第39話 講師生活①


「ここがCクラスです」


 案内されたのはなんの変哲もない教室だった。カーラがドアを開けて入って行く。俺とルキナも後に続いて教室の中に入る。



 中には13から15歳くらいの子供がたくさんいた。俺たちが教室に入ってきた瞬間にめっちゃ見てくる。


 カーラは見られるのに慣れてるのか平然としている。ルキナは緊張していて動きが固い。俺もそれなりに緊張している。



 カーラが教壇の前に立ち、俺とルキナはその隣に待機する。カーラは1つ咳払いをして生徒たちを見て話し始める。


「皆さん初めまして。今日から1週間程教師を勤めさせて頂くカーラ・ニルウェットです」


 カーラが自己紹介をして俺たちに視線を移す。どうやら次は俺たちの番らしい。あと、初めてカーラのフルネームを聞いたな。


 俺は教壇の前に立つ。


「同じく1週間臨時講師を務めます。グレンです。よろしくお願いします」


 俺はルキナに視線を移す。ルキナは硬い動きで教壇の前に立つ。


「お、同じく1週間生徒を務めさせていただきます! ルキナです。よ、よろしくお願いします!」


 上擦った声で紹介を終えたルキナ。緊張しているせいか、若干言葉がおかしくなってる。


 ルキナは挨拶を終えるとすぐに俺の隣に来た。どうやらあそこで注目されるのは恥ずかしいらしい。代わるようにカーラが再び教壇の前に立つ。


「これから1週間ほどですがルキナさんもここの生徒となります。みなさん、仲良くして下さいね」


「「「「はーい」」」」


 生徒の皆は元気よく返事をする。これならみんなも仲良くやってくれそうだ。


「みんな良い子そうだ。良かったなルキナ」


「うん!」


「では、早速ですが今日は皆さんの魔法を見ます。演習場に行きましょうか」


「「「「「はーい」」」」


 カーラの提案に生徒のみんなが元気良く返事をした。どうやら最初の授業は生徒の魔法を見てからになりそうだ。



 俺たちは生徒の前に立って演習場に移動した。演習場は外にあり、かなりのスペースがあった。どうやら思いっきり魔法を使用しても良いようにと広く設計したらしい。



「さて、では皆さんは自分が得意な魔法を使ってください」


「はい! 私行きたいです!」


 ルキナが元気に手を挙げてアピールする。


「ではルキナさん。お願いします」


「はい!」


 ルキナは前に出て、一度深呼吸をする。ルキナは深呼吸を終えるとゆっくりと魔力を増幅させていく。頑張れ、お兄ちゃんは応援してるぞ。


「よし! 『ウォーターアロー!』」



 ルキナが魔法を唱えると手から水の矢が飛び出して、奥の壁に深々と突き刺さる。あれは確か前にカーラから教えて貰っていた魔法だ。


「はい、ありがとうございます。素晴らしい魔法ですね、威力も充分あります」


「ありがとうございます!」


 ルキナは生徒がいた所に戻った。するとルキナの周りにたくさんの生徒が集まった。


「ルキナちゃんすごいね!」


「どんな魔法の練習とかしてるの?」


「杖とかは使わないんだね!」


 ルキナは急に話しかけられたことであわあわとしているが徐々に慣れ始めていってる。どうやら友達もできそうだ。


「じゃあ、次は私行きます!」


 次は女子生徒が手を挙げ、魔法を撃つ。その後は次々と生徒たちが手を挙げて魔法を撃っていく。俺はその様子をカーラの横で眺める。



「全員終わりましたね。お疲れ様でした」


 カーラが生徒たちに労いの言葉をかける。俺も何か言ったほうが良いのだろうか? なんて言えばいいんだろう。


「……その歳でそんなに魔法が使えるなんてみんな凄いな」


 とりあえずは褒めてみることにした。真面目な話、こいつらの魔法はすごいと思う。


「そうですね、みなさん基礎は出来ていると思うので何から教えましょうか」



 カーラも考えているようだ。講師と言っても俺は何を教えれば良いんだろうか? この間に俺も考えるか。



「あのー、私も先生たちの魔法が見てみたいです」


 俺は声のした方へ向く。すると1人の女子生徒が小さく手を挙げていた。あの子は、確か2番目に手を挙げていた女の子だ。



「私たちの、ですか?」


「はい、どんな魔法を使うのか気になってしまって……急にすいません」


 カーラは一瞬目を瞬かせていたがすぐに優しい笑みを浮かべる。


「大丈夫ですよ。グレンさんも良いですか?」


「別に良いけど、先にどっちが撃つ?」


「なら私から行きましょうか」


 カーラは少しだけ前に出る。そして魔力を高めていく。さっきの生徒たちとは比べものにならない程の魔力がカーラの身に集まって行く。



『アイスウォール!』


 出てきたのはなんの変哲もないただの氷の壁、けれど問題はそこじゃない。デカすぎるのだ。倒れてきたらここにいる全員を簡単に潰せるほどの氷の壁をカーラは生やしたのだ。


「うぅ、寒いぃ」



 生徒たちは壁から出る冷気で寒がっている。カーラも生徒たちを見てあっ!て顔をした。流石にそこまでは考えていなかったのか?


『ファイヤ』


 俺は小さな火を3つほど作ってそれを生徒たちの周りに置いた。すると生徒はほっこりした表情になった。


「あったかい、ありがとうございます」


「それは良かった」


「えっと、グレンさんもあんなことできるんですか?」


「いーや、俺は魔力が少ないからな。上級魔法は使えないからこうやって技術を磨いて来たんだ」


 俺は火の玉を軽く動かして見せる。すると周りの生徒たちからはおぉーっと言った声が上がった。


「でも、あそこにいる先生も同じことが出来るぞ」


「それはみんな知ってますよ。だってカーラ先生はここの首席だったんですから」


 あ、そうなん? て言うか主席って凄いな。カーラを見ると何故か視線を逸らされた。心なしか耳が赤くなっている。


「コホン。で、では今日の授業はこれで終わりです。ありがとうございました」


「「「「ありがとうございましたー」」」」



 こうして俺の初めての授業は問題なく終了した。

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