第24話 昇格試験・前半

俺たちは、快適すぎる宿で一泊した後、ギルドにまた来ていた。


「おはようございます。リーナさん」

「おはようございます。イスカさん、ユリナさん」


また隈がひどくなってる。そろそろやばいんじゃないか?


俺は質問をした。

「今日で何徹目ですか?リーナさん」

「4徹くらいですかね?忘れました」


忘れるほど寝てないのか?この人。

さすがブラック企業でもやっていける人だな。


「今からダンジョンに入ろうと思うんですけど、ダンジョンって何級から入れるんでしたっけ?」

「B級ですね」

「.......マジすか」

「マジですね」


入れないじゃん。













「あ、でも昇格試験はもうすぐありますね」

「いつですか!」

「1週間後ですね」

「クソッ!!」


どうして世界はこんなにも残酷なんだ!

何で一週間後なんだ!

せめてもう少し後にしてくれよ!


まぁなんとかするしか無いか。





一週間後

あぶねー。後数時間でアウトだったわ。

ギリギリ間に合ったぜ。

依頼が無いとか終わってるだろ。


今回こんなギリギリになったのは、依頼がとんでもなく少なかったからだ。

あったのは、E級くらいだった。やばいよ。

ギルドが朝の6時くらいに開くんだが、7時にはもう依頼なんて一つくらいしか残ってない。二日くらい全部なかったこともあった。

まじであぶねぇ。






昇格試験は2つあるらしい。

1つ目が、模擬戦だ。

強くなかったら、ここで落とされる。

A級の冒険者と一対一で戦い、どれだけ善戦できるかが鍵になってくる。


正直、A級冒険者がどのくらいの強さなのか気になっているため、楽しみだ。


2つ目は人殺しだ。

善良な市民を殺すわけではなく、盗賊などの終わっている人間を殺す。

ここで躊躇して逆に殺られるとかは論外だ。


B級になると、こういう盗賊の殲滅系の依頼も出てくる。

そこで殺せなかったら被害が広がってしまうため、今のうちから人を殺すという経験を積ませるらしい。


俺は、人を殺したことはあるが(もちろんこの世界で)そこまで罪悪感などは感じなかった。だから今回の試験は余裕だと思う。多分。



「これより、第一次試験を開始する!今から呼ぶ番号の順に、ステージに上がってきてくれ!まずは一番からだ!」


俺の番号は9番だから、まだ時間に余裕があるな。

とりあえず、一番の戦闘でも見とくか。


「始め!」


先に動いたのは、一番だった。

得物は両手剣で、とても大きい。


俺の背丈くらいある剣を軽々と持ち、A級冒険者に迫る。


「死ねッ!!!」


真上から剣が振り下ろされる。

それをA級冒険者はバックステップで後ろに躱し、今度はA級冒険者がものすごいスピードで一番の背後にまわり、短剣を首に添えた。


「.....降参だ」


一番は「絶対落ちたわこれ。終わった」みたいな顔をしてステージから降りてくる。


あいつ最初に「死ねッ!!!」とか言ってたのに負けてて恥ずかしくないのか?

メンタルだけはS級に匹敵するんじゃないのか?あいつ。


と言うか大したこと無いなA級冒険者。

さっきこっそり【鑑定】して視たけどステータス値がオールステータス8000いくかくらいなんだよな。S級とかになるとオールステータス1万はいくのか?


とかなんとか考えてたら、俺の番が来てしまった。


「それでは、始め!」


俺はさっさと終わらせようと、A級冒険者の背後にこの場の誰も視認できないような速度で回り込む。


そこから剣を振るおうとしたが、流石に腐ってもA級冒険者、視認できなかったにも関わらず、対応してきた。


ここらへんは経験の差だな。


俺たちはしばらく剣戟を交わした後、一旦距離を取り、体勢を立て直す。


次で終わらせるか。


俺はA級冒険者に迫り、わざと剣を大振りにして隙を見せる。

相手は好機と思い、胴体に向かって打ち込んでくる。


それを、俺は大振りにしていた剣を止めて、自分のもとに戻して弾く。

そのまま剣をA級冒険者の首に添えた。


「......はぁ。降参だ」

「楽しかったぜ」

「何者だよお前。C級にいていい人材じゃないだろ。」

「イスカだ。A級冒険者に褒められるなんて照れるな」

「思ってもないことを言うな。俺はレイだ。お前ならS級も夢じゃないさ。頑張れよ」

「ありがとな。レイ」


そうして、俺は無事第一次試験を突破した。


ちなみにあの一番のやつだけ落ちていた。

あれで4回目らしい。




あとがき

一番君4回目の挑戦失敗です。

他はみんな第一次試験受かってるのにどうして落ちちゃうんだろ?

不思議だ。

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