第27話 カーラとルキナとご飯


「お疲れ様でしたルキナさん。凄く飲み込みが早いですね、思わず張り切っちゃいました」


「ありがとうございます! 私も色々と学ぶことができて楽しかったです!」


 ルキナは明るく笑う。随分とカーラに心を開いたな、こうやってルキナも友達をいっぱい作ってほしいものだ。


「それは良かったです。もう日も暮れてきたのでそろそろ帰りましょうか」


「だな」


 空を見ると夕暮れになっており、ちらほらと星が見え始めている。でもここまで練習に付き合ってくれたカーラをそのまま帰すのは忍びない。せめて何かお返しをしないとな。


「……そうだ、カーラ。このあと時間あるか?」


「え? はい、特に予定は入っていませんけど」


「お礼に飯でも作るよ。ちょっと歩くけど良いか?」


「え、悪いですよ! 私は好きでやっただけですのでお礼なんて言われるほどのことは!」


 カーラは慌てながら早口気味で否定する。やはりカーラは遠慮するタイプだな。


「そんな遠慮しなくても良いんだぞ? 別にそんな大それた物を作るとかじゃないし」


「で、ですけど」


 カーラはまだ申し訳なさそうにしている。うーん、そこまで遠慮されると少しだけ悲しいな。


「まぁ、確かに急だったからな。やっぱやめとくか?」


「……ご迷惑でなければお願いしても良いですか?」


「オッケー。ほら、ルキナも歩くぞ」


「うーん。ちょっと疲れたからおんぶして?」


「しょうがねぇな。ほら、行くぞ」


 俺は手を伸ばしてくるルキナをおんぶして、カーラといつもの宿に帰った。


「お、グレンとルキナちゃん……ともう1人は誰だ?」


 宿に帰るとゴードンさんが俺たちの後ろにいたカーラを見て首を傾げる。見たことはあるが思い出せないみたいな顔してる。


「初めまして。私は月の雫パーティに所属しているカーラと申します」


 カーラはペコリと頭を下げてゴードンさんに自己紹介を簡単に済ませる。


「ああ! なるほどな、だから見覚えがあるなと思ったのか」


 ゴードンさんは思い出したかのように頷いている。


「ちょっとキッチン借りて良いか?」


「良いぞー。明日の宿代ただにするから俺たちの分も作ってくれ」


「そう言うと思ったよ」


 俺はついでにゴードンさんとレーナの分まで作ることにした。


「良し。できだぞ」


 俺は完成した料理を前に出していく。今日は簡単にシチューにした。


「じゃあ、食べるか」


 そうして全員で食べ始める。


「ん! やっぱりグレンが作る料理は美味いな!」


「本当! やっぱりお兄ちゃんのご飯は美味しいね!」


 ゴードンさんもレーナも大変ご満悦だ。簡単に作った物だが喜んでくれているのならなによりだ。


「カーラも口には合いそうか?」


「はい、グレンさんの作る料理はどれも美味しいですので思わず食べ過ぎてしまいます」


「そうか、それなら良かったよ」


 そうして俺たちは食べ進めていく。ルキナも美味しそうに食べていたので良かった良かった。


「では、私はそろそろ仲間の所へ戻ります」


 夕食も食べ終わり、カーラは仲間の所へと帰ろうとしている。帰ってきた時とは違い、外は完全に夜であった。


「ああ、それにしても片付けも手伝って貰ってありがとな。今日は本当に助かったよ」


「いえ、こちらこそ夕食を頂いたのでお互い様ですよ。では、私はこれで、ルキナさんもまたいつか」


「はい! 気をつけて!」


「じゃ、またな」


 


 俺とルキナはペコリと頭を下げて帰っていくカーラを手を振って見送った。カーラが人混みに紛れて見えなくなったのを確認して俺たちは宿に入って部屋に入る。


「いやー、カーラさん優しい人だったね。質問にもなんでも答えてくれるし、魔法も丁寧に教えてくれるしですごく楽しかったよ」

 

「それは良かった。じゃあ風呂に入るか」


「はーい、今日は楽しかったけど疲れたー」


 俺とルキナは銭湯に行って今日の汗を流すことにする。やっぱり風呂に入ると1日の終わりを実感するなぁ。


「じゃあ、そろそろ寝るか」


「はーい」


 俺たちは銭湯から部屋に戻って寝る準備をする。ルキナも大分疲れていそうだ。今日は早めに寝た方が良いだろう。


「じゃあ、お休み」


「うーん、お休みー」


 こうして俺たちはベッドに入って眠る。ルキナはすぐに眠ってしまった。俺もしばらくすると瞼が重くなっていく。

 俺はそのまま眠った。



 >>>>>>>>>>


 私は人混みを避けながら自分の泊まっているホテルへと入る。


「戻りました」


「あ、カーラ。おかえり」


「おかえり、今日も魔導書集め?」


 ホテルの中の部屋に入るとリズとステラがベッドの上でくつろいでいる。どちらもラフな服装でいつでも寝られるような格好をしていた。


「ええ、その時に偶然ですがグレンさんとルキナさんに会ってそのまま魔法の練習をしてました」


「?? グレンは分かるけどルキナって子は誰? 知り合い?」


 ステラは首を傾げる。私は2人に彼女のことを説明しようとするとリズが口を開く。


「ルキナはグレンの妹。水色の髪の可愛らしい子」


「え? リズは知ってたんですか?」


「うん、少し前に会ってそのまま3人でクエストに行った」


 私は少し驚いた。まさかリズがルキナさんと既に知り合っていたなんて。私とアリスが調査に行った時でしょうか? 私は少し考えているとステラが話しかけてきた。


「で、どうだった?」


「え?」


「グレンとルキナって子と一緒にいたんでしょ? 楽しかった?」


「………」


 私はステラの質問に今日のことを振り返って考える。パーティメンバーもいない何もない日に男の人と何時間も一緒にいて、夜ご飯も食べた。けれど別に不快感はなかった。むしろ


「そう、ですね。楽しかったと思います」


 私は楽しかったと思う。相変わらずグレンさんからは嫌な視線を感じなかった、妹さんも一生懸命に魔法に取り組んでくれた。とても充実した1日だったと思う。


「へぇ、良かったね」


「……ふーん」


「あの、リズ? なんで少し不機嫌になってるんですか?」

 

「………分からない。けど、胸が変な感じがする」


 私もその原因を考える。ステラとリズも一緒にうーんと唸りながら考える、けれど誰も口も開かない。多分、誰も思いついていないのでしょう。


「………これだけ考えても分からないのなら仕方がありません。この原因はまたいつか考えましょう」


「そうだね、リズも体調とかは特に変わってないんだよね?」


「ん、大丈夫」


「でしたらこの話はこれで終わりにしましょう。私はアリスが出てくるまで少し横になります」


 そうして私は自分のローブを畳んでベットで横になる。


「オッケー、ならアリスが出てきたら起こすね」


「お願いします」

 

 そして私はゆっくりと目を閉じる。意識がだんだんと薄れていき、私はそのまま眠りについた。

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