第18話 おっさん

今日はユリナと一緒に冒険者ギルドへ向かっていた。


俺はエデスとの死闘の末、片腕を失ってしまった。

一週間ほど意識がなく、眠りから覚めたときから立つ際のバランスが結構分かりにくく、歩くことが難しかった。

だからユリナが補助してくれるってことになったんだけど....


「さぁ行きましょう!イスカさん!」

「どうしてこうなった...」

そう言いながら、ユリナが胸を押し付けてくる。


補助してくれるのは良いが、理性を揺さぶって来ないでほしいんだよな。

しかも周りの視線が居心地悪い。

確実に初心なカップルだと思われてるぞ、これ。


「あの子達。初々しくて可愛いわねー」

「カップルかしら?女の子可愛いわねー」

「男の子もがっちりしていて男らしいわね」

「「「可愛いわー」」」


恥ずいなこれ!

周りのおばちゃんたちにめっちゃ話題にされてるんだが。

ユリナは恥ずかしくないのか?


そう思って横を見ると、顔を真っ赤にしていたユリナがいた。

ユリナはこちらが見ていることに気付くと、更に顔を赤くさせ、ゆっくりと胸を腕から遠ざけていった。


お前も恥ずかしかったんかい。








そんなこんなで冒険者ギルドについた。

「おはようございます。リーナさん」

「おはようございます。イスカさん。本日は招集に応じていただき、ありがとうございます」


リーナさん。この前までなかった隈ができてる。相当やばいな。やっぱここはブラックだ。


そんなことは置いといて、(置いておかないでください!昨日だって残業が..うぅ(泣))

今日俺たちがここに来たのは、昨日冒険者ギルドから、招集がかかったからだ。


「では、今からギルドマスターの部屋に行きますね。ついてきてください」

「え?あ、はい」

ギルドマスターの部屋?俺は何かした覚えは無いぞ?

「そんな心配そうな顔をしないでください。どちらかといえば良いほうですから」

「いい事したか?」

「しましたよ。十分にね」


そう言ってリーナさんは、俺の左腕を見てくる。

あぁ。そういうことか。


「ということは、魔族の討伐に対しての報酬みたいな感じか?」

「はい。そんな感じです」

そう話していると、リーナさんがある部屋の前で止まった。

そして、ノックをすると、中から


「入れ」

とこの前の演説とはまた違う、低くて落ち着いているような声が聞こえた。

「「「失礼します」」」

そう言って入ると、この前の演説をしていたその人が座っていた。


「今日は急な呼び出しに応じてくれて感謝する。俺は回りくどいのが嫌いでな。

要件について今から話すぞ。要件は、お前への報酬。そしてお前の階級についてだ」


報酬はわかるが、階級?あれに関しては依頼を達成しないといけないんじゃないのか?


「階級はな、その人にあった仕事をやらせるためのものだ。だから、魔族を倒すことができるお前がそんな下の階級にいたらうちのギルドの能力が疑われる。

ということで、お前今日からC級な」

「はい....はい??」

「よし。わかったみたいだな。それじゃあよろしk

「いやいやいや違うだろ!今、完璧に聞き返した感じだったよな!?」

「ん?そうなのか?どこがわからないんだ?」

「全てだよ!」

「すまんな。俺はこの世界すべての知識は持っていないんだ」

「OK喧嘩だな?言い値で買ってやるよ」

「お!良いのか!じゃあざっと一億メルくらいで買ってくれ!」

「ぶっとばすぞクソ野郎」

なんだコイツ。話が通じねぇ。宇宙人か?宇宙人なのか??

ふざけまくりやがって。


「まぁ、冗談はこの辺にしといて。お前がわからないのは、C級になるってところか?」

「まぁ大まかに言えばそうだ」

「意味なんて特にねぇよ」

「は?」

「だから。意味なんて特にねぇって言ったんだ」

「なおさらどういうことだよ」

「ぶっちゃけるとよ。正直、お前A級でも良いくらいの実力がある。だけどよ、まだ冒険者としての歴が浅い。だから、昇格試験があるB級の一個前にして、経験を少し積んでもらいたかったってだけだよ」

「普通に意味あるじゃねぇかよ」

「たしかにそうだな!はははははは!!!!!」


やっぱ腹立つわコイツ。んだよこの態度は。ぶっ飛ばすぞ。

コイツがギルドマスターとか世も末だな。

こんなやつがギルドマスターだからブラックなんじゃないのか?


そんなふうに思っていると、リーナさんが近づいてきた。

「これでも前ギルドマスターよりもましになりましたからね?仕事」

「へ、へぇーー」


やべぇ。やべぇよギルド。この仕事量で前よりマシとかどうなってんだよ。

週末になったら死ぬんじゃないのか?


「で、報酬の方は3千万メルだ」

「あ、はい」

ん?

「3千万メル?」

「おう」

ヤッベ。なんか勢いで大金を持たされてしまった。

帰りに刺されたりしないか?


「じゃあ、今からお前をC級冒険者にするから、ギルドカード出せ」

「ほい」


そうして俺は、C級冒険者となった。



あとがき

週末の冒険者ギルド。

「明日は休みだから、これ全部やっといてね」←上司

「はい」←リーナさん

眼の前には1メートル位積まれた書類がダーン!

「ハハ。シゴトタノシイナ」←リーナさん


あまりにも不憫


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