第40話 家族で釣りをしよう


「さ! 着いたぞー」


父さんの言った通り、俺たちは釣りの出来るスポットについた。ここは前と変わらず綺麗な渓流で、少し奥には小さな滝が流れている。


「懐かしいなぁ」


俺は独り言のように呟く。 ここはだいぶ昔にクウとクエを保護した場所だ。 こいつらを見つけた時はボロボロの状態だったので俺と父さんが急いで保護をした。


回復した後もしばらくこいつらの親を探したのだが見つからなかったので家族として迎えることにしたのだ。


「さて、ルキナ。釣竿の餌つけれるか?」


「ううん。お兄ちゃんやってくれる?」


「しょうがないなぁ。クウとクエもちょっと待っててくれよ?」


「クゥゥ」


「クェェ」


2匹は早く泳ぎたそうに水を見ている。少し可哀想だがもう少しだけ待ってくれ。その間に俺はルキナの釣竿に餌をつけて、自分のにもつける。


ふと横を見ると父さんが、同じように母さんの釣竿に餌をつけていた。


「ありがとう。お父さん」


「これくらいどうってことないさ!」


あっちは相変わらずである。そんなこんなでみんな釣りの準備が出来る。…っとその前に


「クウ。クエ。遊ぶのはいいけどこっち側は危ないから近づかないこと。 こっちにくる時は川から出て歩いてくること。 守れるか?」


「クゥ!」


「クェ!」


「うん。いい返事だ。じゃあ遊んでこい!」


2人は勢いよく水の中に入り泳ぎ出す。ウチの風呂は広いと言ってもそれでも2人には物足りないだろう。

 俺たちは2匹が遠くの所に泳ぎに行ったのを確認してから、釣り糸を垂らす。


「さて、なにが釣れるかなー」


「お兄ちゃんは向こうでも釣りはしてたの?」


「そうだなぁ。まぁ、2ヶ月に一回はしてたかな」


「結構してるんだね」


そんなこんなでのんびりと釣りをしながら会話をする。滝の音に、鳥の鳴き声がよく聞こえる。これが釣りの醍醐味だいごみである。


「あと、私の渡した仮面はちゃんと使ってくれてる?」


「……ウン。使ったよ」


「なんで、そんな微妙な顔するの?」


おっと、どうやら顔に出てしまったらしい。確かにちゃんと使ったし役にも立った。でもな? あの仮面はお兄ちゃんは、どうかと思うよ。


「いや、うん。すごく役に立った。ありがとう。ルキナ」


「ふふふー。あの仮面、すごくかっこよかったでしょ?」


「……ソウダネ」


「だから、なんで微妙な顔するの!?」


どうやら俺はまた微妙な顔をしているらしい。だってしょうがないじゃん。顔に出ちゃうんだから。


「お? ルキナの方、引いてるぞ」


「え? あ、ほんとだ」


ルキナの竿がしなっていた。ルキナは釣竿を持ち直して勢い良く、竿を引っ張った。


「おー、結構でかいな」


「えっへへー!」


妹が嬉しそうにドヤ顔をして釣り上げたのはあゆっぽい見た目の魚である。こいつは今日の晩御飯にでも並べよう。


「ほら見て! こんな大きな魚が釣れたわ!」


「おー。やっぱり母さんは凄いな!」


父さんたちも盛り上がっている。母さんも大きな魚が釣れてはしゃいでいた。父さんも嬉しそうな母さんを見て嬉しそうだった。


「うっし! 俺もたくさん釣るぞー」


「お兄ちゃん頑張れー」


俺はルキナに応援してもらいながら気合いを入れ直して釣竿を持つ。やはり兄として良いところを見せねば格好がつかない。



「さて、そろそろお昼ご飯にしましょうか」


「ウン。ソウダナ」


「だってお兄ちゃん。私たちも行こう?」


「ウン。いくか」


明らかに俺と父さんが落ち込んでいる理由。それは女性陣は魚を沢山釣っているのに対して男性陣は成果0であるためだ。

 おかしいだろ。魚どもめ、明らかに人を選んでるだろあいつら。


「父さん。釣れた?」


「0だ。グレンは?」


「0だよ」


「「………はぁ〜」」


俺と父さんは顔を見合わせた後に大きくため息をついた。しょうがないから飯を食って切り替えよう。


「クウー。クエー。ご飯食べるから戻っておいでー!」


父さんが大きな声で遠くにいるクウたちに声をかける。こちらを見たクウとクエが小さな声で返事をして泳いで戻ってきた。


「さて、じゃあ食べましょうか」


「お、今日はサンドウィッチか。美味しそうだ」


父さんが言ったように中には様々なサンドウィッチが入っていた。ハムが入っているもの、いちごのジャムが塗られているものがあり、よりどりみどりである。


「うん! 美味しいよ! 母さん」


「あら、良かったわぁ。お父さんはその苺のジャム入りがお気に入りよね」


「まぁな。この甘酸っぱさがたまらないんだ。クウとクエも美味しいか?」


「クゥ! クゥ!」


「クェ! クェ!」


2匹も美味そうに食べている。2匹とも何故か俺たちと同じ物を食べても平気なのだ。そして俺とルキナも食べ始める。


ルキナはハムが入っている物、俺はカツサンドを食べる。……うん、濃厚なソースがパンに絡んで最高だ。


「あー、こうやって外で食べるのも良いなぁ」


「そうだねぇ。…そう言えばお兄ちゃんっていつまで居られるの?」


「んー。あと1日か2日くらいは居ようと思ってるな」


「なぁ。やっぱりもっと泊まっていかないか?せめて1週間、いや、1ヶ月くらい」


「お父さん。あんまりしつこいとグレンに嫌われるわよ?」


「ぐっ。分かった。でも早めに帰って来るんだぞ?」


「分かってるよ。次はちゃんと早めに帰るさ」


そんな話をしながら俺たちは昼飯を食べていく。やっぱり家族と食べる飯は美味いな。




———

今日は2話投稿をしました。理由は次話で

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