第25話 ルキナと休日
「あー、今日は何しようかな」
俺はベッドの上で寝っ転がりながら何をするか考える。昨日は水草の採取をして結構な金を稼いだ。だから今日はゆっくりしようと決めたのだ
「もう! 今日は一緒に遊ぶって言ったじゃん!」
「うへぇー」
すると横にいたルキナが俺の背中に乗っかって来て、ぷんぷんと怒る。重くはないが髪の毛が当たってくすぐったい。
「覚えてるよ。今日はそれについて何をしようか考えてたんだ」
「あ、なら私行きたい所ある!」
「行きたいとこ?」
一体どこに行きたいのだろうか? 俺は首を傾げてルキナを見る。
「うん! 前に見たいっぱい飾りつけしてあっていろんな飲み物がある所!」
「飲み物が?………あー、あそこか」
大体どこに行きたいのか分かった。やっぱりルキナも女の子だな。
「じゃあ、今日はそこに行くか?」
「うん!」
なら、今日の予定はそこに行くので決まりだな。
「じゃあパッと支度して行くか」
「はーい!」
こうして俺たちは支度を済ませて宿を出て目的の場所へと向かった。
「ここだろ? ルキナが行きたい所って」
「そう! 昨日チラッと見て行ってみたいなぁって思ってたの!」
俺たちが来たのはオシャレな雰囲気の店だ。昼間なのに眩しいくらいの飾りつけがしてあり、いかにも女性に人気のありそうな店の目の前にいる。
俺も興味はあったが流石にここに1人で入る勇気はなかったので未だに入ったことはない。
「じゃ! 早速入ろう!」
「はいはい。そんなに急がなくても大丈夫だって」
俺はルキナに手を引っ張られながら店の中に入った。
「おー、やっぱ中もおしゃれだな」
中も思った通り綺麗で女の人が椅子やテーブルに座っておしゃべりをしていた。あとまじで男の人はいない。
「ねー! それにいろんな飲み物あるし、何飲もうかなー」
ルキナは前に行き、どれを飲もうか迷っている。俺もルキナの隣まで歩いてどれを飲もうか考える。
「私、これにする!」
「じゃ、俺はその隣のやつにするか」
俺たちは何を飲むか決めて注文をする。そして飲み物が入った容器を受け取ってそのまま店を出る。
「!! お兄ちゃん、これ美味しい!」
「こっちのも美味いぞ。甘さは控えめだけど飲んだ後のスッキリ感が良いな」
俺たちは受け取った飲み物を飲みながら街を歩く。適当に選んだやっただったけど美味いな。
「ねぇ、お兄ちゃんのも一口ちょうだい?」
ルキナは俺の飲み物を見ながら可愛らしくおねだりをしてくる。
「良いぞ、ほれ」
俺は自分の飲み物を渡す。するとルキナは自分の飲み物を渡してきた。
「ありがと、じゃあお兄ちゃんも私の飲んでいいよ」
「サンキュー、お、こっちのも美味いな」
俺とルキナはお互いの飲み物を交換して飲む。ルキナの飲み物は生クリームのような甘さの飲み物だった。
「ほい、ありがとな」
「お兄ちゃんのも美味しかったよ。はいどうぞ」
「あとはどうする? どこか行きたい所とかあるか?」
ここから先は完全にノープランだ。俺は特に予定は決めていないのでルキナに行きたい所を尋ねる。
「んー、行きたいところ。行きたいところ」
ルキナはうーんと唸る。俺も一応考えているが特にどこも思いつかない。
「あ! なら次はあそこ行きたい! あのおっきな建物」
ルキナは思いついたかのような顔で奥の建物を指を向ける。
「あれか? あれは”魔導書店”だから特に何か面白い物があるわけじゃないぞ?」
「どんな本があるか見てみたい!」
「あ、そう? じゃあ行くか」
俺たちはそうして魔導書店に行くことにした。俺もだいぶ前に行った以来だから何か変わったのか少し楽しみだ。
「思ったより大きいね」
「だな」
ルキナは店を見上げながら呟く。外見は一軒家より少し大きい程度、少し古いタイプの家に見える。
「じゃ、中に入るか」
そうして俺たちは中に入る。中は至る所に本がある。右を見ても左を見ても本だらけだった。魔導士っぽい人たちが本を大量に買っている。
「やっぱり中は魔導士っぽい人が多いね。それにたくさん本買ってる」
「だな、じゃあどれを買うか………あれ?」
大量に本を買っている人たち、その中に見覚えのある人がいた。魔女のようにローブと帽子、それに黒いタイツを履いている女性が。
「あ、グレンさん? こんな所で会うなんて奇遇ですね」
「そうだな。カーラもここで魔導書を買ってんのか?」
「はい、私はお休みの日は魔導書を読むのが趣味なので」
俺とカーラが話していたらルキナが横からちょんちょんと触ってくる。それを見てカーラもルキナを見て目をパチクリとさせる。
「そういえばグレンさん、その方は? もしかして彼女さんですか?」
「いや、妹のルキナだ。で、ルキナ。こっちは月の雫のパーティメンバーのカーラだ」
「あ、そうなんですか。可愛くて綺麗な妹さんですね」
「まぁな、まだ甘えたがりで手のかかる妹だけど、自慢の妹だよ」
俺が話しているとルキナはカーラを見て何かを考えている顔をしていた。何か聞きたいことでもあるのか?
「どうした? 何か聞きたいことでもあるのか?」
「………この人は大丈夫そうかな?」
ルキナはカーラを見ながらボソッと呟く。一体何が大丈夫なんだ?
「おーい、ルキナー?」
俺は目の前で手を振って自分の世界に入ってしまっているルキナを連れ戻す。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「何か見てみたい本でもあったのか?」
「いや、そう言うわけじゃないよ」
じゃあ何を考えていたのだろうか? 気にはなるがプライバシーは大事なので聞かないことにする。
「グレンさんたちは魔導書を買いに来たんですか?」
「そうだな、どんな本があるのか気になってな」
「……なるほど」
するとカーラは顎に手を置いて何かを考えている。その姿はとても上品でどこか良いところのお嬢様のような気品があった。
「もし迷惑でなければ私が案内しましょうか? ここら辺の本は大体買ったので」
「お、本当か? それはありがた……ん? 買った?」
ちょっと待て。さっきカーラの口から信じられないような言葉が出たぞ。いや、聞き間違いかも知れない。魔導書はそれなりに値段もする、それがこんなに大量にあるんだ。うん、聞き間違いだな。
「はい、買いました」
「………」
聞き間違いじゃなかった。カーラはなんてことないように言っているがそれがどれだけすごいことか。こんなに大量の本を買ってしかもそれを読むなんてよほど魔法が好きじゃないとできないことだ。
「凄いですね。買った本の内容とかは頭に入ってるんですか?」
「はい。大体の内容は覚えてますよ」
「すごいね、お兄ちゃん。これが高ランクパーティの休みの日なんだ」
「だな」
ルキナはえらく感心している。でもな? お前が昨日あったリズも同じ高ランクパーティなんだよ?
「ふふ、ありがとうございます。でも私の場合は趣味でもありますのでそんなに凄いものではないですよ」
「それでもすげーよ。じゃあ、お願いしても良いか?」
「はい、お願いされました」
カーラは爽やかな笑みで快く引き受けてくれた。とてもありがたいことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます