第7話 迫り来る絶望
え?どうして?・・・攻撃はされてない筈だ。アレは動いてすらない。
必死に考えていると周りが、少しだけ光ったことに気づく。
「なるほどね…やられたよ」
目の前の龍は鱗粉を飛ばしていたんだ。それも誰も気づかない様な小さく透明な鱗粉を全体に。
動かないんじゃない。 動く必要がないんだ。
だって餌として認められた時点でこの龍の中では、勝負は決まっていたのだから。
「ゴホッ!ゴホッ!…ぐっ!?」
喉が焼ける様に痛い。身体も痺れてきて、膝をついてしまった。毒を吸い込んで視界も揺れる。
多分、僕たちはもう誰も助からない。
「みんな…まだ、動ける?」
僕は3人に聞いた。
「ギリギリだけど…」
「はい…」
「なんとか」
3人ともまだ動けることを確認できた。多分、次が僕たちの最期なんだろうな。
「3人とも…最後に一矢報わない?」
僕は再度みんなに聞いた。3人も助からないと分かっているらしい。
「まぁ、しょうがないよね」
「本当は!死にたくなんかないですけどね!!」
「カーラも、早く覚悟を決めるべき」
カーラはため息をついているけど、覚悟は決まっている様だった。
全員が死ぬ覚悟を決めて、再び立ち上がり、武器を構える。
瞬間
初めて狂蒼龍が動いた。おそらく前脚での薙ぎ払い。
皆が同じ様に吹き飛んだ。
ただでさえ毒で身体が弱っているうえに、緑龍より遥かに強い攻撃をくらい、立ち上がることも出来なくなった。
あぁ、体が動かない。僕は、僕たちはもうすぐ死ぬんだろうな。
「フフ…」
どうにもならない現実を目の当たりにして、僕は笑ってしまった。
ゆっくりと狂蒼龍が近づいてくる・・・・僕は死を受け入れる為に目を閉じる。
“ドゴォン!!”
突然の轟音に僕は目を開いた・・・・目の前にはありえない光景が広がっていた。
「え?」
マヌケな声が出た。それ程までに信じられない光景だった。
こちらに近づいて来た龍が後ろに吹き飛んでいて、代わりに目の前には黒いローブに白いズボンを着けた人が立ってこっちを見ていた。
白い笑顔の仮面をつけて。
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