"う"う"う"っ!? ワイらは、どーすればえ"え"んじゃあぁあ"あ"あ"あ"っっ!?!?」」」
「……っ!? アナタたち、まだウロウロしてたの!?」
「………………………………………………」
驚くセレナとは裏腹に、俺は『悪夢』を見てる気分だった。どういう経緯か微塵も興味はないが、何故かミニカマキリの群れに『
どーやらカマキリ的に
なんせ呼び寄せた連中は、敵より『邪魔な味方』の代表なのだから……(汗)
◆ ◆ ◆
Next……ざまぁ回
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます