第38話 実家にて

「あら? グレン…帰って来たの?」


「あ、ただいま。母さん」


俺が玄関で父さんに説教をしていると、金色のベリーショートの髪の女性がやってくる。


  セイナ・ハーバート。俺の母親だ。


多分ご飯を作っていた途中だったなのだろう。奥から良い匂いがするし、何よりエプロンをつけていた。


「グレン…またお説教?」


「そうだよ…見てこれ! クウとクエがこんなに丸っこくなっちゃって!」


「クゥ!」


「クェ!」


俺はもう一度2匹を持ち上げて、母さんに見せるように目の前にずいっと出す。2匹は母さんに向かってとても元気な声で返事をして短い手を上げた。


「まぁ、可愛いから良いじゃない。ねぇ〜?」


「クゥ! クゥ!」


「クェー!」


駄目だ。そういえばうちの母は、なんて言うか、とてもおっとりとしてる。こうゆうことにも、のほほんと答えてしまうのを忘れてた。

 2匹は母の声に反応してとても元気の良い返事をしてるし。


「はあ〜。そういえばルキナは?」


「まだ、お部屋で寝てると思うわよ?」


まだ寝てるって、もう少しで夕方なんですけど。俺も言えたことじゃないけど寝過ぎじゃね?


「もう少ししたら、起きてくると思うからゆっくりしなさい」


「ありがとう、そうするよ。ほら、父さんも行くよ」


「え?…もう良いのか? 怒ってないのか?」


父さんはさっきまで顔を下げていたが、俺の言葉を聞くと顔を上げて戸惑いながら尋ねてくる。


「うん。俺も帰って来て早々に説教したかった訳じゃないし、怒ってもないよ」


「グ、グレ〜ン!!」


「ただし! おやつのあげすぎは注意してくれよ!」


「…ハイ」


泣きそうな顔で俺に抱きつこうとする父さんに俺は言ってのける。するとまた、シュンっとなって少し落ち込んでいた。

 俺は2匹を抱えたまま、リビングに向かう。


「はい。ご飯出来たわよ」


「母さんの料理久しぶりだろ? いっぱい食べろよ!」


「本当に久しぶりだ。……懐かしいな」


母さんが作ってくれたのはポトフだ。いつも作ってくれていた懐かしい料理。みんなで食卓に着くと、2階の階段からウェーブのかかった水色のセミロングの髪を揺らすパッチリとした目の美少女。


 しかも姿であくびをしながら降りてくる。


  ルキナ・ハーバート。俺の妹である。



「ふわぁ〜。…え? お兄ちゃん帰ってきてたの?」


「ただいま。ルキナ」


ルキナは俺に気づくと、びっくりして固まる。けれど少しすると下着姿の自分の姿を見て慌てて部屋に戻って行った。


「あんなに慌ててどうしたんだ?」


「察してやれグレン。ルキナだって年頃の女の子なんだ」


「…なるほど。分かった」


ルキナだってもう15歳。親に反抗したり、兄弟に体を見られるのが恥ずかしい時期なのだろう。


…まぁ、グレないかだけが心配だが。


「お、おかえり。お兄ちゃん」


「ああ。……まぁ、最近夜は冷えるからお腹壊さないようにだけ気をつけろよ」


「……うん」



俺がやんわりと下着姿のことを指摘すると、顔を赤くして俯いた。すると父さんが手を叩く。


「さ! 久しぶりに家族みんなでの食事だな!」


「えぇ。本当に久しぶりね」


そしてみんなでご飯を食べ始める。…いつもと同じで優しい野菜の甘みとベーコンの脂身、そして塩胡椒で味付けされた旨味が口いっぱいに広がる。


「美味いよ。母さん」


「あら、それは良かったわ」


「どうだ? 街での暮らしは慣れたか?」


「まぁ、友達も結構いるし、慣れたといえば慣れたか

?」


「それは良かった。ちゃんと生活できてるなら、なによりだ」


俺はどっちか言えば父さんたちの方が心配だけどね? なんでかって?


「ん? どうした?」


「クェ! クェ!」


クエが父さんの足元で何かを喋りかけるように鳴く。


「ポトフが食べたいのか? しょうがないな〜ちょっとだけだぞ?」


そして父さんは小さな器に自分のポトフを少し入れて下に置く。するとクエは中に入っているポトフを勢い良く食べ始める。


「母さんの料理は美味いか?」


「クェ!」


「クゥ! クゥ!」


「ん? クウも食べたいのか? ちょっとだけだぞ〜?」


見ての通り、父さんは家族にゲロ甘なのだ。頼んだら断らないし、めちゃくちゃ甘やかしてくる。


俺が村を出ると言った時は、めっちゃ説得してくるわ、しがみついてきて『行かないでくれー!』と言ってきたりで、それはもう大変だった。


「2人とも美味しいか?」


「クゥ!」


「クェ!」


「そうか! そうか! それは良かった!!」


2匹が美味しそうに食べるのを見て、父さんは嬉しそうな顔で2匹を撫でる。俺たちのことが大好きなのが分かるから、中々怒ることができない。


はあ〜……ため息が出る。


「父さん…あげすぎないように」


「ああ! 分かってるって!」


本当に分かってるのだろうか? まぁ、いつものことだからいいけど。そんな話をしながらみんなでご飯を食べ続ける。


「さてと、飯も食べたし、次は風呂かな」


「あら? 今はルキナが入ってるわよ」


「あ、そう? ならもう少し待つか」


もう洗い物とかも終わったし何をしようか。母さんと父さんは2匹を撫でながらのんびりとくつろいでいる。

 俺もルキナが出てくるまで何かするか。そしてグレンはルキナが風呂から出てくるまでの間、ずっと2匹を撫でていた。


「ふぅ〜。やっぱり家の風呂は落ち着くな」


やはり我が家の風呂が1番である。広々とした風呂に俺は足を伸ばして、体を伸ばす。俺の家の風呂は広い……とゆうか広くなった。


ウチのペット2匹がお風呂に良く入るので、それを見た父が1人で広くしていた。俺も広い風呂には入りたいし、あいつらも広い方が泳ぎやすいと思って改修を手伝った。


「お風呂出たよー」


「お? 分かった。じゃあクウとクエも一緒に入るか?」


「クゥ!」


「クェ!」


2匹は短い手を上げて返事をする。父さんは2匹を抱き抱えてお風呂場へ向かった。


「今日は疲れたでしょう? ゆっくり寝なさい」


「ありがとう。そうするよ」


俺は母さんに言われた通りに自分の部屋に行った。そこは2年前と何も変わってないかった。本棚があり、机があり、俺の作った”魔道具”や”武器”が端っこに残っている。

 家族が掃除をしていてくれていたのか、部屋は綺麗な状態だ。



俺は部屋を見渡した後に寝やすい服に着替えてベットの中に入りそのまま深い眠りについた。

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