第26話 到着
「あんまり、寝た気がしない」
俺は寝袋から出て、朝の光を浴びる。リズが言ってた通りに確かにこのテントには何もなかった。何もないよりは寝袋はないよりマシだけどそれでも布団には敵わないと思う。
「おはよう、テントありがとうね」
「アリスか、良く寝れたっぽいな」
朝ご飯を作ろうとしていたらアリスがテントの中から、起きてきた。
「何してるの?」
「ん?朝飯の準備」
俺は朝飯の準備を進めていた。今日の朝飯は重くならないようにする。昨日余った米に、出汁を作って、身をほぐしたシャケを入れてっと、シャケ茶漬けの完成だ。
「ちょっと味見するか?」
「え?良いの?」
「そんな目で見られたらな」
「あ、ありがとう」
気づいてなかったのかもしれないがすごい食べたそうに見てたからな。それはリズに負けず劣らずの目で。
少し恥ずかしさで顔が赤くなってるが、もう今さらだろ。
「じゃあ、少しだけ貰おうかな」
「分かった。ほら」
お椀の中に普段の半分くらいの量の米を入れて、中に出汁を入れて、シャケを上に乗せてアリスに渡す。
「ありがとう…うん、やっぱりグレンのご飯は美味しいね」
「そいつはどーも」
「おはよ…アリス、何食べてるの?」
アリスに続いてリズも起きてきた。リズはアリスが食べてる物が気になるらしい。
「これ?これはグレンが作ってくれた朝ご飯だよ」
「…ずるい、私にもちょうだい」
「はいはい」
「おはようー」
「おはようございます」
リズの分も用意しようとすると、全員起きてきた。なら、もう全員分もまとめて用意したほうが良いな。
「おはよう。2人とも朝飯は食うか?」
「お願いしようかな」
「私もお願いします」
「分かった、少し座って待っててくれ」
そして、作っていた料理をみんなに渡していく。リズはもう待ちきれなさそうな表情だ。
「ホッとする。美味しい」
「うん、朝から元気が出るね」
「そうですね」
みんなからも好評だった。やっぱり少し肌寒い時の朝は温かい物に限る。
「うん、良い感じにできてるな」
我ながら良い出来だ。ちゃんと作れていたから良かった。
「さて、じゃあ出発しようか」
朝食を済ませて、俺たちは馬車を走らせる。天気も快晴だ。 空が綺麗だなー
「…ねぇ」
「ん?」
空を見てたら、ステラに話しかけられた。この人はいまいち掴みどころがなくて良くわからん。
「あれってグレンが自分で作ったらしいね」
「あれ?……あぁ布団のことか」
「あれってさ、その…売ってもらうこととかできる? もちろん良い値で買うからさ!」
「布団をか…そんなに欲しいのか?」
「うん、私は寝ることが好きだからね!あれはすごかったよ!!」
「そ、そうか、そんなにか」
ステラが目をキラキラさせてすごい身を乗り出してこちらに顔を近づける。 あの、すごく近いです。
「わ、分かった。後で売ってやるよ」
「本当?ありがとう!」
ステラはすごく嬉しそうな表情だ。じゃあ1人分のあの布団で寝たのか?確かに大きめに作ったけれどそれでも4人で寝るとなると結構寝苦しいと思うんだが。布団だってあんなの作ろうと思えば誰でも作れる簡単なやつだぞ?
「みんなそろそろ着くよ」
アリスの声にみんなが馬車の外を見る。すると外には青い海が広がっていた。
「おー、綺麗だな」
「うん、すごく綺麗」
「そうだね」
「そうですね」
「よっと、着いたな」
フウロ海岸に到着したのを確認して、馬車から降りる。 ここには、市場のような物もあるから後で見よう。
そんな事を考えていると、
「あなた様方は今回のクエストを受けてくれた、方達ですかな?」
老人のような人が話かけにきた。肌は、少し焼けているが、体格も良く元気がありそうなおじいさんだ。
「いや、僕たちは付き添いだよ。クエストを受けたのはこちらの男性」
「ご紹介に預かりました。こちらの男性です」
アリスが指を指して、僕たちはクエストを受けていないと伝えている。確かに受けたのは俺1人なので一応挨拶をしておく。
「そうですか、それは失礼を」
「気にしないでください。それよりクエストの内容は付近のモンスターをどうにかして欲しいんでしたよね?」
老人が頭を下げてきた。とりあえず気にしていない事を伝えて、本題に入る。
「はい、最近の海辺のモンスターがどうにも急増しておりまして、困っております」
「なるほど、分かりました。では早速取り掛かります」
こんな時は早い方が良い。パパっと終わらせて海鮮系の食材を早く買おう。
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