第8話 初登校

異世界生活2日目。俺は今までに感じた事もないくらい爽快な気分で目が覚めた俺は寮の食堂で朝食を食べていた。


「スゲー、ゲームでも味を感じる事は出来たけどやっぱり実際に食べてみるのとじゃ違うな」


『リベラル・ラブ』はヘルメット型のコントローラーを使ったいわゆるフルダイブタイプゲーム。脳に直接感覚が伝わるから実査に食べるとは違うかそう感じる事は出来る。


昨日は疲労とかで晩御飯とか食べられなかったしこれが俺の胃世界初の食事となる。

とまあ現実逃避で食事に集中する俺だがやはりというか周囲から視線を感じる。


だが俺が周りを見渡すとすぐに周囲は俺の視線を外そうとしていた。


ナニコレ?イジメ?


「っよ、ここ空いているか?」


そう言って俺の前に来たのは二人の男。

良かった普通に話しかけてくる人もいた。


一人は筋肉を強調するかのようにタンクトップに開いた学生服を羽織った男性。

もう一人は眼鏡をかけて知的クールアピールのように片手で眼鏡を上げる。

外見で言えば体育会系と理系を擬人化したような感じだ。


「いいですよ」


俺が許可をすると二人はそのまま俺の前の席に座る。


「俺は牛山うしやまたくみだ、同じ一年生フレッシュマンだよろしくな」

「僕はバード・セーレ、同じく一年生フレッシュマンです。火鼠司さんですよね、昨日の活躍は見ました」


巧とバードと名乗る二人・・・この二人も登場人物だったな。別名『ギャップコンビ』。巧はこの肉体を持ちながら運動音痴で代わりにかなり頭が良く学力は学年の上位に入るほどの頭脳派。そしてバードは逆に運動神経抜群だが補習常連で『能筋』とも言われている。


プレイヤー側からは二人の設定が入れ替わっているんじゃないかとか噂されていた時期があるが次第に受け入れてなんやかんやで人気があるキャラ達である。特に腐に通ずる者には5本指に入る組だとか。


「昨日の活躍ね・・・俺は戦っていないよ」

「だけど指揮は取っていただろ?君が指揮を執るようになってから的確にレッサードラゴンを追い詰めていた。初めての連携のはずなのに君は皆の動きを把握しているように見えた」


やはり巧はこの見た目でかなりの分析力を持っているようだ。


「たまたまレッサードラゴンの生態を知っていただけだよ・・・後は相手の動きを見ての出たとこ勝負だけど」


ぶっちゃけゲームではレッサードラゴンは忘れるくらい討伐しまくったから、行動パターンとか記憶に焼き付いているんだけどな。


「僕も戦いたかったが巧に邪魔されたからいけなかった」

「あのな、俺達は会場の一番上の席にいたんだぞ。あそこから飛び降りていこうとしたら当然止めるっての」


やはりバードはアホのようだ。


「そう言えば司はどのクラスなんだ?俺達は3組だが」

「えーと俺も3組だったはずだ」


携帯端末で学園から送られてきたメールを見て自分のクラスを再確認する。


「そうだったのか。昨日はあんなことがあったからな・・・本当だったら昨日俺達は会っていたはずなのにな」

「まあ一日違いですしこれからの学園生活からすれば大差はありませんよ」

「そうだね、改めてよろしく」


そう言って俺達は握手を交わして食事を始める。


「そう言えば二人はどうして俺に話しかけてきたんだ?なんか俺周りから避けられているみたいなんだが」


ふと思った疑問を二人に投げ、周囲を見渡すとまた皆が目を合わせないように視線を逸らす。


「そりゃお前・・・昨日の有名人とお近づきになりたいけどどう接していいか分からないからじゃないのか?少なくとも俺はバードが話しかけようと動かなかったら同じようにしていたかもな」


ぶっちゃけたように話す巧の言葉に俺はバードを見る。彼はまったく気にしている様子もなく朝から豚骨ラーメンを食べているバード。こいつ朝から重いもん食っていやがる!


「俺達がこうして話している訳だし多分次第に話しかけてくる人は増えてくると思うぜ」

「もしウザく感じていたら僕たちが守るよ」

「ははは、ありがとう」


何となく現状を理解した俺達は朝食を終えて学園へと向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やっぱりここでも視線を感じるな」


通学路でもそうだったが学園に近づくごとに生徒の数は増えるためその視線の数もまた増える。


「まあこればかしは仕方ないな。他の話題とか出ればすぐに減るよ」

「そうです・・・この学園には沢山の優秀な生徒達がいます。すぐにその人達も話題になるはずですから」

「そうだよな・・・俺達はただスタートダッシュに成功しただけ」


机に頭を乗せてため息を吐きつつそう答える。

とまあ俺が元気が無いのは視線の疲れだと思っている二人だが、実際は例の彼女が同じクラスじゃない事にショックを受けていたのだった。


来る途中でいくつかの部屋を覗いたが彼女らしき女子生徒は見つからなかった。だがあの会場にいたんだし一年生フレッシュマンなのは間違いない。となれば俺が見ていないクラスかまだ来ていないという可能性がある。


そう言えばレノが言っていた俺の妹も会っていないな。


「おーっす!司じゃないか!一緒のクラスで嬉しいぜ!」


っと俺の心境を気にせずに話しかけてきたのはレオンだった。


「レオンも3組だったのか」

「おう!ちなみに光と空は1組。戦国、大気、宝姫、サヤが2組だな」


これはゲーム通りのクラス分けだな。まあ物語の進行次第ではクラス替えイベントとかもあるからそこまで気にしないが。


「ん?司もう友達が出来たのか?」


レオンは嬉しそうに巧とバードを見ると二人は少し緊張した様子でレオンを見た。


「俺はレオン・ドーム!よろしくな」

「牛島巧だ、よろしく」

「バード・セーレです」


レオンはフレンドリーに巧とバードと握手をかわす。


「そう言えば司・・・さっきお前の妹を名乗る女子生徒と会ったんだがお前に妹がいたんだな。めっちゃいい子だったぞ・・・光や戦国達にも挨拶していたし」


レオンの衝撃ニュースに俺は再び頭を机につける。


妹(仮)よ・・・兄に挨拶する前に登場人物達に挨拶しに行ったのか。

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