極人と超人 〜 ω世代への期待 〜

「神は死んだ」という有名ではあるが誤解する人も多い言葉を残したニーチェが提示した諸概念の一つに「超人 (ドイツ語 Übermensch)」がある。円谷プロに先立つこと一世紀近く、文字通りに読むならば「スーパーマン(ウルトラマン)」である。接頭辞の 「超・極」 は、超音波・超軽量 (限界を超えてポジティブ) のような例と、極右・極左・超国家主義のような例 (極端でネガティブ) があるが、「超人」や「スーパーマン・ウルトラマン」は前者に分類されそうだ。


19世紀のヨーロッパでは、キリスト教に代表される既存の権威や価値観が「フィクション」としての輝きを失い、「人として生きることの意味の再定義」が必要であったという点において、現在の我々が置かれた状況に似たところがあったようだ。そのような(精神的に)困難な状況において、「今さえよければOK」という態度(刹那主義)や「夢も希望もありません」という態度(絶望)に代表される「受動的ニヒリズム」「頽廃(デカダンス)」に逃避するのではなく、「何もない状況(虚無)」を恐れることなく直視して「新たな価値や目的」を自ら創り出し、能動的に自己変革をなしうる「ありのままの自由で無垢な人間」を「超人」と呼んで理想としたのがニーチェだ。


当時の「立派な」人々にとっては、「アンチ・キリスト教」の罰当たり者に見えたことは想像に難くないが、冷静に考えると、古代ギリシアやルネサンス以来の「人間中心主義」の復権という点で、極めて常識的で真っ当な考え方ではある。(多少、表現において「過激」な部分もあるためか、好き嫌いが分かれるようである) 実際、昨今の学校教育が「アクティブ・ラーニング = 主体的で対話的で深い学び」を通して達成しようと努力している「理想の若者像」と重なる部分が多いように思われる。


人類共通の目標としてのSDGs (17 goals & 169 targets) が設定されて久しく、日本では特に「一大ブーム」の様相を呈している。ロシア・ウクライナ間の「戦争」を契機に、目標達成への決意が多少揺らいでいるようにも見えるが、これらの諸目標の重要性と有用性を否定する人は少ないだろう。100〜200年単位のスパンで見たとき、我々人類の生存そのものがかかっているからだ。その意味において、某軍事超大国の指導者のように遅くとも30年以内に「神に召される」可能性が高い面々による「おっさん政治」に自分達の運命を翻弄される若い世代の皆さんを目の当たりにして、「不条理」を感じざるを得ない。


今や、解決すべき課題が、「極左か極右か」とか「保守かリベラルか」といった二項対立的な (数学的にも思想的にも) 次元の低いものではあり得ないのだから、その手の不毛なディベート(あるいは戦争)を好む方々(極人(きょくじん)と呼ぼう) には可及的速やかに引退して頂いて、不毛な争いを好まないとも言われるZ世代・更にその先のω世代の諸君が「21世紀的超人」になって「善悪の彼岸」を探究するのを(手伝うことは出来なくても、邪魔はしないように)「温かく見守る」のが「おっさん世代の道徳的義務」のような気がする。おそらくそれ以外に人類が「幸せに生き延びる道」は無さそうだからだ。(他にあったら私が教えて欲しいと思っている)


「ディベートごっこ」に興じて課題に「自分ごと」として向き合おうとしない「おっさん世代の極人」ではなく、「真のディスカッション」のできる「21世紀的超人になる可能性を秘めているZ世代・ω世代」に私が期待する所以である。


2022.7.31

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