第41話 昼飯のあとに


「あー、食ったなぁ。みんなもお腹いっぱいになったか?」


「うん。俺も満腹だよ」


「私もお腹いっぱい〜」


「私もたくさん食べたわ。どう? お腹少し出てないかしら?」


母は、そうして父にお腹を見せた。父はそれを見て、顔を僅かに赤くして母のお腹を触る。


「う、うん。出てないと思う。いつも通りのお腹だ」


「あら、そう? ふふ。なら良かったわ」


「……」


俺は無言でそのやり取りを見ていた。一体俺は何を見せられてるんだ? なんで俺は親のラブコメを見せつけられてるのだろうか。

 なんか甘々すぎるからちょっとコーヒー飲みたくなってきたな。


「私はちょっとクウとクエと遊んでくる」


「なら私もついて行こうかしら?」


「良し、グレン! 俺たちはリベンジだ! 絶対に釣ってみせるぞ!」


「せめて、1匹くらいは釣りたいなぁ」


そうして母さんとルキナは2匹と川遊びに、俺と父さんはせめて1匹でも釣るために再び釣りをする。


「なぁ、グレン。お前あっちで彼女とかは出来たか?」


「……出来たって言ったらどうする?」


「だ、駄目だ! まだグレンに彼女は早い! お父さんは認めませんよ!!」


父さんは慌てたようにこっちを見ながら言ってくる。なら俺はいつになったら作っても良いのだろうか?



「彼女はいないよ。でも最近だったら女の人の友達が出来たかな?」


「うーん。まぁ、友達くらいなら良いか」


「全く。そんなんじゃルキナに彼氏が出来た時どうするんだよ」


「え?」


俺の言葉が予想外だったのか。父さんはこっちを見て目をパチクリとさせている。



「ははは! 面白いことを言うなグレンは! ルキナは15歳なんだからまだまだ早いさ!」


「じゃあ仮に彼氏ができてその人を連れてきたらどうすんだよ」



俺の質問に父さんはハハハと笑う。それほどおかしい質問をした気はしないのだが。


「……コロス」


「……」


父さんの顔が真顔になるのを見て、俺は言葉を失った。父さんの目は本気の目だった。


これはやばいな。



 近い将来、ルキナが彼氏を連れてきた時にその彼氏は生きて帰ることができないかも知れない。


 俺にできることは名前も知らない彼氏さんが死なないことを祈るだけだ。



「そう言えばちゃんとルキナから貰った仮面は持ってるのか?」


「ちゃんと持ってるよ」


「なら、良かった。お前の力は規格外だからな。正体がバレないようにちゃんとつけろよ」



俺が正体を隠す1番の理由。それは父に言われたからだ。




『強すぎる力は、危険なんだ。お前の力に多くの人間が気づくと、お前自身にも危険が及ぶ』



 その声色や雰囲気は普段と違い、今までの父とはかけ離れていた。




だから俺は、自分の力を隠すようにしている。



 まぁ、バレたらそれはそれで『しょうがないなぁ』とか父さんは言いそうだけど。



 だけど、ルキナは俺の力を見たことがあっただろうか? それとも父さんから聞いて俺に渡したのか?


 いろんな考えがグレンの頭をよぎる。



 けれど……まずは、そうだな。



「ははは。俺を鍛えた父さんが言うのかよ」


「ん? 俺なんかおかしいこと言ったか?」


「いーや。なんでもないよ」


 そして再び泳いでいる魚を見ながら釣りを始める。遠くを見ると母さんとルキナ、そしてクウとクエがみんなで楽しく遊んでいた。


「お? きたぁー!」


父さんが元気な声を出したので何事かと見てみる。すると父さんはしっかりと魚を1匹釣り上げていた。


「あ、俺も来たな!」


父さんが釣り上げた数秒後に俺も魚を1匹釣り上げた。父さんのも俺のもそれほどデカくはないがそれでも釣り上げたと言う事実が嬉しかった。


「グレン、やったな! リベンジ成功だ!」


「あー、釣れて良かったぁ」


俺は安堵してホッとため息をつく。父さんは手を出してきたので俺と父さんはパァンと音を鳴らしてハイタッチをする。

 これで一応は成果0では無くなったな。


「良し! この調子でどんどん釣り上げよう!」


「そうだなぁ。あと何匹釣れるだろうか?」


そして釣った魚を外して餌をつけて水面に糸を垂らす。ここからたくさん釣れると良いんだけどな。


>>>>>>>


「もう暗くなってきたし、そろそろ帰りましょうか」


「ほら、お兄ちゃんもお父さんも帰るよ」


「分かった。…父さん帰るよ」


「………」


父さんの元気がない。それもその筈だ。俺はあの後なんとか2匹釣ったが父さんは1匹も釣れなかった。可哀想だがもう時間なのでしょうがない。


「ほら、帰ったら俺が晩飯作ってあげるから」


「……分かった」


父さんはしぶしぶと言った形で帰宅することになった。

本日の成果は母が7匹。

ルキナが5匹。

俺が3匹。

父が1匹だ。


さて、俺も帰って何を作るか考えないとな。



——————


昨日寝ぼけて予約投稿の時間を間違えました。なので急遽2話を連続投稿することにしました。


うわぁぁああああ!!! やっちまったぁぁああああ!!!

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