第4話 舞い降りた『力』

 沢山のフォロー、応援、☆評価まで誠にありがとうございます(^-^ゞ 作者も『過去一』ノッております(マジで)


 ◆ ◆ ◆



 ブクブクブク…………



 奈落へと堕ちた俺は、ひたすら沈んでいく。元メンバーに裏切られ、たった一人の義妹いもうとすら護れず、地底湖の中を漂っていた。

 俺は何の為、探索者シーカーになったんだろうなぁ……。『必中』以外のスキルが使えたら、結果は違かったかもしれない。


 必中そのものが『弱い』わけではないが、やはり『決定打』に欠けていた。結局、俺は何も出来ないまま死んだのか……死んだ?

 俺の意識はまだある・・。迷宮ボスのカマキリに右腕を斬られ、あれほどの失血量にも関わらずにだ。


 意識したら急に息苦しくなったので、俺は慌てて水面を目指した。



「――ぷはぁ!」


 俺は水面から顔を出し、大きく息を吐いた。空気は湿っていたが、“生きている”と実感した。ブーメランの『師匠』からも、アンタは悪運は強いと言われ今さら実感した。


 なんとか岸辺に這い上がる。右肩の切断面を見るも、出血は一ミリもなく痛みも感じなかった。傷が回復してる……これは?


 もしかして、ここは『回復スポット』か? 各迷宮に一つは、全回復できる場がある。迷宮のほとんどは未踏破なので、発見すればギルドからボーナスが出る。


 こんな下層にあったとは……まぁお陰さまで、俺は助かったが。


 ブクブクブク……!


 急に湖面が泡立った。俺は反射的に身構える! まさかあのカマキリが、ここまで追ってきた!? 十分、あり得る……いかにも執念深そうなヤツだったしな。


 やがて湖面は波打ち、一つの影が浮き出てきた。人型……!? あのカマキリじゃないのか? 見た目は少女で、全身半透明の水色カラーだ。



うるさいわねぇ……私が寝てたところ、いきなり落ちてきてぇ(プンプン)』


 なんか怒ってるな。一応、謝っとくか。


「そいつはすまなかった。まぁ俺も落ちたくて、落ちたきたわけじゃない。てか、アンタは何者なんだ? 俺はアレクっていう探索者だ」


『……エラく律儀なニンゲンね。私はこの迷宮の精霊よ。ココまで来れたのは、アンタが初めてね。で? なんで落ちてきたのよ?』


 俺は精霊に経緯を説明した。俺自身、ずっと誰かに話したかったのか、途切れることなく話し続けた。有難いことに精霊も、黙って聞いてくれた。


『ふぅん? なかなかの小悪党ね、ソイツらも。おまけにボスにも狙われるなんて、アンタも踏んだり蹴ったりね』


「まぁ誰かに話せて、俺も気持ち的にだいぶ楽になれた」


 き物が落ちた俺を見て、精霊もウンウンと頷いた。


『アンタは“このまま”でいいワケ? やられっ放しで』


「いいわけないだろ。っつっても、ご覧の有り様だ。武器ごと右腕を持っていかれた。俺は『必中』スキルを持っていながら、使いこなせなかった。ったく、とんだ宝の持ち腐れだ」


 俺は自嘲ぎみに笑いながら、欠損した右腕を見せた。すると、精霊は何やら考える素振りを見せた。


『……そういえば、アンタが落ちてくるちょっと前に腕らしいのが落ちてきたね。もしかしてコレかな?』


 湖から浮かび上がってきたのは、紛れまなく俺の右腕だった。


「俺の腕……!?」


『やっぱりねぇ。あんま私の領域テリトリーに余計なモノを投げ入れてほしくないから、とりあえず返すね?』


 余計なモノとは余計だが、右腕は浮遊しながら俺の断面にピタリとくっついた。


「……っ!? これは……」


 驚いたことに右腕は、“違和感なく”なく動かせた。これが回復スポットの力……欠損した部分も修復できるとは。


『それと底にコレが沈んでたけど、どっち・・・のがアンタの? 正直に答えてね』


 続いて、湖から『二つ』のブーメランが浮かび上がった。一つは俺が即席で作った石のブーメラン、もう一つは透明の美しいブーメランだった。


 俺を試すつもりか? まぁ答えは決まってるが。


「石のブーメランが俺のだ。拾ってくれて感謝する」


 それを聞いた精霊は一瞬きょとんとなるが、クスクスと笑い始めた。まぁ人間と異なり、表情は分かりづらいが。


「……何か可笑しなことでも言ったか?」


『アンタって、純粋なのね。ねぇ……“力”が欲しい?』


 いきなりなんだ……?


「……どういう意味だ?」


『そのままの意味よ。そんな小悪党連中に、コケにされたままでいいの? アンタは、自分が考えてる以上に“可能性”を秘めてるわ。このまま“負け犬”でいるつもり!?』


 脳裏に浮かぶ、元メンバーの醜悪な顔。俺を『経験値泥棒』呼ばわりしたことは、一生忘れない。なんだか急に腹が立ってきた。


「いいわけないだろ! 俺はあんな三下連中をレベルアップさせる為、探索者になったわけじゃねぇ!」


『いい返事ね! なら、特別にこの“精霊のブーメラン”を贈呈するわ!』


 精霊がそう言うと、二つのブーメランは瞬く間に『合体』して、俺の手元に収まった。


「……いいのか? 俺は武器さえ戻ってくれば、十分なんだが」


『久し振りに、死なせるには惜しいニンゲンに出会えたわ。私からのプレゼントだと思って、有り難く受け取りなさいな!』


 俺は美しい刃先に、思わず見とれた。まるで長年使い込んだ『相棒』が、戻ってきたような感覚だった。


『そのブーメランは、当たればランダムで“状態異常”を付与するわ。効果は私が保証する。まぁ実際に使ってみることね。じゃあねぇ、もう二度と落ちてきたらダメだよ』


 精霊は俺にウィンクらしい仕草をして、湖へと還っていった。地底湖は最初から何もなかったかのように、静けさを取り戻した。


 俺は改めて、生まれ変わったブーメランをまじまじと見つめた。



「……命中すれば、何かしらの『状態異常』か。有り難く使わせてもらう。礼と言ってはなんだが、俺がキレイに迷宮を掃除・・してやるよ」

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