第16話 怪しい

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「お疲れアリス、どうだった?」


話し終わった僕にリズが薄紅色の髪を揺らして尋ねて来た。


「うん、彼は昨日オーク討伐には行ってないらしいよ」


「そう」


リズは少し残念そうな表情を作っていた。容姿も相まって本当に子供のように見えてくる。


「けど、いくつも怪しいなと思う点もあったよ」

「怪しい?」

「うん、まず僕が彼に仮面の人を尋ねた時に動揺してた」


ここがまず1つ目の怪しい点だ。


「で、次に仮面の人の話をしたら、彼は少し黙って何か考えている様な様子だった。けどもう1人の男の人が来た時に、救世主が来たみたいな顔してたよ」

「それは、確かに怪しいですね」


カーラも口に手を当てて怪しんでる様子だ。


「で、僕がここにくる時に少し見たら、なぜかとても安心したようにため息をついてた」


「…うん、それは確かに怪しいね」


「そうだね、僕も彼は怪しいと思ってるよ」


一通りの事を話すとやっぱりみんな怪しんでる。彼が嘘をついている可能性が高い。


「僕は彼ともう少し接点を持ってみても良いと思うんだけどみんなもそれでいいかな?」


「うん…異論ないよ」


「私もありません」


「同じく」


みんな同じ意見だった。良かった、これで決定だね


「そういえば、彼の名前って確かグレンだっけ?」


確か、さっきの2人が話した時にそう呼んでたような。


彼は何かクエストを持ってたし、さっきの人に聞いてみよう。


「ねぇ、さっきの彼が持ってったクエストって何だったの?」


僕はさっきの彼といた男の人になんのクエストを持っていったか聞く事にする。

 彼は、確かスピナーだっけ?


「え?あぁ、薬草集めのやつだよ」


「そう、あと彼の名前ってグレンで合ってる?」


「あぁ、合ってるよ」


やっぱり合ってたらしい。


「じゃあ最後に……本当に昨日ハーピーの討伐に行ったんだよね」


僕は念の為にもう一回笑顔で聞く事にする。


「お、おう、本当だ」


「……」


やっぱり怪しい。


「何度もごめんね。ありがとう」


僕はまた、パーティメンバーの所へ戻って行った。


「彼の名前はグレンで合ってたよ。で、さっき薬草集めのクエストに行ったらしいね」


「そうなんだ、薬草集めに……」


「…今日ってさ、ギルドに報告だけで何も予定ってなかったよね」


「「「……」」」


「だからさ、彼と同じクエスト受けてみようと思うんだけど…どうかな?」


「べつに良いと思いますよ?彼の性格など私たちは知らない訳ですし」


「そうだね、私も良いと思う」


「うん、私も話してみたい」


「じゃあ、出発しようか。フフ、このメンバーが男の人を知りたいってなんだが不思議な気分だね」


そんな事を話していると胸が少しだけ暖かいような気がする。


「たしかに、少し前なら信じられませんでしたね」


「うん」


「じゃあ、出発しようか!」


こうして僕たちは彼の後を追いかけることにした。


「あいつ、まじで何やらかしたんだ?」


このスピナーの独り言は誰の耳にも聞こえなかった。

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