第29話 街に帰る


「いやー、良い買い物が出来たなー」


俺はホクホクとした顔で市場を離れて行く。クエストの達成と原因報告をして市場で買い物をしていた。

 あとあの爺さん、やっぱり村長だった。


「さて、買い物も済ませたし、後は帰るだけだな」


俺は帰る準備をする。 その時にふと白い仮面の事を思い出した。いやー、まじであれ不気味だわ。我が妹のセンスは常人には理解ができないな。


あの仮面は妹が、村を出る俺にプレゼントしてきた物だ。最初はなんかの嫌がらせか?って思ったけど妹の顔を見て悟った。


(あ、これ冗談で渡したんじゃないな)


あの仮面は断じて俺の趣味じゃない。あいつらを助けた時もあれしか顔を隠せる物がなかったのだ。


「そういや、もうちょいであいつも成人か」


この世界は15歳で成人扱いだ。俺の妹はどうするのだろうか?あの村に残るのか、それとも俺みたいにどこかの街に住むのだろうか。

 けど、あいつの性格的に村に残りそうだな〜。また、いつか村に帰った時に顔でも見せるか。そんな事を考えていると。


「やぁ、グレンはクエストの報告は終わったの?」


「アリスか、そうだな、報告も終わったから後は帰るだけだな」


俺は色んな事を考えているとアリスが話しかけてきた。俺は買いたい物も大量に買ったし、こっちでの用事はもうないから後は本当に帰るだけだ。


「そうだね、今回のクエストはイレギュラーもあったけど無事で何よりだよ」


「だな、まぁ終わりよければ全て良しってな」


「ふふ、何それ?やっぱりグレンって面白いね」


俺の言葉にアリスは少しだけ、笑っていた。王子様の様な雰囲気のアリスが一瞬だけ年相応の女の子の笑顔になっていた。

 そんな可愛らしい顔もできるんだな、俺は心の中でそう思った。


「じゃあ、帰るか」


「うん、帰ろうか」


そして俺たちはアリスのパーティメンバーと合流して、馬車に乗った。


「グレン、嬉しそう」


「お?分かるか?」


リズに指摘された。どうやら今の俺は顔に出てるらしい。でも今回は仕方がないと思うんだ。それは俺が市場で買い物をしている時に俺の目に飛び込んできたんだ。


「実はな、俺の好物が特大の大きさで売られていたんだ!」


そして俺は特大のエビを取り出して、リズに見せた。


「これが、グレンの好物?」


「そう!こうゆうエビをな?揚げて熱々になったところを塩とかつゆで食べる。これがすげー美味いんだよ」


「……ゴクリ」


リズは俺の説明を聞いてすごく食べたそうな顔をしている。確かに俺も想像しただけでよだれが出そうだ。


「そんな顔をしなくても予定が合えば作ってやるから」


「ほんとに?……約束できる?」


「お、おう、約束だ」



リズがこっちにすごい顔を近づけてくる。だから近いって!!リズの薄紅色の髪が俺にギリギリ当たらないくらいのすごい近い距離だ。まじで距離感がおかしいよこの子。


「ねぇ、グレンっていつもどこに泊まってるの?」


「え?俺はいつも銀の猫って宿に泊まってるけど、何でそんな事を聞くんだ?」


「え?だって私の予定が空いてもグレンの場所が分からないと意味がないから」


「…なるほど」


だからと言っても俺はずっと宿にいる訳じゃないよ?俺もクエストとか、外出とかするよ?


「あと、グレンって家とか欲しい?」


「家?まぁ欲しいと言えば欲しいな」


「…そう」


「??」


何だ?質問の意味が全く分からん。何で急に家のことを聞くんだ? 俺はいきなりの変な質問に首を傾げた。


「まぁ、またお互いの予定が合えばな……その時にでも飯は作ってやるよ」


「そこは大丈夫」


何が大丈夫なの?おい待て、そのVサインは何だ?何を意味してるんだ?怖いんだけど。


「グレン、前に話してた事なんだけど」


「まえ?…あー、布団のことか」


俺たちが話してたらステラが話しかけてきた。前のこと、というのは布団のことだ。以前に布団を渡す約束をしてたからな。


「ちゃんと覚えてるよ。街に帰ったら予備のやつ渡すから」


「ありがとう。いっぱい頼み事をしてごめんね?」


「別に良いよ」


手間がかかるのは妹で慣れてるからな。兄というのはわがままな妹を持つと自然とこういうのにも慣れていく物だ。

 まぁ、他のご家庭の事は知らんけど。


「そう言えばグレンさんって前に言っていた上級魔法を使えないって本当ですか?」


「まぁな、中級までならある程度は使えるが上級は魔力の量が足りないから使えないんだ」


「なるほど、でしたら魔力をあまり使わない魔法を教えましょうか?」


「まじ?それは教えて欲しいな」


技術や知識はいくらあっても困らないからな。教えてくれるなら教わりたい。


「では、また予定が空いたら連絡します」


「その時は頼む」


そして俺たちはテントで一泊して、街に帰って行った。まぁ、たまになら騒がしいクエストも悪くない。そんなことを思いながら。

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