第33話 困惑
「ごめん、時間かかった」
「ううん、全然大丈夫だよ」
「そうか?なら良かった」
俺は収納していた新品の布団を魔法袋から取り出してステラに渡す。1回も使ってないから匂いなどもついてないはずだ。
「ほれ、約束の布団だ」
「ありがとう。じゃあ、はい。これ布団のお金」
そして俺は布団を渡して代金を受け取った。またしても金貨だ。あんたらは金貨しか持ってないのか?
「いや、金貨じゃなくて銀貨で良いから。そんなに高い物じゃないから」
「そう? 分かった。じゃあ、はい。銀貨ね」
俺は金貨を返して銀貨を受け取った。流石に布団一枚で金貨はぼったくりである。いくら俺でも良心が痛むので銀貨にしてもらった。
「じゃあ布団も渡したし、俺はこのまま街を巡ってくるから、またな」
「………ねえ」
「ん?」
俺は背中を向けて立ち去ろうとすると、ステラから呼び止められた。ステラはいつのまにか布団を魔法袋にしまっていた。
ステラの方を振り向くと、ステラは何か言いたそうな顔をしていた。
「…その街巡りってさ、何するの?」
「いやー、特には何も決めてないな」
なぜなら飯を誘おうとしてた奴らに拉致された
「じゃ、じゃあさ、私と街を回らない?」
「うん?」
予想外の言葉に変な反応をしてしまう。布団を渡すだけだったはずなのに、どうしてそんな事になったんだ?
「…駄目……かな?」
俺が黙っているとステラの顔が悲しそうになって耳がしゅんと垂れ下がる。やめてよ、なんか俺がいじめたみたいに思えてくるよ。
「いや、駄目ではないけど、ステラは用事とかないのか?」
「私は、何もないよ」
「…じゃあ、一緒に街を回るか?」
「うん!」
ステラは笑顔になり、八重歯が見えた。尻尾も凄く動いている。なんか、家で飼ってるペットを思い出すな。 あいつら元気かなー。
俺は思い出に想いを馳せる。
「て、言っても本当に何も考えてないからなー。ステラは何か行きたい場所とかあるか?」
「うーん…あ」
ステラは少し考えて、何かを思いついたみたいだった。俺としても何も考えてなかったので案があるならありがたい。
「行ってみたいところあった…けど少し歩くんだけど、それでも良い?」
「良いぞ」
「分かった…」
そして2人で並んで歩き出す。ステラの行きたい所ってどこだ? リズとかならどっか食べ物がある場所とか予想できるんだけど。俺はステラが行こうとする場所の予想ができなかった。
「ついた。ここだよ」
「あー、ここか」
「知ってたの?」
俺たちはしばらく歩いて、街の上の方にある”緑の丘”の様な場所にいる。俺もここには何度か来たことがある。ここは街を見渡せて、良い風も吹いて気持ちが良い。
「まぁな、何度か来たことはあるよ」
「…その時は1人で来たの?」
「まぁ、そうだなっと」
俺は少し風を浴びてからごろんと寝転がる。ここは芝生みたいで寝転がると気持ちが良いのだ。
「私も横になろうかな」
「あぁ、横になると気持ち良いぞ」
そして俺とステラは横になる。お互い寝転がっているが距離はそんなに近くないので、安心する。
近すぎると寝ずらいし、それで触れてしまって痴漢をしたみたいなことを言われたら終わる。
「風も気持ち良いし、このまま少しゆっくりするか」
「そうだね。少しだけゆっくりしようか」
今日は天気も悪くない。いい風が吹いてる。やばいな、なんかだんだん眠くなってきた。少し、そうだ、少しだけ目を瞑って休もう。
「すぅ、すぅ」
「…寝たの? おーい」
ステラの呼びかけにグレンは答えない。どうやらグレンは完全に寝てしまったようだった。
「すぅ、すぅ」
「………」
ステラは体を起こしてグレンを見る。そして少しだけ近づいて、無意識の内にグレンの頭に手を伸ばす。
「……え? 私、今なにしようとしたの?」
ステラは髪に触れる直前に我に帰り、自分が何をしようとしたのか振り返る。自分でもさっきの行動が分かっていない様子だった。
「…やっぱり今日の私は少し、おかしい気がする」
自分の手をしばらく見つめたあとにそのまま手を胸に当てると心臓がいつもより早くなってるのがわかる。
すると風が吹き、ステラの金色の髪を揺らす。
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