第3話 緑龍vs月の雫
「…いたよ」
ステラが指を指した方向に大量の魔物を捕食してた緑龍がいた。
「じゃあ、いつも通りで行くよ」
僕はそう言ってみんなに目で合図を送った。
リズに僕とステラに肉体強化の魔法をかけてもらいカーラが魔力を溜める。
僕とステラは2人に意識が向かない様に前に出る。
「あいつも気づいたね。行くよアリス」
「うん、任せてよ」
緑龍を近くで見ると、やはり大きい。パッと見ただけでも10メートルはありそうだ。僕たちは息を大きく吸って、武器を構える。緑龍はこちらに向かって突撃して来た。
口を大きくあけていたから、僕たちも捕食する気なのだろう。
「ふっ!」
「よっと!」
僕は横に回避する。ステラはそのまま緑龍の下に潜り前脚と後脚に攻撃していく。
すかさず、緑龍の顔に剣を叩き込んだ。
「はぁっ!!」
緑龍は少し体勢を崩したが、すぐに持ち直した。良く見ると僕たちが攻撃を加えた顔と脚は鱗に傷がついた程度。
「やっぱり硬いね」
「うん、脚も硬かったから•••••多分鱗に覆われている所は同じくらい硬いと思うよ。」
僕たちの今回の役割はダメージを与えること。カーラが緑龍を倒せるだけの魔力の溜めの時間を稼ぐことの2つだ。
「じゃあ僕たちも2人に意識が向かない様に攻撃していこうか」
「オッケー、任せてよ」
〔グルルルル〕
緑龍は餌を見る目から敵を見る目に変わって低く唸る。僕とステラは回避と攻撃を繰り返した。前脚で踏み潰そうとするのをステップで避けて、尻尾で薙ぎ払いをいなす。
ブレスでの攻撃は、一方が引きつけてもう一方が顔に攻撃をして逸らす。緑龍の身体は至る所の鱗が砕け、出血もしている。
「くっ!?」
すると緑龍が飛び、ブレスを吐こうとしている。
恐らく辺り一面を焼くつもりなのだろう。
・・・けどもう遅い。
「溜まりました!行きます!!」
『
カーラが呪文を唱えると緑龍の周りに巨大な竜巻が発生して緑龍を覆った。緑龍は断末魔を上げて、切り刻まれながら地上に落ちる。
暴風刃は魔力量によって大きさ、威力が変わるがあれほどの大きさならば、普通の魔物ならば何も残らない。
その証拠に周りの地面はどんどん抉られて緑龍の体がどんどん下に沈んでいく。
==========
しばらくすると竜巻が消えて、抉られて掘り下げられた地面と血だらけの緑龍が中に倒れていた。
しかし満身創痍ではあるが確かに生きている。
「驚きました。あの規模の
カーラは冷静な口調でじっと緑龍を見ていた。
「「なっ!?」」
「ッ!?」
カーラとリズは驚いた様な声を上げた。ステラも驚いた様な表情だった。実際に僕も信じられなかった。あれだけの魔法を浴びて緑龍は立ち上がった。
しかも血だらけでありながらその眼はまだ殺意を滲ませている。
これが龍種・・・・タフなんてものじゃ無い。僕たちは最大限警戒しながら緑龍と睨み合う。決着はもう少し先の様だ。
緑龍の身体は傷だらけで体力もほとんど残っていないだろう。立っているのもやっとの状態だった。
「ふー……」
僕は目の前の敵に集中する為に深く息を吸う。誰も油断も慢心もしていない。追い詰められた生き物は何をするか分からないことを知っているから。
“シュウウウウウ”
緑龍の口の中が赤く光り出す。龍は目の前の敵を一気に焼き払う為ブレスを吐こうとしていた。
僕たちはブレスが当たらない様に避けようとしたが僕たちに攻撃が来ることは無かった・・・・
「「は?」」
「え?」
「っ……!」
僕とステラ、カーラがマヌケな声を出す。リズは、もはや声すら出せずにいた・・・・・
緑龍は死んだ・・・・・・
いや、正確には殺された・・・・・
[目の前の新たな龍によって]
新たな龍の脚元に緑龍の死体が転がっている。龍は通常ならば緑龍・赤龍・青龍のいずれかに分類される。
しかし永い時を生きてきた龍や、強くなりすぎたモンスターなどに”個体名”が名付けられ、討伐の難易度は跳ね上がる。
その龍の見た目は、全身に青い鱗を纏っている。翼もただ飛ぶだけではなく、新たな脚としての機能があるように見える翼脚。口から生えた2本の大きな牙は、全てを貫くことが出来そうだった。
頭部には横に伸長して、上方に反り返っている。青い角が生えている。
僕はこの龍を知っている。
一定の場所に留まらず、世界中を渡り歩く龍。
〔推定ランク10〕
[龍を喰らう龍]
「
身体能力は赤龍と変わらないと聞いている。しかしこの龍の最大の特徴は体内で生成された”毒”である。
その毒は普通の人間ならば30分程で死に至る程の速効性を持ち、特効薬も解毒薬も存在しない。
つまり毒に侵された時点でまず助からない。
「はぁ…本当に最悪だ」
その龍は静かにじっとアリス達を見ていた。まるで品定めでもするかの様に・・・・
アリス達は認められた。・・・・認められてしまったのだ。
新たな餌として。
「ッ!?」
咄嗟に武器を向けるが本能が告げていた・・・コレには勝てない。
逃げろ…と・・・・
けれど目の前の龍は逃げることを許さない。背を向けたら、殺される確信があった。
もはや戦うしか道が残されていない。
それはみんなも分かっていたからこそ、迎撃態勢をとっていた。
けれど緑龍との戦いと、目の前の龍の存在によってみんなの顔色は蒼白となっている。
“ピチョン”
汗が落ちたと、同時に全員が攻撃を仕掛ける。
「「はぁッ!!」」
「『アイスニードル』!!」
「エンチャント、ステータスUP!」
僕とステラは前に出て脚を、狙い機動力を削ごうとする。カーラは速効性のある氷の刃で翼を狙う。リズは、魔力を大量に消費する代わりに全能力を一定時間上げる魔法を全員にかけた。
“ガキィン”
けれど意味が無かった。僕の剣もステラの短刀もカーラの魔法でも傷1つかなかった。
「ぐっ!?」
緑龍でもあれほど硬かったのだから当然と言えば当然だ。
〔・・・・・・〕
けれど目の前の龍は何もしてこない。不気味なくらいに見てるだけだ。
それが逆に怖かった。
ブレスか、傷をつけられたら毒に侵される。
1つのミスが命取りになるから慎重に動かなければと思っていたら・・・・
「エホッ!!エホッ!エホッ!!」
「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!!」
急にカーラとステラが咳き込み出した。僕は彼女達を見ようとする。
けれど僕とリズも同じ様に咳き込んでしまって振り向けない。
「なッ!?」
咳をすると血が混じっていた。僕はその不可解な現象に思考が止まった。
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