第23話 現実逃避なり


「グレン?」


「お兄ちゃん?」


「ん? あぁ、ごめん。ちょっと頭の中を整理したくてな。それでなんの話だっけ?」


グレンは現実に引き戻されて再び2人の方へ向く。しかし何を言っていたのかは聞いていなかった。


「だから、横の人の説明」


「私もどういう関係か説明して欲しいなぁ」


 リズは至って普通だがルキナの目が笑っていない。大体そんなことを言われてもただの友達と妹としか言うことがない。それ以上でも以下でもないし。


「えぇと、じゃあルキナ、この人がさっき話してた友達になったリズだ」


「あぁ、そうなんだぁ」


「で、リズ、横にいるのが俺の妹のルキナ」


「…グレンって妹いたんだね」


俺はお互いにお互いの紹介をした。どっちも良く分からない反応だったが何も起きなさそうな感じだ。


「初めましてリズさん。私の!! お兄ちゃんがお世話になってます!」


ルキナはリズに挨拶をしていたがそんなに強調しなくても良いのではないかと思う。第一に俺とあなたは兄弟でしょうに。


「ん、私はグレンの友達のリズ。よろしくルキナ」


まぁ、何はともあれ仲良くやって欲しい。妹と友達がバチバチなんて気まずいにも程がある。


「まぁ、2人とも仲良くな? ルキナもそんな所を強く言わなくていいから」


「……うん」


 力のない返事だ。…まったくしょうがないな。


「クエスト終わったら明日はどっか遊びに行くか?」


「!! うん! 行くー!」



元気な返事が帰ってきた。さっきまで元気が無くなったのに一瞬で復活した。我が妹ながら単純すぎる気がする。


「じゃあ、早く行くぞ」


「はぁーい!」


俺とルキナはその場を後にしようとした時に。


「待って」


リズに呼び止められた。後ろを振り返るとリズは何か言いたそうな顔で俺を見ている。


「え? どうした?」


「私もついて行っていい?」


「え?」


ルキナがリズの言葉に驚いていた。俺も驚いている。ここでもついて来ようとしていることに驚いてしまう。


「え? ついて来るの?」


「うん。駄目?」


「うーん、俺は別に良いけど」


チラッとルキナの方を見ると驚いて固まっていた。ルキナにとってはそれほど衝撃的な物だったんだろう。


「ルキナも良いか?」


「おーい。ルキナー?」


ルキナの返事がなかったので顔の前で手を振ってみた。すると


「え? あ、何? お兄ちゃん」


「いや、だからリズも一緒に来ていいって話」


「………」


ルキナは固まってしまう。何をそんなに悩むことがあるんだろうか? まぁ、確かに人にはどうしても苦手な人はいるからしょうがないけども。


「とりあえず、今日のクエストを通して色々と話してみろよ。お互いを知ったら案外気が合うかも知れないぞ?」


いろんなことを話せば、もしかしたら仲良くなれるかも知れないと思い提案してみる。


「そう…だね。じゃあよろしくお願いします。リズさん」


「ん。よろしく」


こうして俺とルキナとリズの3人でクエストに行くことになった。


「なぁ、リズは今日なんか予定とかなかったのか?」


「…特にない」


「じゃあ、他のみんなは? 一緒にいなかったみたいだけど」


「アリスとカーラは調査のクエスト。ステラは……多分どこかで寝てると思う」


「なんというか、自由ですね。もっとこう、高難易度のクエストをどんどん受けているイメージでしたので」


 俺もルキナの言ったことに同意である。俺の知ってる高ランクパーティはもっと忙しかった気がする。


「どう? 羨ましい?」


 リズが俺に対してドヤ顔をかましてきた。なんだ? 中堅冒険者に対してのマウントか? 


「まぁ、羨ましいと言えばそうだな」


「………」


 俺の答えにリズが黙り込む。


「ん? どうした?」


 俺がリズの方へ向くと何かを考え込んでいるような顔をしてた。しばらくするとパッと俺の方へ顔を向けた。


「……なら、私たちのパーティに入ってみる?」



「「……はい?」」


 俺とルキナは同時に間の抜けた声が出た。それはいきなりこんなことを言われれば誰だってこんな声が出ると思う。


「じゃあアリスに後で聞いてみるね」


「いやいやいやいや! 待て待て! なんでもう決まったような感じになってんだよ!」


 俺はあまりの急展開に声を大にしてストップをかける。


「え? だって、さっきはいって」


 リズは首をこてんと傾けて不思議そうな顔をしていた。


「いやそれは聞き返しただけだ! なんでいきなりそんな話になるんだよ!」


「うーん。グレンと一緒に居たいから?」


「え?」


 俺はリズの思いがけない言葉に固まってしまう。もしかしてリズって俺のこと……


「……お兄ちゃん?」


「はッ!」


 俺はルキナの声で我に返った。けれどなんでだろうか? ルキナの顔が見れない。なんかやばい気がする。


「リズさん? さっきのはどう言った意味ですか?」


 ルキナはニコニコしながらリズに話しかけている。けれどまた目が笑っていなかった。


「うーん。また一緒に遊びたいのと、色々ごはん作って欲しいから?」


「…………」


 俺は黙ってしまう。あぁー、なるほどね? いや、別に? 一瞬でも俺のことが好きなんじゃないかなんて思わなかったし? リズってそういうとこあるなって分かってたし?


「ああ、なるほど! そうだったんですね!」


 ルキナはなぜか嬉しそうだった。なぜ、そんなに嬉しそうなんだ。こっちは悲しいってのに。


「はぁ、さっさとクエスト終わらせて帰るか」


「ん? なんかグレン元気ない?」


「なんでだろーな?」


「??」


 リズは首を傾げて不思議そうにしていた。これだから天然娘は、まぁ勘違いした俺が悪いんだけどな。


「もうちょいで着くな。2人とも準備は良いか?」


「ん、大丈夫」


「私も大丈夫だよ」



 こうして俺たちは目的の場所についた。

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