第15話 困惑
「ごめん、時間かかった」
「ううん、全然大丈夫だよ」
「そうか?なら良かった」
俺は収納していた新品の布団を魔法袋から取り出してステラに渡す。1回も使ってないから匂いなどもついてないはずだ。
「ほれ、約束の布団だ」
「ありがとう。じゃあ、はい。これ布団のお金」
そして俺は布団を渡して代金を受け取った。またしても金貨だ。あんたらは金貨しか持ってないのか?
「いや、金貨じゃなくて銀貨で良いから。そんなに高い物じゃないから」
「そう? 分かった。じゃあ、はい。銀貨ね」
俺は金貨を返して銀貨を受け取った。流石に布団一枚で金貨はぼったくりである。いくら俺でも良心が痛むので銀貨にしてもらった。
「じゃあ布団も渡したし、俺はこのまま街を巡ってくるから、またな」
「………ねえ」
「ん?」
俺は背中を向けて立ち去ろうとすると、ステラから呼び止められた。ステラはいつのまにか布団を魔法袋にしまっていた。
ステラの方を振り向くと、ステラは何か言いたそうな顔をしていた。
「…その街巡りってさ、何するの?」
「いやー、特には何も決めてないな」
なぜなら飯を誘おうとしてた奴らに拉致された
「じゃ、じゃあさ、私と街を回らない?」
「うん?」
予想外の言葉に変な反応をしてしまう。布団を渡すだけだったはずなのに、どうしてそんな事になったんだ?
「…駄目……かな?」
俺が黙っているとステラの顔が悲しそうになって耳がしゅんと垂れ下がる。やめてよ、なんか俺がいじめたみたいに思えてくるよ。
「いや、駄目ではないけど、ステラは用事とかないのか?」
「私は、何もないよ」
「…じゃあ、一緒に街を回るか?」
「うん!」
ステラは笑顔になり、八重歯が見えた。尻尾も凄く動いている。なんか、家で飼ってるペットを思い出すな。 あいつら元気かなー。
俺は思い出に想いを馳せる。
「て、言っても本当に何も考えてないからなー。ステラは何か行きたい場所とかあるか?」
「うーん…あ」
ステラは少し考えて、何かを思いついたみたいだった。俺としても何も考えてなかったので案があるならありがたい。
「行ってみたいところあった…けど少し歩くんだけど、それでも良い?」
「良いぞ」
「分かった…」
そして2人で並んで歩き出す。ステラの行きたい所ってどこだ? リズとかならどっか食べ物がある場所とか予想できるんだけど。俺はステラが行こうとする場所の予想ができなかった。
「ついた。ここだよ」
「あー、ここか」
「知ってたの?」
俺たちはしばらく歩いて、街の上の方にある”緑の丘”の様な場所にいる。俺もここには何度か来たことがある。ここは街を見渡せて、良い風も吹いて気持ちが良い。
「まぁな、何度か来たことはあるよ」
「…その時は1人で来たの?」
「まぁ、そうだなっと」
俺は少し風を浴びてからごろんと寝転がる。ここは芝生みたいで寝転がると気持ちが良いのだ。
「私も横になろうかな」
「あぁ、横になると気持ち良いぞ」
そして俺とステラは横になる。お互い寝転がっているが距離はそんなに近くないので、安心する。
近すぎると寝ずらいし、それで触れてしまって痴漢をしたみたいなことを言われたら終わる。
「風も気持ち良いし、このまま少しゆっくりするか」
「そうだね。少しだけゆっくりしようか」
今日は天気も悪くない。いい風が吹いてる。やばいな、なんかだんだん眠くなってきた。少し、そうだ、少しだけ目を瞑って休もう。
「すぅ、すぅ」
「…寝たの? おーい」
ステラの呼びかけにグレンは答えない。どうやらグレンは完全に寝てしまったようだった。
「すぅ、すぅ」
「………」
ステラは体を起こしてグレンを見る。そして少しだけ近づいて、無意識の内にグレンの頭に手を伸ばす。
「……え? 私、今なにしようとしたの?」
ステラは髪に触れる直前に我に帰り、自分が何をしようとしたのか振り返る。自分でもさっきの行動が分かっていない様子だった。
「…やっぱり今日の私は少し、おかしい気がする」
自分の手をしばらく見つめたあとにそのまま手を胸に当てると心臓がいつもより早くなってるのがわかる。
ステラの髪を突然吹いた風が揺らす。
「ん?……ふぅ、良く寝たなぁ」
体を起こして、空を見る。すると太陽が沈み出して、夕暮れ時になっていた。ふと横を見るとステラが眠っていた。
「んっ…すぅー、すぅー」
「うーん」
もう少しで夜になるし、起こすべきか?でも幸せそうに寝てるから起こしたら可哀想だしな。どうするべきか俺はしばらく悩む。
「おーい。もうそろそろ夜だから起きろー」
「んー?……あれ?私、そんなに寝てた?」
「あぁ、ぐっすりだったぞ」
俺は声を出して起こす事にした。ステラは眠そうな目を擦りながら周りを見渡して暗くなってる事を確認している。
俺たちがどれだけな寝てたのかよく分からないが、夕暮れだったこともあるから相当寝てたと思う。
「もういい時間だけど、どうする?」
「そうだね、私はみんなのとこに帰ろうかな」
「分かった、じゃあまたな」
「うん、またね」
俺は手を振ってステラを見送った。ステラも振り返してくれて、そのまま俺たちは各々の宿に帰った。
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「はぁ、やっぱり今日の私はおかしい気がする」
私はグレンと別れたあと、宿に戻る途中で今日の自分を振り返る。
最初にグレンと出会って真剣な顔で頼まれごとをすると思った時には、ドキッとしたけど、変な頼まれごとって分かった時はなぜかガッカリした。
「で、挙句に私はグレンに自分から触れようとした」
今までの自分からは想像もできないような行動に自分でも困惑する。なんであんなことをしたのか私自身よく分かっていない。
「……ただいま」
「ん、おかえり」
「今日もどこかで寝てたの?」
宿に帰るとリズとアリスがいた。
カーラは……図書館とかで勉強してるのかな? カーラは勤勉だからよく魔導書を探しに行ったり、図書館とかで勉強をしてるので帰るのが遅くなることがよくある。
「うん……まぁ、そうなんだけど」
「?? なんだか歯切れ悪いね…」
「何かあったの?」
私が言いにくそうにしていると、それを察知したのか2人が聞いてくる。私も自分の気持ちが整理できてないんだよね。
「今日はね、グレンと一緒にいたんだ」
「……ふーん。…なにかしてたの?」
「何もしてないよ。緑の丘で一緒にゆっくりしてただけ」
「…他には?」
「特になにも…あ」
リズがぐいぐいと来るなかで1つ思い当たることがあった。心なしかリズの機嫌が少しだけ悪くなってる様な気がする。
気のせいかな? 私は機嫌が悪い?リズと、いつもと同じように落ち着いてるアリスに今日あったことを話す。
「私ね、寝てるグレンの頭を触ろうとしたんだ」
「………」
「へぇ、なんで触ろうとしたの?」
「それが……自分でも分からないんだ」
今日の私はおかしかった気がする。自分から男の人と街を回ろうと言い出したり、更に自分から
そんなことは今まで思ったことないし、これからもないと思ってたくらいだ。
「その前にも今日はグレンに頼まれたことがあったり布団をグレンの宿に取りに行くときにリズの話をしてたんだ」
「……やっぱりあるじゃん」
「……思い返したら結構あったね」
「……ねえ…グレンが私のことを話してたの?」
「うん、楽しそうにリズのことを話してたよ」
「……そうなんだ。ふふふ」
私が肯定すると、リズが分かりやすいくらいニヤニヤとしていた。友達が自分のことを褒めてくれるのはやっぱり嬉しいことだよね。
「まぁ、そんな感じで今日の私って変だったんだけど、2人は何か分かる?」
「うーん……私は、分からない。アリスは分かる?」
「それは、あれじゃない? カーラが僕たちにたまにやる頭を撫でるやつ」
カーラはたまに寝ている私たちの頭を撫でてくる。私たちに向ける眼差しは親が子供に向けるような優しい目でとても安心する。
……でもな〜なんかそれじゃない気がするんだよね。
「うーん、いや…でもなぁ、やっぱりそうなのかな〜?」
「僕はそう思うよ。多分、きっと、そうなんだと思う」
ステラは2人に相談をしても納得できる答えは見つからなかった。彼女たちは男の人との交流がほとんどない。
更に3人とも男の人たちに対する偏見が、まだ残っており、相談できる異性がいない。故にステラが今、
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