第5話 お礼




「あー、別に良いよ」


別に感謝されたくて、助けた訳じゃない。俺は自分のしたい事をしただけ。

 見殺しにするのは、気が引ける。・・・それだけだ。


「あの…」


「ん?どうした?」


「やっぱり、助けて貰っておいて何もなし、とは納得できません!」


「いや…本当に大丈夫だから」


「カーラの言うとおりだよ。命の恩人に何も無しとは、僕もどうかと思う」


「うん、そのとおりだよ」


「私も、そう思う」


え〜?この人ら全然引き下がらないんだけど。うーん、どうしよう。

 そうして悩んでると、オークの死体が目についた。


「じゃああのオーク貰って良いか?」


「「「「え?」」」」


うん、今日だけで何回目なんだろうね?この反応。


「オーク…ですか?」


「あぁ、こいつがちょうど必要だったんだよ」


まぁ実際クエストで必要だったからちょうど良いお礼だ。俺はオークが手に入り、相手もお礼をしたことになる。

 お互いにwin-winってやつだ。


「あの…遠慮とかはしなくて良いんだよ?」


アリスはそう言うけど実際に必要だしな。


「何に使うの?」


リズが首を傾げながら聞いてくる。そんなに気になるものか? 


「クエストで必要だったんだよ」


俺は食い荒らされたオークの討伐証明部位を切り取った。 魔石はなかったが幸いなことに証明部位は無事だ。


「じゃあ、お礼も受け取ったから俺は帰るよ」


そう言って、気分転換に空を飛んで帰る。

 そして帰る途中に気づいた。


「あれ? 俺なんか余計な事言った?」


「…まぁいっか」


しばらく考えたが、面倒になったので思い出す事をやめた。



========




「みんな…聞こえた? クエストでオークが必要だったらしいよ」


「ちゃんと聞こえたよ」


「えぇ、聞こえました」


「バッチリ」


 俺は仮面をつけてた事で安心したせいか、どうやら余計な事を言ってたらしい。




>>>>>>>>



彼は空を飛んで街の方へ向かって行った。


「行ったね」


「そうだね」


「…普通あの速度では空は飛べませんよ」


そう。一流の魔導士は空を飛んだりできるけどあそこまでの速度は出ない。

 当たり前の様に高速で空を飛んで帰って行く彼を見て、少し笑ってしまった。


「…彼の事をどう思う?」


僕は皆んなに彼の印象を尋ねた。僕以外のパーティメンバーがどう思ったか、気になった。


「そうだね、私は悪い人では無いと思うよ」


「そうですね、あの気持ちが悪い視線もありませんでした。私も同じ意見です」


「身体を要求する事もなかった」



僕も一瞬お礼と言いながら、要求をしてくるかもと思ったけど杞憂だった。

 おかしな、仮面をつけてたから少しだけ怖かったから良かった。


「あの人…気になる」


「え?」


ステラが驚くのも、無理は無いと思う。だってリズが男の人に興味を示すことなんて今まで無かった。

 僕も含めてこのパーティは基本的に男には興味なんてものはなく嫌悪の対象であったから。


「でも、そうですね…私も少し気になります」


「へぇ、カーラもなんて」


驚いた。リズだけじゃなく、カーラも興味を示すなんて。

 まぁ僕も気にならない訳じゃないし? 横にいるステラも全く興味がない訳でも無さそうだしね。


「そういえばさ」


「「「??」」」



彼…結構重要な事を言ってたよね。確か・・・

}だっけ?

 僕は、口元に笑みを浮かべて、皆んなに聞いた。


「みんな…聞こえた?クエストでオークが必要だったらしいよ」


「ちゃんと聞こえたよ」


「えぇ、聞こえました」


「バッチリ」


「それが、どうかしたの?」


みんなも聞こえてたらしい。多分…今の僕は少しおかしいのかも知れない。

 だからこんな提案をしてしまった。


「あのさ…彼には命を助けて貰った訳だし…街に帰ったら改めてお礼をしない?」


「え?…いや、でもそれは…その…」


 …やっぱり、カーラは悩んでる。気にはなるけど迷惑なんじゃないかと思ってる感じだね。


「それは良いアイディア」


するとリズがいつにも増して、やる気だった。あのいつもやる気がなくて、ぐうたらなリズが。


「うん、私も良いと思うよ」


やった!!ステラも同意してくれた。僕は内心喜んでいた。


「分かりました。改めて街に戻って改めてお礼をしましょう」


「決まりだね。クエストでオーク…か」


オークのクエストは討伐か、調査くらい。しかも最近のここら一帯のオークのクエストは緑龍によって著しく減っていたから見つけるのは難しくは無いはず。

 僕はまた会えること、どんな人なのかを考えると胸が少しドキドキすることに気づいた。


「フフフ…絶対に見つけて見せるよ」


僕はそう言いながら街の方角を見た。



>>>>>>>>


 俺は、空から街に帰る途中で人目につかないところで降りて、そのまま街の入り口に向かう。


「おう!グレンじゃないか」


「よう、おっちゃんも元気か?」


「まぁな、カミさんにはしょっちゅう怒られるけどな」


「相変わらず尻に敷かれてんな」


ここの街の衛兵とは仲が良い。たまに飯を食ったりしている。


「今日は何しに外へ行ったんだ?」


「ん?オークの討伐」


そう言ってオークのクエストの紙を見せる。まぁ倒したのはオークじゃないけど。


「そいつはご苦労だったな!どうだ?今日の夜でも飲みに行くか?」


「いや、ありがたいけど今日はやめとくよ」


「そうかー、そいつは残念だ。じゃあまた今度飲もうや!」


「あぁ、また今度な」


そう言って街へ入る。まず、ギルドにオークの討伐報告をする為に、向かおうと思ったが・・・


「別に明日でいいか。今日はプチ贅沢しよう」


そう。今日はオーク討伐失敗だと思った。けどクエストを達成できた。

 普通に達成したのと、同じだけどいないと思って諦めてたから、達成した喜びが大きい。

 俺はいつも泊まっている宿に向かった。中に入ると厳ついおっさんが受付にいた。


「ゴードンさん、キッチン借りて良いか?」


「おぉ、いいぞ。なに作るんだ?」


「今日は少し贅沢をしようと思ってな」


「へぇ。美味いのか?」


「多分…食べてみる?」


「おぉ?そうか、悪いな」


いや、目が食わせろって語ってたよ。俺たちの分も作れって圧がすげーよ。


「お兄ちゃんが作るの?やったー!!」


レーナは凄い喜んでる。やっぱり顔が幼いから15歳には見えないな。

 行動も子供っぽいから12か13歳あたりに見える。


「さて、作るか。」


俺は魔法袋マジックバックから少し高い肉と幾つかの調味料、野菜とパンを出す。

 まず肉を厚めに切って、火を通す。その間にしょうゆもどきとみりん、砂糖と混ぜる。

 そしてすりおろした生姜を中に入れて、特製のタレの完成だ。


肉に火が通るとタレをかけて、水洗いした野菜と肉をパンに挟んで完成だ。

 今回は高めの肉だからよく濃厚な肉汁が出てるな。


「はい。ゴードンさんの分とレーナの分な。」


「おぉ〜。これは食べ応えのありそうなものだな」


「ね!本当に美味しそうだよ!」


まぁこんなに喜んでくれるなら悪い気はしないな。俺も早く食いたいな。

 

「じゃあ、食うか」


“ガブ”


濃厚なタレの旨みと野菜のシャキシャキとした歯応え、溢れる肉汁がとても美味い。

 うん、今回も大成功だな。


「!!おいグレン、これすっげーウメェ!!」


「!!うん、本当に美味しいよ!!」


うんうん、2人も美味そうに食ってるし、奮発した甲斐があったな。

 やっぱり食事は美味いものを食べるに限るな。

そうして飯を食って、風呂に入る。


「あ〜、気持ちいい〜。次は美味いものを食べて温泉巡りでもするか」


だらしがない声が出て、そんな事を考える。そして風呂から出て俺はベッドでゆっくりと目を閉じる。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る