第7話 異世界一日目終了

「それで?チームは出来たのはいいがこれからどうするんだ?」


チームリベラーズの結成という一大イベントを終えた俺達。

次に何をするかという戦国の質問に宝姫は答える。


「チームを作ったとしても今すぐ行動というわけではありません。拠点探しやトレーニングメニュー作成、情報集め等やる事はありますが今日はここでお開きにしましょう」


まあいきなり結成した訳だし今すぐ行動する必要は無い・・・というか明日から授業が始まるし、その準備もしないといけない。


「とりあえず私達の連絡先を交換しましょう」


そう言って宝姫が携帯端末を取り出すと皆もそれぞれ取り出し登録する。


「では私達はこれで」


そう言い残し宝姫とサヤが解散すると他の皆もそれぞれ挨拶して解散となった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


エト寮に戻ると入り口には神句が出迎えてくれた。


「おかえり、英雄さん」

「知っているんですね」


神句はニヤニヤとした表情で俺を見るとすぐさま俺の背中を叩く。


「学園の掲示板で話題になっていたぞ『学園の勇者達』って」


そう言って神句が学園の掲示板が表示された端末を俺に見せる。そこには光がレッサードラゴンにアッパーを食らわせている写真や俺が指示を出している姿が映っていた。


「しばらくはお前達は注目の的だろうな」


神句が寮の扉を見ると数人の寮生達が覗き込むように俺を見ていた。


「ほらお前ら英雄様はお疲れだ。部屋に寝かせてやろう」


神句が指示を出すと寮生たちは不満そうにしつつも扉から離れていった。


「お気遣いありがとうございます」

「いいてことよ・・・そうだ明日から授業だしっかり準備して、しっかり休めよ」


そう言って神句は一本の瓶を俺に渡す。


「俺お手製の疲労回復用のお香だ・・・効果は保証する」


俺はこの瓶を知っている。ゲームでは消費アイテムとして神句から貰えるものでこれを使って寝ると次の日は絶好調のステータスになるためゲーム内ではかなりお世話になったやつだ。


俺はお礼を言ってすぐに自室に戻った。

途中何人もの視線を感じたが神句のおかげで特に絡まれたり話しかけられる事は無く部屋に戻れた。


「はぁ・・・疲れた」


ベッドに倒れ込んだ瞬間疲労がドッと押し寄せてくるような気持になりしばらく身体を動かしたくない気分だった。


「ゲーム通りのシナリオだけどゲーム通りの展開ではない・・・システムの弊害が無くなるとこんな風になるのかな?」


今日の出来事を振り返って色々と考える事が多かった・・・できれば彼女と早めに接点を持ちつつイベントを進めていきたいと思っている。


「明日から授業だけど、どうなるんだろう?」


レッサードラゴンの襲来後、ゲームでは学園を徘徊する警備員の数が増えて、警察関係者の人とのフラグを建てるイベントがあったはず。だけど内容はあのレッサードラゴンが召喚された存在である事、理由は不明であるという情報があるくらいですでにそれは共有済みである。


「警察関係者とのフラグは取っておいた方がいいかな・・・後々に必要になるだろうし」


この先の流れを予想しつつ神句から貰ったお香を使おうとした時、端末からメロディが流れ画面を見ると『神様』という文字が表示されていた。


『やあやあ司君。異世界ライフ一日目お疲れ様!』


陽気なテンションで話しかけてくるレノ・・・できればこのタイミングで連絡は来ないでほしかった。


『結構大変な一日だったみたいだね、まさかレッサードラゴンと戦うなんて』

「あんた俺の行動を見ていたのか?」

『まさか、報告を受けていたんだよ君の妹から』

「へぇ、俺の妹・・・は?妹?!」


ちょっと待て!俺に妹なんていたか?いや生前は兄貴が一人いたぐらいだし、従兄も皆男だ!それに『リベラル・ラブ』の主人公の家族構成も一人っ子のはず。


「俺に妹はいないはずだが」

『それがいるんだよね・・・君と同じくその世界に行った人物だよ』


そう言えばレノが俺以外にも異世界へ行く事を持ちかけていたって言っていたな。


『主人公ポジションが男女で二つあったからね。折角だから兄妹という設定でその世界に送ったわけ』


ゲームだと男主人公と女主人公でスタート地点が違ったな。俺が男主人公で妹(仮)が女主人公ポジでスタートなのか。


「とういうかいいのか?俺は本名のままだが、その子の名前も火鼠なんだろ?」

『そこは彼女に了承を得ているから問題ないよ・・・意外と気に入っていたみたいだし』


おいおいいいのかよ。


「ちなみにその子以外に何人この世界に送られたんだ?」

『現状では君を含めて6人いるよ。ただ学生であったり教師だったり、職人だったりとバラバラに活動している』


6人の異世界人か・・・それは多いのか少ないのか分からないな。


『一応言っておくけど無理に接点を持とうとしなくていいよ。あくまで君たちはその世界で暮らしバグなど見つけたら報告して欲しいだけだから。もちろん問題解決のために協力し合うのも全然OK』


交流を持つのも持たないのも俺達次第って訳か・・・でも妹だろ?どの道接点は持つ展開になりそうだが・・・


「そういえばその子はどうして俺が異世界人だって分かったんだ?あの会場で名乗ってはいないはずだ」

『その子も君と同じ『リベラル・ラブ』を遊んだことがあるからね。登場人物以外の人が出て来てすぐに気付いたみたいだよ』


ああなるほど・・・確かにシナリオには登場しない人物が現れたらイレギュラーの存在だと気づくわな。


『まあせっかく出来た兄妹なんだし仲良くしなよ』

「妹ね・・・そういえばこの世界ってゲームの設定の強制力みたいなものはあるのか?随分とゲームと同じ展開が出てくるんだが」


正直この事を神に聞いていいのか分からないがこの先の事が分かるなら聞いておきたい。


『・・・そうだね。その世界に深く関わった以上それは伝えておくよ。答は【YES】だ。君の知っているゲームのシナリオはその世界でも適応されている。ただ君がレッサードラゴンをしたように結果は良くも悪くもゲームとは異なる結果を生み出せる』


やっぱりそうか・・・メインシナリオのこの展開はゲーム通りでありこの先もそうなる訳か。


『無論事前に対策すれば事件などは防げるけど、その結果がその先にどうつながるかまでは分からない』

「神様でも分からないのかよ」

『僕はあくまで、できた世界の管理だからね。異変が起きたら修正するだけだ』


マジでデバッグ作業みたいなことしているな。


「そう言えばレッサードラゴンとの戦闘だけど、弱点や行動パターンの特徴はゲーム通りだったな・・・逆鱗が浮かび上がっていたし」

『それはバグじゃないから大丈夫だね。ダメージ計算が無い分、生物らしい行動になっているでしょ?』

「確かに戦国が翼を切り落とした時、ゲーム以上に隙が大きかったような・・・ダメージも思ったよりも入るし」

『ゲームみたいに体の一部を失った後に平然と動けるわけないでしょ?』

「そりゃそうだ」


狩りゲーとか何度も切りかかってダメージを与えていくが普通に生物だったらとっくに死んでいるわな。逆にプレイヤーが10m以上の高さから落下しても平然としているのを見た時はホラーに感じたな。


『まあ明日から学園生活が本格的に始まるんだから楽しみなよ』

「分かった、何かあったら連絡する」


レノとの連絡が終わると再び疲れが身体にのしかかり、神句のお香を焚いて睡眠に入る。


「ああ・・・これは結構いいかも」


お香の匂いに包まれながら俺の異世界生活一日目が終了した。

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