第4話 舞い降りた『力』
ブクブクブク…………
奈落へと堕ちた俺は、ひたすら沈んでいく。元メンバーに裏切られ、たった一人の
俺は何の為、
必中そのものが『弱い』わけではないが、やはり『決定打』に欠けていた。結局、俺は何も出来ないまま死んだのか……死んだ?
俺の意識はまだ
意識したら急に息苦しくなったので、俺は慌てて水面を目指した。
「――ぷはぁ!」
俺は水面から顔を出し、大きく息を吐いた。空気は湿っていたが、“生きている”と実感した。ブーメランの『師匠』からも、アンタは悪運は強いと言われ今さら実感した。
なんとか岸辺に這い上がる。右肩の切断面を見るも、出血は一ミリもなく痛みも感じなかった。傷が回復してる……これは?
もしかして、ここは『回復スポット』か? 各迷宮に一つは、全回復できる場がある。迷宮の
こんな下層にあったとは……まぁお陰さまで、俺は助かったが。
ブクブクブク……!
急に湖面が泡立った。俺は反射的に身構える! まさかあのカマキリが、ここまで追ってきた!? 十分、あり得る……いかにも執念深そうなヤツだったしな。
やがて湖面は波打ち、一つの影が浮き出てきた。人型……!? あのカマキリじゃないのか? 見た目は少女で、全身半透明の水色カラーだ。
『
なんか怒ってるな。一応、謝っとくか。
「そいつはすまなかった。まぁ俺も落ちたくて、落ちたきたわけじゃない。てか、アンタは何者なんだ? 俺はアレクっていう探索者だ」
『……エラく律儀なニンゲンね。私はこの迷宮の精霊よ。ココまで来れたのは、アンタが初めてね。で? なんで落ちてきたのよ?』
俺は精霊に経緯を説明した。俺自身、ずっと誰かに話したかったのか、途切れることなく話し続けた。有難いことに精霊も、黙って聞いてくれた。
『ふぅん? なかなかの小悪党ね、ソイツらも。おまけにボスにも狙われるなんて、アンタも踏んだり蹴ったりね』
「まぁ誰かに話せて、俺も気持ち的にだいぶ楽になれた」
『アンタは“このまま”でいいワケ? やられっ放しで』
「いいわけないだろ。っつっても、ご覧の有り様だ。武器ごと右腕を持っていかれた。俺は『必中』スキルを持っていながら、使いこなせなかった。ったく、とんだ宝の持ち腐れだ」
俺は自嘲ぎみに笑いながら、欠損した右腕を見せた。すると、精霊は何やら考える素振りを見せた。
『……そういえば、アンタが落ちてくるちょっと前に腕らしいのが落ちてきたね。もしかしてコレかな?』
湖から浮かび上がってきたのは、紛れまなく俺の右腕だった。
「俺の腕……!?」
『やっぱりねぇ。あんま私の
余計なモノとは余計だが、右腕は浮遊しながら俺の断面にピタリとくっついた。
「……っ!? これは……」
驚いたことに右腕は、“違和感なく”なく動かせた。これが回復スポットの力……欠損した部分も修復できるとは。
『それと底にコレが沈んでたけど、
続いて、湖から『二つ』のブーメランが浮かび上がった。一つは俺が即席で作った石のブーメラン、もう一つは透明の美しいブーメランだった。
俺を試すつもりか? まぁ答えは決まってるが。
「石のブーメランが俺のだ。拾ってくれて感謝する」
それを聞いた精霊は一瞬きょとんとなるが、クスクスと笑い始めた。まぁ人間と異なり、表情は分かりづらいが。
「……何か可笑しなことでも言ったか?」
『アンタって、純粋なのね。ねぇ……“力”が欲しい?』
いきなりなんだ……?
「……どういう意味だ?」
『そのままの意味よ。そんな小悪党連中に、コケにされたままでいいの? アンタは、自分が考えてる以上に“可能性”を秘めてるわ。このまま“負け犬”でいるつもり!?』
脳裏に浮かぶ、元メンバーの醜悪な顔。俺を『経験値泥棒』呼ばわりしたことは、一生忘れない。なんだか急に腹が立ってきた。
「いいわけないだろ! 俺はあんな三下連中をレベルアップさせる為、探索者になったわけじゃねぇ!」
『いい返事ね! なら、特別にこの“精霊のブーメラン”を贈呈するわ!』
精霊がそう言うと、二つのブーメランは瞬く間に『合体』して、俺の手元に収まった。
「……いいのか? 俺は武器さえ戻ってくれば、十分なんだが」
『久し振りに、死なせるには惜しいニンゲンに出会えたわ。私からのプレゼントだと思って、有り難く受け取りなさいな!』
俺は美しい刃先に、思わず見とれた。まるで長年使い込んだ『相棒』が、戻ってきたような感覚だった。
『そのブーメランは、当たればランダムで“状態異常”を付与するわ。効果は私が保証する。まぁ実際に使ってみることね。じゃあねぇ、もう二度と落ちてきたらダメだよ』
精霊は俺にウィンクらしい仕草をして、湖へと還っていった。地底湖は最初から何もなかったかのように、静けさを取り戻した。
俺は改めて、生まれ変わったブーメランをまじまじと見つめた。
「……命中すれば、何かしらの『状態異常』か。有り難く使わせてもらう。礼と言ってはなんだが、俺がキレイに迷宮を
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