第6話 緑龍と???



 緑龍の身体は傷だらけで体力もほとんど残っていないだろう。

 立っているのもやっとの状態だった。


「ふー……」


 僕は目の前の敵に集中する為に深く息を吸う。誰も油断も慢心もしていない。

 追い詰められた生き物は何をするか分からないことを知っているから。


“シュウウウウウ”


 緑龍の口の中が赤く光り出す。龍は目の前の敵を一気に焼き払う為ブレスを吐こうとしていた。




僕たちはブレスが当たらない様に避けようとしたが僕たちに攻撃が来ることは無かった・・・・



「「は?」」


「え?」


「っ……!」



 僕とステラ、カーラがマヌケな声を出す。リズは、もはや声すら出せずにいた・・・・・






       緑龍は死んだ・・・・・・






    いや、正確には・・・・・








     [

 






 新たな龍の脚元に緑龍の死体が転がっている。龍は通常ならば緑龍・赤龍・青龍のいずれかに分類される。



 しかし永い時を生きてきた龍や、強くなりすぎたモンスターなどに”個体名”が名付けられ、討伐の難易度は跳ね上がる。


 その龍の見た目は、全身に青い鱗を纏っている。翼もただ飛ぶだけではなく、新たな脚としての機能があるように見える翼脚。口から生えた2本の大きな牙は、全てを貫くことが出来そうだった。

 頭部には横に伸長して、上方に反り返っている。青い角が生えている。




 僕はこの龍を知っている。




 一定の場所に留まらず、世界中を渡り歩く龍。




        〔推定ランク10〕






        [




狂蒼龍きょうそうりゅう……」



 身体能力は赤龍と変わらないと聞いている。しかしこの龍の最大の特徴は体内で生成された”毒”である。


 その毒は普通の人間ならば30分程で死に至る程の速効性を持ち、特効薬も解毒薬も存在しない。




 つまり毒に侵された時点でまず助からない。



「はぁ…本当に最悪だ」


 その龍は静かにじっとアリス達を見ていた。まるで品定めでもするかの様に・・・・



 アリス達は認められた。・・・・認められてしまったのだ。





 

  新たなとして。




「ッ!?」





 咄嗟に武器を向けるが本能が告げていた・・・コレには勝てない。  



 逃げろ…と・・・・



 けれど目の前の龍は逃げることを許さない。背を向けたら、殺される確信があった。

 もはや戦うしか道が残されていない。



 それはみんなも分かっていたからこそ、迎撃態勢をとっていた。

 けれど緑龍との戦いと、目の前の龍の存在によってみんなの顔色は蒼白となっている。






“ピチョン”


 汗が落ちたと、同時に全員が攻撃を仕掛ける。



「「はぁッ!!」」


「『アイスニードル』!!」


「エンチャント、ステータスUP!」



 僕とステラは前に出て脚を、狙い機動力を削ごうとする。カーラは速効性のある氷の刃で翼を狙う。リズは、魔力を大量に消費する代わりに全能力を一定時間上げる魔法を全員にかけた。





“ガキィン”


 けれど意味が無かった。僕の剣もステラの短刀もカーラの魔法でも傷1つかなかった。



「ぐっ!?」



 緑龍でもあれほど硬かったのだから当然と言えば当然だ。




〔・・・・・・〕



 けれど目の前の龍は何もしてこない。不気味なくらいに見てるだけだ。

 それが逆に怖かった。



 ブレスか、傷をつけられたら毒に侵される。

1つのミスが命取りになるから慎重に動かなければと思っていたら・・・・


「エホッ!!エホッ!エホッ!!」


「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!!」



 急にカーラとステラが咳き込み出した。僕は彼女達を見ようとする。

 けれど僕とリズも同じ様に咳き込んでしまって振り向けない。


「なッ!?」


 咳をすると血が混じっていた。僕はその不可解な現象に思考が止まった。


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