第24話 3人でクエスト


 俺たちは目的の場所へ辿り着いた。そこそこ長い道のりだったが雑談をしていたので早く感じた。


「じゃ、さっさと終わらせるか」


「ん、頑張ろー」


 リズが気の抜ける声で同意する。


「じゃ、手分けして探すか」


「オッケー」


「分かった!」


 こうして俺たちは手分けして水草を探すことにした。



>>>>>>>>



「ふう、結構集まったな。これだけあれば良いか」


 俺は袋の半分くらいまで水草を集め終わり、そろそろ切り上げることを考える。水草は一本銀貨1枚だ、今の時点でも銀貨10枚くらいにはなるだろう。


「さてと、あいつらの所に行くか」


 俺はそのまま2人を探そうとする。すると、


「ん? なんだ?」


 2人を見つけた。けれどリズとルキナと2人の男が話しかけていた。俺はゆっくりと2人の方へ歩いて行く。すると話し声が聞こえてくる。



「俺たちもここで採取クエストやってるんですけど一緒にどうですか!?」


「……嫌」


「そっちの子は見たことないな。リズさんのお知り合いかな?」


「………そうですけど」


 ルキナとリズは茶髪の男2人組に話しかけらていた。リズは俺の時とは違い、嫌悪感をまるで隠そうとしていない。ルキナも嫌そうな顔をしている。


「こんな所でお会い出来るなんて光栄です! 少しだけでも良いのでお話しませんか!?」


「だから嫌って言ってる」


「そっちの子も可愛いね!」


「はあ、どうも」


 リズは取りつく島もないと言った感じだ。ルキナは軽薄そうでチャラチャラしてる男は嫌いだからすごく顔に出ている。


「え? 俺あそこに行かなきゃなんないのか?」


 普通に嫌なんですけど。でも、絡まれてるのを見過ごすのも良くないしな。


「……仕方ない。行くか」


 俺は覚悟を決めて、2人の方へ歩いて行く。するとリズと目が合った。


「グレン、こっち」


「あ、はい」


 俺はリズに言われるがまま、リズたちの元まで歩いて行く。ルキナは先ほどまでの顔が嘘のように明るくなる。


「お兄ちゃん!」


「はいはーい。お兄ちゃんですよー」


 俺は手をひらひらと振る。ふと横を見るとチャラチャラとした男たちが明らかに不機嫌になっている。


「誰っすか? 今は俺たちが話してたんですけど」


「なんか用があるなら後にしてくれません?」


「いや、だから言ったじゃん。俺はそこにいる子の兄だって」


 俺は呆れ半分で2人を見る。面倒くさいことになりそうなので早く2人を連れて街に戻りたい。


「あ、そうっすか。で、お二人ともどうですか!? 俺たちと一緒にクエスト!」


 茶髪の男は俺を無視してナンパを続ける。すごい度胸だ、兄の前で妹をナンパするなんて普通だったらできることじゃないな。


「だから何度も言ってる。あなたたちとは絶対に嫌」


「私も人の兄を適当に扱う方とは一緒にクエストはしたくないです」


 ルキナとリズはナンパ男たちの誘いをバッサリと両断する。多分、この男たちは冒険者になって日が浅いのだろう。でなければ男嫌いのリズをナンパするなんて発想は出てこない。


 あれ? じゃあ俺ってなに?


「そんなダサい奴より俺たちの良いですって! 絶対楽しいですよ!」


 そして男の口からポロッと俺を貶す発言が出た。その瞬間、2人の魔力が上がる。


「ヒッ!?」


 俺を貶した男と隣の男は小さく悲鳴を上げて腰を抜かす。ルキナとリズが男に対して手をかざして魔法を放とうとしていたからだ。


「はい、2人ともそこまで」


 俺は攻撃体勢に入っているリズたちを止める。そして怯えて腰を抜かしている男たちに目線を向けて。


「あんたらも、これに懲りたらナンパする時は人を選べよ。次は助けないからな」


 俺は呆れながら2人に警告する。すると男たちは彼女たちの恐ろしさが分かったのか、首を縦に振る。


「行こう、グレン」


「お兄ちゃん、行こう」


 2人は背を向ける。2人も落ち着いたのか、もうこれ以上は何もする気はないようだ。俺もその後に続いて歩き出す。


「もう! あの人たち本当にムカつく! 人の兄を貶すなんて信じられない!」


 ルキナはぷんぷんと怒っている。俺が止めるのが遅れていたら、ルキナは間違いなく魔法をぶっ放していた。俺を慕ってくれるのはありがたいが少し過激な気もする。


「まぁ、もう終わったことだ。それよりどうだ? 水草はちゃんと取れたか?」



「ふふーん。私はねー、こんなに取れたんだよ」


 そう言いながらルキナは袋に入った水草を見せて来る。


「おー、やるなぁ。流石は俺の妹だ」


 俺はルキナの頭をわしゃわしゃと撫でる。本当によく出来た妹だ。


「えへへ! お兄ちゃんのこれ好き」


 ルキナは顔を綻ばせる。昔も今もルキナはこうやって頭を撫でられるのが好きなのだ。


「……良いなぁ」


「ん? どうしたんだ?」


 ルキナの頭を撫でていると横にいたリズが羨ましそうに俺たちを見ていた。


「ねえ、グレン。それ私にもやって?」


「え? それって…頭を撫でる奴か?」


「そう」


「いや、でもなぁ」


 俺は少し躊躇う。妹ならなんの問題もないが、他の女性、しかも高ランクパーティの美人と来たらどうしても躊躇してしまう。


「……駄目?」


「わ、分かったから。そんな目で見ないでくれ」


 俺はしょんぼりとリズの顔に負けて撫でることにした。するとルキナが間に入ってきた。


「それなら私が撫でますよ! お兄ちゃんも女の子の髪を気軽に触ろうとしちゃ駄目!」


「……すいません」


 確かにそうだ。幾ら友達とはいえ相手は女性だ。改めて考えても確かに駄目だな。これからはちゃんと気をつけるようにしよう。


「ん、じゃあルキナ。お願い」


 そう言ってリズはルキナに頭を近づける。


「え? あ、分かりました」


 ルキナは一瞬驚いた顔をしていたが、すぐにリズの頭を撫で始める。


「……確かに気持ち良い」


 リズはどこか満足したような顔だ。ルキナは反対に複雑そうな顔をしていた。なんでこんなに表情に差があるのだろうか? 俺は首を傾げる。


「ん、ありがとう。もう大丈夫」


「そ、そうですか。それなら良かったです」


 リズのなでなでタイムが終わった。ルキナはどこか疲れているような気がする。いや、そりゃ30分も撫でてたら疲れるか。


「じゃあ帰るか。ルキナも初めてのクエストで疲れたろ? ほれ」


 俺はルキナの前で背中を向けてかがむ。ルキナが疲れてるように見えたのでおんぶでもしてやろうと思ったのだ。


「!! ありがとう!」


 ルキナは勢い良く背中に飛びついて来た。俺はそのままルキナをおぶって歩き出す。


「今日は疲れたろ? しんどかったら寝てても良いぞ」


「ううん、大丈夫」


「そうか? まぁ、寝たくなったら寝ろよ」


「うん! えへへ、やっぱり安心する」


 ルキナは俺の肩に顔を置いて全身密着しているような状態だ。ちょっとくっつきすぎな気もするがそれだけ俺を信頼してくれている証でもあるので悪い気はしないな。


「良し、じゃあ帰るか」


 俺はルキナをおぶったまま街へ帰ろうとする。リズも少し遅れて歩き出す。


「どうした? 早く行こうぜ」


「……うん」


 リズの返事が心なしか元気がない気がする。多分、あの男たちに絡まれたのが原因だろう。これは早く帰って休んだ方が良いな。


「??……なんか少し胸が変な気がする」


 リズは胸に手を当てて不思議そうな顔をする。しかし、グレンが先に歩いて行くのを見て追いかける。結局リズはそれがなんなのか分からないままになった。

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