第37話 お祭り騒ぎpart 2
「あ〜、今日は何をしようか」
俺は宿で飯を食って部屋に戻ってゴロゴロしている。昨日は月の雫の人たちと飯を食ってゆっくりしてたけど、今日は体を動かすべきか?
でもな〜、アリスは俺の正体を薄々勘付いてる気もするんだよな。
気のせいかもしれないけど。
「とりあえず、ギルド行ってみるか」
俺は昨日アリスが言っていた、仮面の情報が張り出されることを思い出して、ギルドに向かうことにする。どうせすることもないし、ちょうど良かった。
「は? マジか」
掲示板を見て驚愕する。なんと有力な情報を提供した人間は金貨20枚。もし、王都に連れてくることができたのなら白金貨5枚と書かれている。
「……やばいな」
俺は現状を甘く見過ぎてしまっていた。確かに古龍を討伐したのならばランクは9、ソロで討伐したのならその中でも中位から上位辺りの実力はある。
それでも国がここまでするとは思わなかった。
「ウォオオ! これはやばいな!まだこの近くにいるのか!?」
「おい! 今日のクエストは中止して何か痕跡を探すぞ!”ヘイル草原”ならまだ何かあるかも知れん!!」
「こんだけの金がありゃ、一生何もしなくて良いな!!」
張り紙を見たギルドの冒険者たちは前回とは比べ物にならないほどの大騒ぎをしている。ここまでの騒ぎになったら当分は続くだろう。
幸いにもギルドには守秘義務があるのでその場に居合わせない限り知ることはできない。
なんなら俺はオークの討伐報告もしてないし、知っているのはスピナーだけだが、あいつは金には困ってないから大丈夫だろう。
「はぁー、まぁちょうど良いな。久しぶりに実家に帰るか」
俺は深くため息をついて、実家に帰ることにした。またこの騒ぎが収まったぐらいに戻ってくれば良いだろう。
そして宿に荷物を取りに行って俺は街を出た。
▲▲
「あー、1人旅をするの、久しぶりな気がするな」
「あはは、知り合いが多いのは良いことです」
グレンは馬車に乗っていた。家に帰る道のりで年若い青年が馬車で話しかけてきた。話していたらどうやらこの人も同じ道を渡るらしいので途中まで乗せてもらうことになった。
「そういえば、商人さんって随分若そうですね。歳は幾つなんですか?」
「私は、そうですね。もう少しで20歳になります。結婚もしておりますよ」
俺の3つ上か。にしても20歳で結婚か。この世界では20歳辺りでの結婚は普通らしい。もっと早い人は16、17で結婚、婚約をする。
いや……いくらなんでも早すぎるだろ。
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「それでは、私はこれで。お気をつけて」
「はい。ありがとうございました」
数時間ほど馬車に乗せてもらったがそこから商人とは別れることになった。俺は商人が見えなくなると空を飛んで一気に村の方へ飛んでいく。
ゆっくり歩いていっても良かったが今回はさっさと帰りたかったので飛んで帰ることにした。
「お? 見えてきたな」
俺は通常なら1週間くらいかかる所を数分で帰った。飛んでいると村が近くに見えてきたのでそのまま下に降りる。
久しぶりに帰ってきたが何も変わっていなかった。俺の村は自分で言うのもなんだが良い所だと思う。
住民たちは多くないがその分自然が豊かであり、どこの家も普通の一軒家ほどの大きさである。
「グレーン!! よく帰ってきたなー! 2年も帰ってこないんだから、心配したぞ!」
「わ! びっくりした〜」
俺が下に降りるとほぼ同時に飛びついてきた。
その人物は長めの黒髪で、20代前半にしか見えないほど若く、身長も俺より少し高いくらいで青い服を着ている男。
「ただいま……父さん」
「ああ。おかえり……グレン」
ノースター・ハーバート……俺の父親だ。
「いや〜、本当に久しぶりだな! それで今日からまた一緒に家で暮らすのか!?」
「いや、何日か泊まったら、また街に帰るよ」
「そうか……じゃあ! 3日経ったら帰って来るってのはどうだ?」
残念そうな顔を浮かべていた父だが、突然名案でも
もはやこっちから通ってるみたいなものじゃん。
「いや、それは早すぎだから……でも次は早めに帰ってくるよ」
「!!……そうか! じゃあなるべく早く帰ってくるんだぞ!」
父さんと次は早く帰ってくる約束をしたあと、2人で家に帰ってきた。2年ぶりだからとても懐かしく感じるな。
俺は扉を開けると出迎えが待っていた。
「クゥ! クゥ!」
「クェ! クェ!」
「2人とも、元気だったか〜?」
俺の方に寄ってくる2匹のペット。ふわふわで白く、全身がもふもふっとしているアザラシの赤ちゃんみたいな奴。名前は【クウ】
もう1匹も全身がふわふわでこっちは全身が灰色でお腹周りは白いペンギンの赤ちゃんみたいな見た目の【クエ】
クウはお腹とヒレを使って、クエはよちよちと歩きながら俺の方へ向かってきた。
「よーしよし! ……うん?」
俺は2匹を撫でていると、ある違和感に気づく。
「お前ら……太った?」
「クゥ?」
「クェ?」
2匹はなんのことだ? と言わんばかりに首を傾げている。なんか前より、ムッチリしてる気がする。
最初は毛が伸びたのかと思ったけど触ったら違うと分かる。
「ちょっと、抱っこさせてくれよー……よっと!!」
「クゥ! クゥ!」
「クェ!」
俺は2匹を持ち上げた。うん、すげー重くなってるな。前に抱っこした時よりずっと重たい。けれどクウとクエは抱っこされて喜んでる。
「……」
「…ふぅ」
俺は2匹を下に下ろした後に、思わずため息が出てしまった。さっきから約1名ずっと黙ってる者がいる。
しかも顔を一切こちらに向けずに明後日の方向を向いていた。
「…なぁ、父さん」
「な、なんだ?」
「クウとクエの体重、すごく重くなってるんだけど……何か知らない?」
「さ、さぁ? 知らないなぁ?」
「嘘ついたら、もう帰ってこない」
「はい…俺が朝ご飯の前とか……夜ご飯の後におやつをたくさんあげました…」
すぐに白状した。やっぱりこの2匹がムチィっとしたのは父さんが原因だった。
「前から言ってたじゃん!! おやつはあげすぎたら駄目だって!」
「…ハイ……ごめんなさい…」
「前もあげすぎだって言っただろ!? 大体父さんはいつもいつも!!」
俺がガミガミと説教を始めると父さんはシュンっとどんどん縮こまっていく。
俺が家に帰ってきて最初にやったのは父さんの説教だった。
————
今日も1日頑張りましょう!
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