第9話 選択科目
結局妹(仮)が現れる事は無く授業が開始される。
「今日からお前達の
前髪で片目が隠れているやや暗めな教師のサイクス先生。ゲームではサイクロプスというあだ名が付けられていたが外見はヒョロっとしており野蛮なモンスターのサイクロプスとは真逆である。
「昨日は大変でしたが皆さんが安全に学園生活を送れるように学校側が責任持って行動に当たりますのでご安心ください。それではプリントを配りますので一枚ずつ取ってください」
そう言ってサイクス先生が全員に一枚の紙を渡す。
内容は俺達が受ける選択科目のリストだった。
「
サイクス先生が簡単に内容を説明するがリストには大量の科目名が記載されておりとてもじゃないがすぐには選べそうにはない。当然俺以外の生徒達もその数に驚いており隣の生徒と相談したりしている。
「先生数が多すぎて決められません!」
「・・・でしょうね。なので今日と明日は学科説明会を設けていますので興味がある科目の説明会に参加してみてください。説明会が行われる教室はこちらの用紙に記載されています」
サイクス先生が二枚目の用紙を配り終わるとすぐに部屋から出ていこうとする。
「それでは私は研究所に行きますので皆さんそれぞれの判断でどの説明会に行くか決めてくださいね。説明会は次の時限からですので鐘の音が鳴ったら移動してください」
そう言い残してサイクス先生は部屋から出ていき、俺達生徒は残されたのだった。
教師がそれでいいのか?監視とかいらないのか?
そう心配した俺だったが幸いすぐにクラスから抜け出そうとする生徒はおらず皆どの説明会に行こうか相談していた。そしてレオン、バード、巧も俺に近づいて科目の相談をしてきた。
「なあ司、どの科目を選ぶ?俺は『サバイバル技術(実技)』っての受けようと思うんだが」
「僕はこの『肉体言語研究(物理)』というのに凄く興味がありますね」
「二人とも物凄く独特な科目選ぶな。俺は『魔術研究I』を学びたいな」
等々三者三様にそれぞれが自分の興味ある科目を提案してくる。
「悪いけど俺はもう決めているんだ」
「え、もう?説明会を受けていないのに?」
巧は不思議そうに俺を見るが、イベント発生が起こりやすい授業を知っている俺としてはこのトップ3は外せない。
「えーと、『植物研究I』に『冒険者戦闘(基礎)』・・・それに『経済学I』って何だよコレ?」
「関連性が全く見えませんね。あ・・でも『冒険者戦闘(基礎)』は僕も興味あります」
「司もしかしてあの戦闘を経験して冒険者にでもなろうとしているのか?」
冒険者・・・この世界ではごく当たり前にある職業の一つ。仕事の内容は未開の地の調査とかでファンタジーゲーム定番のモンスター討伐や護衛とかの仕事ではない。かなり危険な職業の一つであるがロマンある仕事という事で人気がある。
「確かに司なら選んでもおかしくないか。『植物研究I』も『薬物調合』を受けるのに必須科目だし」
「でもなんで『経済学』?お前会社でも運営するのか?」
「いや・・・勉強しておいて損は無いと思ってね」
まあぶっちゃけ役に立つのは間違いないしこの授業に行けばあの子に会える可能性は高い。
「まあ司自身が考えて選ぶならいいか。じゃあ説明会にはいかないのか?」
「んー一応受けようと思っている科目の説明会には参加する予定。どういう生徒が参加するのかも確認したいし」
「じゃあ『冒険者戦闘(基礎)』の説明会は一緒に行こうぜ」
「あ、僕も行きたいね」
「じゃあ俺も」
というわけで俺達は『冒険者戦闘(基礎)』の説明会を見に行くことにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんか思ったよりも人数が少ないな」
『冒険者戦闘(基礎)』といえばゲーム内でも人気科目であり教室も一回り大きいはずなのに集まった生徒達は目視で数えられる程度。
まあその中には当然彼らもいるのだが。
「あ、司にレオンも来たんだね」
俺達に気付いた人物、未来光は俺と目を合わせると嬉しそうに近づいてきた。
彼の後ろには空もおり、その奥の方には戦国、大気、宝姫にサヤが席に座っているのが見えた。
「後ろの二人は?」
「ああ、紹介する俺のクラスメイトの・・・」
「牛島巧だ」
「バード・セーレです」
「未来光・・・クラスは1組」
そう言って光は二人に握手を交わす・・・随分とコミュ力が高いな。
「ねぇ司のクラスで説明会を受けるのって4人だけ?」
光に言われて気付いたが確かに俺達以外の生徒がここには来ていない。
「・・・そう言えば俺達以外来ていないな。他の説明会に行ったのかな?」
「どうなんでしょう?『冒険者戦闘(基礎)』は人気科目の一つです。真っ先に説明会に参加すると思うのですが」
「もしかしたら説明会を受けなくても入ることを決めているから来ていないとか?」
「いやそれでも聞くべきだろ?」
レオンや巧も疑問に思っているようだがこれは生徒個人の自由だし・・・
「あ、あの良いでしょうか?」
俺達の会話に挟み込む世におずおずと手を上げて発言した空。
「実はさっき聞いたのですが、どうやら昨日の戦いで1年生たちが怖がって受けなくなったんじゃないかって噂していたようで」
『あ~』
俺達はなんか納得した感じで口を揃えた。
冒険者ともなれば危険な地での調査が主な仕事となる。そうなれば昨日のレッサードラゴン・・・それ以上の脅威との戦いも起きる可能性が高い。冒険者になった者達もそういった経験で辞める者が多いという設定だった。
「まぁどの道授業を受けるための試験とかもあるみたいだし。昨日の時点でふるいにかけられたと思えばいいんじゃない?」
「そうだね、そう考えるとここに集まった人達はそれでも冒険者になろうとする人か相当図太い神経をしているくらいだろうね」
バードの言葉に全員が頷く。
「あら?誰が図太い神経ですって?」
俺達の会話を聞いていたのか宝姫達もやって来て会話に参加してきた。
女性に図太いと言ったのが失言だと思ったのかバードはすぐに弁解する。
「い、いえ。いるかもしれないという話だけで・・・平成さんは何故この授業に?」
「ふふふ・・・まあ言うなれば優秀な人材を見つけるためとでも言っておきましょうか。この学園を卒業した冒険者志望の生徒はどれも優秀ですから」
堂々とヘッドハンティング目的という宝姫は流石と思う一方でそんな理由で参加でいいのかと少し疑問に思う。
「あら?ここでは護身術も学べるのですから覚えておいて損はありませんよ。実際そういう目的で入った人もいたそうですし・・・まあ、今年の一年生は随分と軟弱な生徒が多そうですが」
空席が目立つ部屋を見渡し宝姫はため息をついた。
「戦国は受けそうっと思ったが大気まで参加するのは意外だったな」
「僕はあの体験で逆に受けないとって思ってね」
「まあそういう考え方もあるか」
そんな感じで昨日の騒動の中心メンバーとバードと巧も合わさりちょっとしたグループが出来上がっていた。
ゲームでは無かったシナリオだったがこれはこれで楽しいし面白い。
そんな風に思っていると俺達の方へ一人の少女が歩いて来た。
茶髪ロングで一目で美少女と言い切れるような容姿をしている。
「あらあら、皆さん集まって仲がいいですね」
はて?こんな生徒ゲーム内でいたかな?
ニッコリと笑う少女を見た光達はすぐに俺の方へ視線を向けた。
え?どういうこと?
「どうも
妹(仮)まさかのここでの対面であった。
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