第3章
1
「さくらせんぱぁい」
電車を降りて学校へ向かう途中、後ろから呼ばれたかと思うといきなり抱き着かれた。衝撃で前のめりになって、なんとか踏ん張る。前にもこんなことがあったのを懐かしく感じた。懐かしさの分だけ、あの甘い声で名前を呼んでもらえなくなったことが寂しい。
後ろを見れば、代わりにわたしの名前を呼ぶようになった女の子がいる。ツインテールがかわいい、小さくて幼い顔立ちの女の子。
「いきなりぶつかったら危ないよ、キョウちゃん」
わたしはその子――
「あぁっ、ごめんなさいっ。私、さくら先輩見つけて、嬉しくなっちゃって……」
そう言って、キョウちゃんはすごい勢いでわたしから離れた。そんなにされるとちょっと傷つくかも、と思うくらいの飛びのき方だった。こういう所は「大袈裟ですよー」なんて言い返されたあの時と違う。
「その、痛かったですか?」
「ううん、全然。大丈夫」
「じゃっじゃあ……さくら先輩は、私に抱きつかれるの、いやですか……?」
「それも全然。だから、いきなりじゃなかったらいいよ」
「良かったですぅ。私、さくら先輩に嫌われたら泣いちゃうかもしれません」
ほっとした様子のキョウちゃんは、僅かに涙目になっている。本気でわたしに嫌われると思い、そうではないと知って本気で安心しているのだろう。純粋すぎて目が焼かれそうだ。自惚れではなく、好かれているのが伝わってくる。
それだけに、心が痛む。キョウちゃんは、二月に入った頃わたしにラブレターをくれた女の子だ。わたしはその告白を断ってしまっている。約束のバレンタインの日、手紙では放課後を指定されていたけれど、無理を言って昼休みに返事をさせてもらった。その返事は、ラブレターをもらった時には決まっていた。わたしが女の子と表立って付き合えない点を考慮しなくても、わたしはキョウちゃんと付き合えない。キョウちゃんに抱きつかれても、わたしの心臓は平常運転のままだ。わたしの中でキョウちゃんは恋愛対象にならなかった。せっかくだからともらったチョコを食べる時、申し訳なさでたまらなくなった。
そんな顛末だったのに、わたしたちが今こうなっているのは、キョウちゃんが望んだからだ。ひとしきり泣いたキョウちゃんが「なら、お友達ならなってくれますか?」と聞いて、わたしはそれを了承した。断りようもなかった。
抱きつかれるのも、本当は避けたい。キョウちゃんがどうというわけではなく、周囲の目が気になる。キョウちゃんがわたしに告白したことは、多くの生徒が知っている。そんな二人が人目もはばからず密着することの意味を憂慮せずにはいられない。幸い、わたしには彼氏がいる。もしくは、いた? 自分でも現状をうまく把握できないないけれど、そのおかげでわたしとキョウちゃんが付き合い始めたと誤解する人はいないようだった。無意味で過剰だと思っていたカモフラージュが、思わぬ形で機能している。
そうして、わたしたちは今も友達をやっている。
友達としての会話を続けながら、わたしたちは残りの通学路を歩いた。ほんの数分で校門が見えてくる。
「あ、霜月さん」
思わず、といった感じで、キョウちゃんがその名前を呼んだ。キョウちゃんの視線を追えば、半月前までは毎日見ていた後ろ姿が見えた。左側に束ねた髪が、小さく揺れている。
キョウちゃんが、今度はしまったといった感じの顔をして、口をつぐんだ。それから、露骨に話題を逸らそうとする。
それに応じるふりをしながら、わたしの目は真冬ちゃんの背中に釘付けになっていた。逸らそうとしても、できなかった。
当たり前だ。あんなことになっても、わたしはまだ、真冬ちゃんのことが好きだった。
*
真冬ちゃんは、同時に何人もの相手と付き合っている。
わたしは、そのうちの一人でしかなかった。
それだけの話が、全身を雑巾絞りされたみたいに辛い。
愚かだと思う。だいたい、安住くんは三股をしていて、真冬ちゃんはわたしだけなんて都合が良すぎる。そのことに最初から思い至るべきだった。恐ろしいことに、付き合っている間、真冬ちゃんを疑ったことなんてただの一度もない。小学生でも見逃さない歪みを素通りさせるほど、恋の焦がれによってわたしは骨抜きにされていた。
それくらい真冬ちゃんが好きだった。そして今も、好きだ。
元々気になっていた子に甘い言葉を囁かれ、実際に甘やかされ、身勝手な望みを全部叶えてもらった日々。その何もかもが幻想だったと理解した時の悲しみ。こんなに好きなのに、その十分の一も同じように想ってもらえない苦しみが暴発し、余計に、恋心がぶくぶくと音を立てて醜く膨張する。それが苦しくて苦しくてたまらない。真冬ちゃんと話せない日々は、腕一本まるごと喉の奥に突っ込まれたみたいで、何の脈略もなく突然えずきそうになる。真冬ちゃんはわたしと会えなくても、きっとそんな風にはならないのだろう。その差を考えるともっと苦しくなる。真冬ちゃんの言った通りだ。相手に好きって気持ちをあげられないなら、恋人は対等なんかではない。お互い表向きの彼氏が一人なんて形式的なごまかしは何の意味もない。そんなことで対等だと思い込もうとしていた自分の存在を滅ぼしたくなる。
わたしたちは、その始まりから対等ではなかった。
わたしだけが好きだって言ってくれたのに。
今のわたしは、居心地のいい水中から打ち上げられた魚だった。空気が、猛毒が、全身を巡る。息ができなくて口をパクパクさせる、予期せぬ死から逃げられない憐れな魚。
*
キョウちゃんを見ていると、つい真冬ちゃんと比べてしまう。良くないし、意味もないと分かっていても、気付いたらそうしている。真冬ちゃんはこんなに素直ではない、真冬ちゃんならこんな言葉をくれただろう、隣を歩いているのが真冬ちゃんだったら手を繋ぎたくなるのに、真冬ちゃん、真冬ちゃん、真冬ちゃん……そして最後に、真冬ちゃんとだったらもっと幸せなのになあ、と考えた所ではっと我に返る。
依存の二文字が、刺青のように背中に刻まれているのを感じる。だってわたしには真冬ちゃんしかいなかった。都合のいい女、と真冬ちゃんが言っていたのは本当にその通りで、矛盾の塊みたいなわたしの望みを叶えてくれる人なんて、そうはいない。その人がたまたまわたしの好きな人だったなんて、一体どれほどの確率だろう。この先、真冬ちゃんみたいな人に新しく出会える確率は?
「それじゃあ、さくら先輩」
真冬ちゃんとは違う声、真冬ちゃんと同じ呼び方。それが真冬ちゃんの専売特許であったことを、この子は知らない。
キョウちゃんが自分の教室へ続く階段を上がっていく。その背中が見えなくなった所で、わたしは大きく溜息をついた。
今日はもうサボってしまいたい。一秒後にはUターンしてしまいそうだ。けれど、最近は二回もサボってしまっている。生徒会長として、これ以上は甘えられない。重い足を引きずるようにして前に進む。
気分の方は、足よりもずっと重かった。今日もまた、クラスメイトを欺き続けなければならない。みんな、わたしを彼氏に浮気されたかわいそうな女だと思っている。あの写真を見たら誰だってそう思う。悪いのは真冬ちゃんと家名くんで、わたしは彼氏と後輩に裏切られた被害者。
そんな誤解が定着してしまったのは、全部わたしのせい。あの写真が出回って以来、わたしはずっとだんまりを決め込んでいる。写真の中に自分の姿がなかったのをいいことに、誰に何を聞かれても、ただ顔を伏せるだけ。そうすれば、みんな勝手に同情してくれる。それ以上詮索しないでいてくれる。
そして、真冬ちゃんと家名くんだけが悪者になった。
何度後悔しただろうか。本当は言うべきだった。わたしも浮気していました、家名くんと付き合いながら真冬ちゃんと寝ていました、ごめんなさい。それだけで、少なくともわたしが知っている事実は白日の下にさらせる。
できるわけがなかった。だってそれは、女の子が好きだと告白することだ。もし時を遡れても、わたしの口が開くことはないだろう。
自分の安寧のために、言うべき言葉を飲み込んで誰かを犠牲にする。由佳ちゃんを見捨てた時と、わたしの本質は全く変わっていない。
「おはよ、さくら」
教室に入ると、一番に美代が挨拶してくれた。最近はいつもこうだ。真冬ちゃんとのことがあって以来、ずっと気にかけてくれている。
「おはよう、美代」
席につくと、他にも何人かのクラスメイトが集まってきた。これも最近の恒例行事で、みんな考えることは美代と同じだ。わたしのために語られる明るい話の数々。新しく発見した面白い配信チャンネル、昨日撮れたペットのかわいい写真、今度みんなで遊びに行こうという約束。他愛ない話題ばかりで、それらは全部、意図して選ばれている。そうとは意識させずに、わたしを元気づけるために。
「さくら、大丈夫?」
けれど、美代だけはこうして、心配の言葉をかけてくれることもある。みんなの話題も出尽くして、また二人だけになったタイミングでのことだった。暗い顔をしていたのを見抜かれたのかもしれない。
「大丈夫だよ。ありがとね」
きわめて当たり障りのない、それでいて卑怯を煮詰めたような返事をした。無理してない? してないよ。辛かったらちゃんと話しなよ。うん、分かった。そんなやりとりをしながら、早くチャイムが鳴ってほしいと願う。親友との会話を打ち切りたがるなんて、わたしはどこまで落ちぶれるのだろう。
「……あれから、真冬とはどう?」
ふいに、美代がそんなことを聞いてきた。言いにくそうに、けれど気になってしかたがないという感じに。無理もない。美代だって真冬ちゃんとは仲良くしていたのだから。
「さっき後ろ姿は見かけたけど、それ以外は何も……」
「なんか、今でも信じられない。あいつ、あんなにさくらと仲良かったのに」
「そう、だね」
「なんであんなこと、したんだろうね」
そう言う美代は、本当に悔しそうだった。
美代とは違う意味で、わたしも同じことを思う。
美代や浅葱ヶ丘の生徒のほとんどにとって疑問なのは、仲のいい先輩であるわたしの彼氏を、真冬ちゃんがどうして略奪しようとしたのか、ということだ。大勢と同時に、なんて貞操観念の欠如は些末事でしかない。それだけだったら、せいぜい仲のいい友人か先輩が注意するか、潔癖な性格の生徒たちに遠巻きにされるか、といった所だっただろう。
それが大騒ぎになってしまったのは、わたしと家名くんという、みんなにとって身近な存在がその渦中にいたからで……一方のわたしは、家名くんのことはどうでもいい。どうして真冬ちゃんは、そんなにたくさんの人と同時に付き合おうとしたのだろうという、もっと根本的な問題の方が、わたしにとっては気がかりだった。何がそこまで、真冬ちゃんを駆り立てるのだろう。
安住くんは――
ふいに、一人の男の子の顔が思い浮かんだ。
安住くんは、真冬ちゃんの彼氏は、何か知っているだろうか。
*
話が聞きたいとメッセージを送ったら、家名くんはすぐに返事をしてくれた。分かりました。その一言だけで、話が円滑に進む。真冬ちゃんなら既読無視されていた。
そうして放課後をむかえ、わたしは今、家名くんの部屋にいる。
「それで、用っていうのは……」
居心地悪そうに、頭を掻きながら安住くんが言った。正直、気は進まなかったのだろう。自分の彼女が揉めた先輩と顔を合わせるなんて、気が重いに決まっている。しかも、自分の部屋で二人きりなんて。
わたしだって、男の子の一人暮らしに踏み込むのは躊躇した。けれど、学校や近くの喫茶店でというわけにもいかない。わたしたちが会っているのを見られたら、また変な噂になってしまう。消去法で、中に入ってしまえば誰にも邪魔されない、安住くんのプライベートな空間を選ぶしかなかった。
小さなテーブルを挟んで、一対一。
八畳のワンルームが、実際よりずっと窮屈に感じられる。
「真冬ちゃんのことなんだけど」
話を長引かせないように、単刀直入に切り出した。
「ですよね」
「安住くんは、どこまで知ってたの?」
曖昧な質問なのは自覚している。けれど、そう聞くしかなかった。
すると、安住くんは困ったような顔をした。どう答えたらいいか迷っている、といった顔だ。
「答えないと、ダメですか?」
「ダメじゃないけど……できれば聞かせてほしい」
「聞いて、どうなるんですか?」
答え次第では話はここでおしまいだというような、そんな質問。一年間、生徒会で一緒にやってきた仲だけど、安住くんの考えることは未だによく分からない。真冬ちゃんを、わたしを、そして先月の出来事を、どんな風に思っているのか。だから、どう言えばこの先も話を続けてくれるのかも分からない。
なら、わたしは思ったことをそのまま言うしかない。
「どうなるんだろうね。分からないよ。どうなるかも、どうしたいのかも。知って、ただ辛くなって終わりかもしれないし」
結局、わたしは知らないことに耐えられないのだ。真冬ちゃんが話すこと、すること、考えること。真冬ちゃんの隅々までを把握したい。安住くんに聞くのが、一番の近道だった。自分以外が真冬ちゃんの特別であることを嫉みながら、安住くんに頼ってしまう。負け犬の仕草同然でも、何も知らないことには耐えられなかった。
「……分かりました。気は進まないんですけど」
わたしの答えのどこに納得したのか、安住くんは了承してくれた。
「ありがとう」
「礼を言われることじゃ……」
安住くんは恐縮してから、わたしの求める答えを口にした。
「全部です」
わたしの疑問をよそに、安住くんはそう言った。
「全部……」
「はい。真冬が何股もしてるのも、そういうことをいつから始めたのかも。……というか、その遊びをあいつに教えたの、俺ですし」
「教えたって、中学生の時?」
安住くんは頷いた。
「真冬ちゃんは、なんで安住くんの真似を?」
そこで一度、安住くんが答えに詰まった。答えられないというより、話していいか考えているような素振りだった。
ややあって、安住くんは口を開いた。
「あいつ、色が見えないんですよ」
「色?」
突然の迂遠な言い回しに、虚を衝かれた。咄嗟には話が見えてこない。
「木を隠すなら森の中って言うじゃないですか」
「言うけど……」
「周りに似たようなものばっかりあったら探し物が見つからないって、まあそれは当たり前なんですけど。でも周りが茶色と緑ばっかりなのに、その探し物が一本だけ真っ赤だったらどうですか?」
「それは、すぐ分かるね」
答えながら、会話の行先を見失う。このたとえ話で、安住くんは何を伝えたいのだろう。
「えーですから、いや変な話してマジで申し訳ないんですけど……」
迂遠な説明である自覚はあるのか、いつも冷静な安住くんがしどろもどろになる。
「でもあいつは色が見えないから、真っ赤な木も他と同じようにしか見えないんです」
このまま行くしかないと決意したように、安住くんは言い切った。
残念ながら、わたしには全く意味が分からなかった。
「えっと、つまり?」
何も伝わっていないと悟り、安住くんは肩を落とした。
「すみません。クソみたいな説明でした」
「そこまでは言わないけど」
「ただそれ以上は勘弁してほしくて。やっぱ本人いない所でそこまで喋るのも……」
安住くんの言うことはもっともだった。板挟みのような状況を作って、困らせてしまった。
「そうだね……無理言ってごめんね」
「いえ、大して役に立てなくすみません。もったいぶるようなこと言ったけど、実は真冬のこと、俺もちゃんと分かってるわけじゃないんですよね。だから嫌がらせしてるとかじゃなくて、そういうクソみたいな説明しかできないんです」
色が見えない。
どういうことだろう。
結局、分からないことが増えてしまった。
「あの、会長。俺も話があって」
そろそろ帰ろうか、というタイミングだった。改まった調子で、安住くんがそう言った。さっきよりずっと、言いにくそうな表情を浮かべている。
「どうしたの?」
気になって先を促すと、
「さっき、全部知ってるって言いましたけど……真冬と会長のことも、知ってまして……」
本当に、気の毒に思うくらい、言いにくそうだった。
けれど、そんな後輩を気遣う余裕はなかった。
知っている。全部。私と真冬ちゃんのことも。
わたしは、呆然とするしかなかった。
「真冬が口滑らせたわけじゃないんですよ」
安住くんが最初に口にしたのは、真冬ちゃんへのフォローだった。
「見てて気づいたんです。俺、デリカシーないから聞いちゃって。真冬は最後まで直接的なことは言わなかったんですけど……だから責めないでやってください」
真冬ちゃんを庇って言っているわけではないのだろう。わたしも、真冬ちゃんが嬉々として言いふらしたとは思っていない。嘘つきな真冬ちゃんだけど、わたしの殺人未遂以降、そういうことに関しては心を配ってくれた。真冬ちゃんを妄信して痛い目をみたばかりなのに、その点については一切疑っていない自分に驚く。
「……そっか」
かろうじて言葉を発して、
「安住くんは、それでもわたしに怒らないの?」
そう聞いていた。
安住くんはぽかんとした。
「なんで俺が怒るんですか?」
「わたしのせいで、彼女が悪者にされてるんだよ」
真冬ちゃんにとって、今の学校は居心地のいい場所ではない。家名くんもそうだ。わたしだけが、のうのうと学校生活を送っている。
それでも、安住くんは怒らなかった。
「真冬がなにも言わないっていうのは、つまりそういうことですよね。なら俺からも言うことはないです」
それに真冬から聞いてますよね、と安住くんは付け加えた。
「俺はしょせんファッション彼氏ですし、とやかく言う資格なんか最初からないですよ」
*
帰り際、真冬ちゃんのマンションの前まで行った。行っただけで、特に何もしなかった。エントランスに入って真冬ちゃんの部屋番号を呼び出すわけでも、真冬ちゃんが偶然出てきてくれるなんて都合よく考えたわけでもなく、ただ十分くらい、下から真冬ちゃんの部屋を見上げていた。時間帯的に、誰もそばを通りかからなかったのは幸運だった。このストーカー行為を目撃されていたら、即刻通報されても文句は言えない。
途方もなく不毛な十分間だった。後で振り返っても、得られたものは何もない。ただ、真冬ちゃんが遠いなあ、とぼんやり思っただけだった。
それでもあの時は、少しでも真冬ちゃんに近づきたかった。
しょせんファッション彼氏ですし、と安住くんが言ったのが頭から離れない。突然の訪問を受け入れてくれて、たくさん話を聞かせてくれた安住くんに、あろうことか嫉妬した。ファッションだとしても、真冬ちゃんの彼氏だと公言できることが羨ましい。男だからそうできるんだよ、という嫌味を必死に飲みこんだ。
そんな鬱屈をどうにかしたくて行き着いたのが、あのストーカー行為だった。一瞬だけでもいいから、安住くんより真冬ちゃんの近くにいたかった。あの時だけは、間違いなくわたしの方が真冬ちゃんの近くにいた。その数時間後には、真冬ちゃんと安住くんは隣り合って眠るかもしれないのに、ちっぽけな慰めのために、わたしは無の時間をすごした。
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