第9話 最高傑作



“ギィイイイ”


 このような場所では、聞こえる筈のない・・・・が開く音がする。



 そして俺の目の前の空間が・・・開いた。中には、2つの武器が入っている。

 俺はその1つを取り出した。



 ・・・・・その武器は小手だ。黒く、とてもじゃないが装着できるような大きさではない。


 その武器は剣のように切り裂くことは出来ない。魔導士の杖のように、魔法の威力を底上げしてくれる訳でもない。


 その武器を両腕に付ける。すると腕に合わさるように小手は縮んでいく。


 ・・・そしてこいつは魔力を流すことで初めて真価しんかを発揮する。

 流す魔力の量によって威力が変わるが、毒を持ってるこいつにはこれが適してる。





    あの空間に入れている2つの武器は俺のだ。

 

 この武器を使うと、周りに大きな影響を与えるからあんまり使いたくないがしょうがない。

 初めてこれを全力で振るった時は、嵐が過ぎ去ったような凄まじい破壊のあとを残した。



 だから……こう名付けた・・・・



「……嵐壊らんかい





“ギュィイイン”


 俺は魔力を流す。・・・すると腕の部分が音を鳴らしながらながら風を纏う。

 どうやら目の前の龍には、この武器の力がわかるらしい。

 怯えたような、表情で翼を広げて空へ飛んで逃げようとする。


「逃す訳がないだろう…」


 俺は龍の目の前まで跳躍した。そして、龍の横顔に拳を叩き込む。


 拳の力と嵐壊の風圧が同時に龍を襲う。



 ・・・・風圧と拳の力によって龍の首が吹き飛んだ。首の無くなった龍がゆっくりと地上に落ちる。


「ふぅ…」


 俺は息を吐いて、首の無くなった龍に近寄って死んだ事を確認する。

 嵐壊の威力の方は抑えたから首が飛ぶ程度で済んだ。


「死んでるな…」




          『閉門へいもん





“バタン”


 音を立てて閉じる音がする。手に付けていた武器もいつのまにか消えていた。



 稀に生命力の強い奴は、首がなくなっても動くから確認は大事だな。

 俺は4人が、嵐壊らんかいの風圧を受けてない事を確認する為に近づく。


「大丈夫だな…」


 4人の無事を確認しに行くと、またぽかーんとした顔で見ていた。

 今日だけで何回この顔を見たんだ?


「あの…ありがとう、おかげで僕たちは助かったよ。」


「正直、目の前で起きてもいまだに信じられないけど、とりあえずありがとう。」


「あの…助かりました。ありがとうございます。」


「…ありがとう」


 4人から、お礼を言われた。ならその不審者を見る目をやめてほしい。俺は一応あんたらを助けたんだから。

 

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