第36話 めでたい報告
「さてと、まずは下処理からだな」
俺は前に手に入れていたエビと
続いてエビの腹に切れ目を入れて身を押さえて伸ばす。これで身が縮まらなくなる。次に蓮根を水で洗って泥を落として皮を剥く。
椎茸は軸の部分を切り落として、かぼちゃは、種とワタを取って半分に切る。そこから更に4分の1くらいにして、蓮根とサツマイモも1㎝くらいに切る。
「そういえば僕たちランク9になったよ」
「おー、すごいな。おめでとう」
「ありがとう。昨日ギルドに行った時にね」
どうやら昨日俺たちが馬鹿なことをやっている内にこいつらはランク9に上がったらしい。ランク9まで行ったらほとんどの国は顔パスだし、国の重大な機密も知ることができたりする。
1つの国にランク9の冒険者がいると、”五大連合国”に近づくことができるからな。国としてはなんとしても手に入れたい戦力だ。
「じゃあ、これからどうするんだ? この国に仕えるのか?」
「いや、私たちは堅苦しいのは苦手だから、遠慮することにしたよ」
「ふーん。でも声はかけられたんだろ?」
「まぁ、そうだね」
やっぱり声はかけられたのか。ランク9になると国に仕えても良い派と面倒だから嫌だ派に別れるらしい。どうやらこいつらは後者らしい。
「まぁ、お前らはこれから忙しくなるな」
「うーん、そうでもないよ。元々冒険者はクエストを受ける受けないは自由だからね。そこは誰が依頼を持ってきても変わらないよ」
俺は天ぷらの衣を作りながら、雑談をする。作った天ぷら衣に材料を入れて油で揚げる。その間に砂糖、醤油、みりん、水で作ったタレを作る。
「グレンさん、ぐつぐつなってます」
「お? どれどれ?……うん、良い感じだな」
米もしっかり炊けてるいるかを確認して、器にご飯をよそう。その上にさっき揚げた天ぷらを置いてタレをかければ完成だ。
「ほら、俺特製の天丼だ。熱いから気をつけろよ」
「なんというか…すごく綺麗ですね」
「そうだね。それにすごく美味しそうだ」
「ありがとう。美味しく頂くよ」
「……」
3人は、天丼を見て様々な感想を漏らす。リズに至っては、今にもよだれを垂らしそうでもう待ちきれないといった感じだ。
「じゃあ食うか。……うん! サクサクに仕上がって美味い!」
「…!!…美味しい。すごく美味しい」
リズも一口食べて驚きを隠せないような顔だったが次第に幸せそうな顔になっていき、美味しそうに頬張っている。他の3人も同様だった。
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「はぁ〜、食べたなぁ」
「…美味しかった。ありがとう」
「とても美味しかったです。ありがとうございます」
「ありがとう。今度お礼するからね」
「あれ、すごく綺麗だったね。最初は食べるのがもったいなく感じたよ」
「それは良かった。美味かったのなら何よりだ」
俺は飯を食って川の近くで涼んでいる。俺が涼んでいるとアリスも距離を少し空けて座った。しばらくするとアリスは俺の方へ顔を向けて、口を開く。
「そういえば、知ってる? 噂の白い仮面の人の情報を国が求めてるって」
アリスの言葉を聞いて一瞬、心臓が跳ねたが、悟られないように俺は平静を装った。
「へ、へぇー。なんでだろうな?」
「それは”個体名”がついているモンスターだったからね。当然といえば当然だけど」
「大変だな」
「明日くらいにはギルド全体に通達されると思うよ」
「……なぁ、もしもその仮面の人は正体を隠すことに理由があってバレる事を望まなかったらどうする?」
俺は少し、踏み込んだ質問をする。するとアリスは穏やかな表情で笑って言った。
「その時はキッパリと諦めるよ。国からの情報要請もなんとかして消す。まぁ、残念ではあるけどね」
俺はその言葉を聞いてホッとする。俺が正体を隠すのはこうゆう国がらみとかが面倒くさいのも理由の1つだ。
「ねぇ、グレンはどうしてそんなことが気になるの?」
「え?……」
アリスが少しずつ近寄ってくる。俺は思いがけない言葉に固まって動けなくなった。
「……やっぱり…君が」
「……」
心臓が早く鼓動しているのが分かる。今の俺はどんな表情をしてるんだろうか? もしかしてバレたか? そう思った時に。
「……2人とも…何してるの?」
「……いや…なんでもないよ」
リズが来てくれた。ちなみにステラとカーラは仲良くお昼寝をしている。
リズ…マジ感謝です。
「私も少しだけ、寝ようかな」
そう言いながらアリスは立ち上がり、寝ている2人の所へ向かっていく。
「ふぅ、ありがとう。リズ」
「むぅ、あんなに近づいて……なに話してたの?」
「明日は何をするか…とかだな」
俺は嘘をつくことにした。ごめんな? でもバレる訳にはいかないんだよ。
「ふーん、なら良いけど」
「お前はみんなと寝なくて良いのか?」
「うん、あんまり眠たくない」
「そうか?ならここで少し涼むか」
俺たちは川の近くで涼むことにした。水の流れる音が心地良くて気持ちがリラックスできる。あと、リズさん? すげー近いです。
「まぁ、良いか」
「?…なにが?」
「いいや、こっちの話だよ」
そして俺たちは今日も平和に過ごす。俺たちが街に帰ったのは夕方ごろだった。
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