第10話 妹(仮)との初コンタクト

「どうも火鼠ひねずみころも・・・火鼠司の妹です」


俺達の前に現れた茶髪ロングの少女、火鼠衣は笑顔で自己紹介をした。

そしてまだこの妹(仮)に会っていなかったバードと巧はというと。


「おいおい司・・・お前こんな可愛い妹がいたなんてな。どうも俺は牛島巧だ」

「バード・セーレです、以後お見知りおきを」

「はい!よろしくお願いします」


っと笑顔を振りまく衣・・・その振る舞いは実にお淑やかな妹というのをアピールしている感じである。


「あの・・・すみません少々兄をお借りしても良いでしょうか?」

「ん?いいぞいいぞ、だが説明会には間に合うようにな」


恥ずかしそうにモジモジとしたしぐさでお願いをするとレオンが即答で答えて俺の背中を押して部屋から追い出した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて、ようやく妹(仮)と対面を果たした俺達であるが何から話せばいいんだ?


「改めて初めまして・・・レノさんから聞いていると思いますが私があなたの妹の火鼠衣です」


さっきまでのぶりっ子な態度とは打って変わって落ち着いた感じで俺に自己紹介をしてきた。


「火鼠司だ・・・一応君の兄となっているが。そっちが本性か?」

「んーどっちでしょう?」


今度は小悪魔風に言ってくる・・・なんというかキャラが読めない。


「そうか・・・なら自己紹介も済んだしこれで解散だな」

「ああ!ごめんなさい!調子に乗りました!お願いがあるので聞いてください!」


今度はダメっ子キャラかよ・・・コレが素か?


「あのー・・・昨日の戦いはお見事でした。まさかレッサードラゴンを撃退するどころか討伐してしまうなんて思いもしませんでした」

「まあ俺も撃退でストップすると思っていたがなんか倒せてしまったってのが感想だな」

「私!リベラル・ラブの大ファンで特に『ミラカコ』カップルのシナリオが大好きなんです!」

「へーそうなんだ」


まさかこの世界で他者からリベラル・ラブの言葉が聞けるとは予想できなかったが、このテンションからして相当やり込んでいる方だろう。


『ミラカコ』というのは未来光と過去空のカップリングの呼び名。

光ルートのシナリオだと光がメインキャラなら空はメインヒロインという立ち位置になる。あのシナリオは制作陣もかなり気合が入っていたのかイベントシーンがかなり多く、BGMも豊富だったな。リベラル・ラブの人気投票でも常にトップ5に入っており、カプリング投票もダントツで1位だったな。


「それで司さんがチームを結成したと聞いて是非私もその一員に入れて欲しいのです!」


鼻息を荒くしながら真直ぐ俺を見て頼み込む衣。

それが本題のようだ。


「チームを作ったと言っても昨日作ったばかりで活動とかもしていないないぞ」

「だからこそです!『学園自警団(自称)』の立ち上げは光ルートの一つ!私は間近であの二人がどのようにくっ付くのかを見守りたいのです!」


なるほど・・・つまりこの子は推しカップルを見守るためにチームに入りたいのか。


「言っとくが俺達のチームの目的は例の事件の真相を知る事だ」

「え?だったら『』だって教えちゃえばいいじゃないですか?私、光ルートなら50回くらい周回しましたから。そして全部ミラカコエンドにしています!」


こいつガチの推し活プレイヤーじゃないか!

というかさりげなくネタバレを伝える気か?それはダメだ!


「シナリオ通りに進めるつもりだからネタバレはダメだ。それと、お前友人プレイヤーだったのか」

「はい!推しの為なら時間はいくらでも費やせます!」


友人プレイヤー・・・それは自身の恋愛と学園生活を犠牲にしてNPCのカップリングを成功させるためにプレイする人の事。相手に的確なアドバイスを与えてライバルキャラへの好感度を上げさせたりする・・・傍から見ればまさにゲームに登場する友人キャラのようなポジションからそう呼ばれている。


リベラル・ラブの遊び方は人それぞれで、自信がNPCと結ばれるためにプレイする者もいれば、カップルを成立させるためにプレイして楽しむ者もいる。

俺もイベントシーンコンプの為に友人プレイはけっこうしたな。


「まあ理由は分かったが、さっきも言ったようにチームの目的は例の事件の真相を解き明かすことだ。そうなればあのレッサードラゴンの時のように戦闘は起きるぞ」

「大丈夫です!レノさんに頼んで私の魔力はチート級ですから!」


衣は自慢するように言う・・・こいつチート能力貰っていたのか。


「戦闘は任せてください!それをアピールするためにこの授業の説明会を受けたわけですし」

「分かった・・・お前の希望は皆に伝えておくが、あまりやりすぎるなよ」

「はーい!お兄ちゃん大好き!」


そう言って俺に抱き着いて来る衣であるがすぐに複数の視線を感じゆっくりと首を後ろへ向ける。


「へぇ・・・随分と兄妹仲がいいのですね」


宝姫を初め光達が扉から顔を半分出した状態でこっちを覗いていた。


「しばらく司の事は『シスコン』と呼ぶことにしましょう」

『賛成』


宝姫の黒い笑みを見せながら提案し全員が同意する。

この腹黒お嬢!何言いだしやがる!


「ふふふ、面白い学園生活が始まりそうだね

「へいへい」


もう疲れたので説明会をバックレようと思った俺であった。

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ヒロインはやるからモブ(嫁)をくれ!! 緑葉 @pikajima

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