第22話 ルキナとギルドへ
「あー、よく寝たなぁ」
「すぅ、すぅ」
目が覚めると朝になっており、俺の腹にルキナが抱きついて寝ていた。
「おーい、ルキナー。起きろー」
「うぅん。あ、お兄ちゃんおはよー」
俺はルキナを起こした。起きたルキナはまだ眠そうに目をこすっている。
「ほら、下に行ってご飯食べるぞ」
「うーん。分かったぁ」
ルキナは多分まだ目が覚めていないのだろう。目はまた閉じてるし、首をコックリ、コックリと動いている。
「しょうがない。ほら、行くぞ」
「うーん」
俺は妹をお姫様抱っこしてそのまま下に向かう。家にいた時も起きない時は時々こうやって運んでいたから懐かしい気分になるな。
「ほら、ちゃんと飯食え。今日は冒険者ギルドに行くぞ」
「うーん。ギルドぉ?」
「そ、ギルド」
そしてグレンはルキナにご飯を食べさせて、身支度を済ませると2人で冒険者ギルドへと向かった。
「へぇ! ギルドってこんなに大きな建物なんだね」
ルキナはギルドを見上げて驚いていた。確かにこんなにでかい建物は俺たちの村では見ないから驚くのも無理はない。
「中も結構広いし、人も結構いるぞ」
「なんかドキドキする。…ふぅ、良し!」
ルキナは胸に手を当てて深呼吸をする。そして目をキリッと開き、ギルドの中へと入っていく。
「わぁ! 中も広いね!」
「だろ? で、あそこの掲示板でクエストを受けることができるぞ」
俺はいつも自分がクエストを受ける時の掲示板を指を指した。
「お兄ちゃんはいつもあそこからクエストを受けてるの?」
「そうだぞ。今日は試しになんか受けてみるか?」
ルキナに尋ねてみるとうーんとしばらく唸りながら決めあぐねていた。
「うーん、どうせなら受けてみようかな」
「分かった。危険があんまりないこれにするか」
そう言いながら1枚の紙を掲示板から剥がす。書かれていた内容は
「じゃあ、行くか」
「うん! あと昨日言ってたレーナちゃんのこともちゃんと教えてね?」
「ん? ……あーなんかそんなこと言ってたような気がするなぁ」
「そうだよ。昨日約束したよね?」
「分かった 分かった。行きながら教えるよ」
ルキナがこちらへ歩み寄ってくる。別に俺の生活はそんな聞くほど面白いものでもないけどなぁ。そんなに聞きたいのか?
少しだけ疑問に思ったがさほど気にすることでも無さそうだったので、気にせずにクエストに行くことにする。
「お兄ちゃんって毎日クエスト受けてるの?」
「いーや? ちゃんと休むし、休んでる日は友達とかとご飯食べに行ったり、基本的にのんびりとしてるな」
ギルドを出て、クエストの場所である”ロイア山脈”へ向かう為にルキナと話しながら歩く。
「友達ってどんな人がいるの? 楽しい?」
「そうだなぁ。俺の友達は色々と癖が強いけどそれでもいい奴らだし、楽しいよ」
「例えばどんな人がいるの?」
ルキナは首をコテンと倒して、聞いてくる。
「例えばかぁ。そうだなぁ、まずいつも一緒の3人がいるんだけどそいつらとは結構遊んでるな」
「1人は獣人でノリが良くて面白い奴、もう1人は金髪で優しそうな奴、もう1人は茶髪のメガネで頭が良さそうに見えるが1番の馬鹿だったりする」
「お兄ちゃん、楽しそうだね」
「ん? そうか?」
「うん、3人のことを話してる時はすごく楽しそうだったよ」
どうやら俺は楽しそうにしてたらしい。自分では気づかなかったけど、他の人から見ればわかるのか。
「あとはさっき行ったギルドにも友達が居てな? 男の友達とか、あとは最近友達になった奴らとか」
「最近友達になった? どんな人たち?」
「まぁ、有名なパーティでな? なんとこの街に2パーティしか居ない女の人だけで構成されてるんだ」
「………」
「え? どうしたんだ?」
急にルキナがピタッと止まる。あまりに急だったので驚いたが、何かあったのかルキナに近づいて見ると。
「その話、詳しく教えて」
またもやルキナの目に光がない。我が妹ながらいつの間にこんな顔ができるようになったのであろうか。
一瞬ルキナの顔を見てビクッとなったのは内緒だ。
「あ、あぁ。それでな? 最近そいつらと一緒にいることが多くてな? それで実家に帰る前とか、少し前のクエストとか一緒に行ったりしたんだ」
「へぇー。ふーん。……ねぇ、その人たちって可愛い? 綺麗?」
さっきと打って変わってニコニコとしているルキナ。だがなぜだろう? 笑っているはずなのに笑っている気がしないのは。
「えぇと。うん、まぁみんな美人なんじゃないかな」
「……そんなに綺麗な人たちなら私も会ってみたいなぁ」
あ、駄目だ。なんで駄目と思ったのは分からないが、とにかく駄目な気がする。
「ま、まぁ、その内な? 向こうも忙しいだろうし、時間も中々取れないと思うぞ」
「そっかぁ、残念だなぁ」
そう言いながら本当に残念な顔をするルキナ。俺としてはそちらの方がありがたい。
「じゃあ行くかぁ」
「あれ? グレン?」
「……」
凄く聞き覚えのある女性の声。ゆっくりゆっくりと振り返るとそこには薄紅色のロングの髪を持つエルフの女性がいた。
「グレン……その人は?」
「お兄ちゃん?」
リズは横にいるルキナが気になっている様子だ。ルキナに至ってはいつもの様に俺を呼んでいるだけなのに圧が凄い。
「いい天気だなぁ」
一方グレンは空を見ながらぼやいていた。今の出来事を忘れて一旦リセットしようとする。
「今日は何を食べようかなぁ」
要は現実逃避である。
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