第2話 ランク9昇格クエスト
アリスたちは全員たちの視線が集まっている中でも平然としている。あいつらは注目されていることに慣れているのだろう(俺だったらたぶん吐く)。
そのままなんてことない表情のまま依頼書を受付嬢の所まで持って行く。
「僕達はこのクエストを受けます」
「はい。緑龍の討伐ですね。承りました」
周りがザワザワと騒がしくなっていくのを感じる。
それもそうだろう。緑龍とはいえばこの街では最高難易度のクエストだ。
龍種。
それはモンスターの中でも上位の生物だ。
龍種の中では1番弱いとされるのが緑龍。
だが、それはあくまでも龍種の中での話。
龍種に属する生物は例外なく、
怪物だ。
「グレン聞いたか? 緑龍の討伐だってよ」
「あぁ、聞こえたよ。やべーな」
緑龍の推定推奨ランクは8。
現在この街ではランク8はあいつら以外にいない。
王都や帝都などの大きな都市では冒険者の質が上がり、ランク8以上の冒険者もいると聞く。
だが、この街は良くも悪くも平凡かつ平和なので野心家が多い冒険者は来ない。
だからこそ、なぜあいつらがこんな街に来たのかが、理解できないのだが、これは考えても仕方ないな。
「ま、どうせ俺には関係無い話だな。龍種と戦う機会とか絶対にないし」
「ははっ。まぁ、ランク4のお前からしたら関係ない話か」
「うるせぇよ」
スピナーが意地の悪い笑みを浮かべると、八重歯がチラリと見えた。
「じゃ、クエスト行ってくる」
「俺も呼び止めて悪かったな。場所はヘイル森林だっけ?」
「あぁ、そこで合ってるぞ」
「気をつけて行ってこいよ」
そして俺は冒険者ギルドを出た。今日も一仕事頑張るかぁ。
ーー
グレンがギルドから出発してから、しばらくするとスピナーが思い出した様に…
「あれ? そういえばヘイル森林って緑龍の討伐場所のロイア山脈と大分近いよな?」
あいつは大丈夫なんだろうか? スピナーはしばらく、うーんと唸る。
「まぁ、あいつなら大丈夫だろ」
グランならばなんだかんだ無事に帰ってくるだろう。スピナーは何か吹っ切れたかのような顔をして席を立ち、クエストへ向かった。
ーー
「ふぃ〜、やっと着いたぁ」
しばらく歩くと緑の木々が生い茂っているヘイル森林についた。着いたのは良いがーー
「??……なんかいつもと違う気がするな」
なんかいつもと違う感じがする。
ーーなんだろうか。例えるのが難しいが、こう、胸が胸がざわつくような、嫌な感覚だ。
「……まぁ、大丈夫か」
危ないならさっさと逃げれば良いだけの話だ。あんまり深く考えても仕方ない。
============
「……やっぱり、おかしいな」
しばらく森の中を散策してもオークが一匹も見当たらない。探知魔法を使って探ったが、オークの気配は掛からなかった。
「はぁ、もう少しだけ探知魔法を広げるか」
この魔法は広げすぎると情報が頭に入りすぎて頭痛がするんだよなー。
頭が良いやつなら、なんともないらしいが、嘘だな。
だってIQが五十三万もある俺が頭痛するのだもの。絶対にガセだ。
俺は絶対に認めない。
まぁ、背に腹は変えられない。俺はため息をついて探知魔法を更に広げて行く。
そしてやはり、頭痛がきた。
「ん?なんだ?」
▲▲
「みんな、もう少しで緑龍の所に着くよ。」
僕たちのパーティ、月の雫は緑龍の討伐のためロイア山脈へ向かっている。
「アリス〜、おんぶして〜」
後ろから気だるそうな声が聞こえる。後ろを振り向くとリズが左右に大きく体を揺らしながら歩いている。
そのリズの後ろにいたカーラが呆れ顔でリズを見る。
「リズ、もう少しなんだから頑張って下さい。貴方はもう少し自分で動く努力をしないと」
「え〜。めんどくさい」
「まったく、そうやってめんどくさがって。太りますよ」
「むぅ、カーラはいつもうるさい。そんな小言ばっかり言ってるから、いつまでも胸が小さい」
「っ!? 私は平均ですよ!」
「たぶん、平均もない。身長もそんなにないし!」
「っ〜!! 身長のことは貴方に言われたくありません! そもそも私は小さくありません!!」
2人はいつもこうやってじゃれあっている。僕はいつもこの光景を微笑ましく思う。居心地の良い空気感に浸っていると、いつのまにかじゃれ合いは終わっていた。
そして、リズが嫌悪感のある表情に変わっている。
「ギルドの男連中……また私達のこと見てた。」
「……確かに、あの遠慮のない視線はとても不快です」
カーラも嫌そうな顔で眉を顰めて同意していた。僕も同意だ。男達のあの体を舐め回す様な気持ち悪い視線は吐き気を催す。
僕たちのパーティは、みんな顔も整っていて、とても魅力的だ。周りから羨望の眼差しで見られていることも自覚している。
だが、容姿が整っていても良いことだけではなかった。
男達からは気持ちの悪い視線をぶつけられることが多い。女性の冒険者からは嫉妬の目で見られることもあった。
それは冒険者を始めてから今に至るまでずっとだ。
最初の方は女性だけのパーティといった所もあり、男連中からも良く絡まれていた。
『俺がパーティに入ってやるよ』
『へへ、そんな体して誘ってんのか?』
そんな言葉と共にランクの低い僕たちはずっと舐められていた。見下した目や下卑た視線を隠そうともせずに上から目線の男たち。
今でこそ、絡まれることも無くなりはしたが、あの視線だけはずっと慣れない。
本当に気持ちが悪い。
だから僕たちは男性が好きじゃない。街で広まっている噂の通り、僕たちは男が嫌いだ。
どれだけ、取り繕っても男の本質なんてそんなものだ。
ーーだから、僕は2度と男を好きになったりしない。
そんなことを考えていると偵察に行っていたステラが戻ってきた。
「緑龍はロイア山脈にいたよ。けど」
「けど?」
「動きが少しおかしいんだ。辺り一面の魔物を捕食
してたよ。」
「それは、確かに妙ですね」
カーラが言う様に少し妙だ。龍種は賢いから、自分の縄張りの生態系を無闇に荒らしたりしない。
それこそ異常事態などが発生しない限りは。
「うん、まるで一刻も早く魔力を得ようとしてるみたいだったよ」
「うーん」
僕はしばらく悩んだが、一向に答えは出せない。ここはみんなのみんなの意見も聞くべきだろう。
「みんなはどうするべきだと思う?このまま進む?
それとも1度引き返す?」
しばらくみんな考え込んでいたが、カーラが意見を出した。
「私は、このまま進んだ方が良いと思います。
万が一にも緑龍が赤龍に進化してしまったらーー」
「それは、確かにそうだね」
あの街にはランク8の冒険者は僕たち以外にいない。
それの意味は、赤龍に進化するとあの街は確実に壊滅する。
そうならない為にも早めに手を打つべきだろう。
「私も同意」
「うん、私も同じ意見だね」
リズとステラの意見も一緒みたいだ。
「決まりだね」
僕は意見が纏まったことを確認してパーティ全員で
緑龍の所へ向かう。
—————————————
しばらくはアリス達の視点が続きます!!
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