第6話 リベラーズ
学園長からの報酬を受け取った俺達は手帳を見ながら上機嫌であった。
学園内の施設のサービス割引に学食がタダ・・・入学早々にこの待遇で喜ばないはずがない。
「やっべー!学食がタダとかマジで学園長太っ腹だな!体系はスリムだけど」
「っちょ!レオン君失礼だよ」
何度も学生手帳を眺めるレオンはハイテンションで感情を口に出している。
他の生徒達も特権で何に使おうかと話し合いをして楽しんでいる。
とりあえず食堂やレストランで発生するイベントとかはお金の心配はいらないな。あれ意外と出費がデカいから貯金とか色々と悩まされたっけ。
いやー、最初は彼らに押し付けようと思ったけど結果的に思わぬ報酬が手に入ったからこれは大きいな・・・
って!違う!
レッサードラゴン討伐してすぐに補修室へ連れていかれたけど俺あの子を助けたんだし何か一言かけるべきだったじゃん!
レッサードラゴンを助けて『お怪我はありませんか?』とかすぐに言うべきだったのに!ああ!また俺はチャンスを見逃した!
「司どうしたんだ?随分と考え込んで?」
俺の異変に気付いたのかレオンが覗き込むように俺を見る。
「もしかしてレッサードラゴンの事ですか?確かに司君の話を聞くと疑問に感じる事はありますね。都合よくあの会場に落下するのはおかしいです」
大気は俺がレッサードラゴンの事を考えていると勘違いしており、同意するように頷く。
すみません、レッサードラゴンは君たちに押し付けようと思っていましたし、今はとある女の子の事を考えていました。
まあこのシナリオに足を踏み込んでしまった訳だしこのまま乗りかかるしかないか。なるべくスムーズにシナリオを進めつつあの子が関わるイベントフラグも立てないといけないな。
「あのレッサードラゴンの件だが。ほぼ間違いなく人為的に呼び寄せられた個体だと思う」
俺がそう告げると、全員は目を見開いて俺を見た。1
「呼び寄せたって、もしかして召喚魔法?」
「多分学園長もその事には気づいていると思う。この学園には優秀な警備隊がいるし、もし学園の外から来ていたら途中で撃退されていたはず。会場の上から落下するように落ちてきたのも不自然だし」
「つまり誰かが会場の上空に召喚魔法陣を展開したって事か?狙いは生徒か?それとも学園を狙った破壊活動?」
「目的とかは今の所は分からない・・・ただ人為的に行われたのであればこれで終わりとは思えない」
俺の推測(ネタバレ)を聞いて全員は沈黙する。
本当はその先も話したいがこれ以上喋ると怪しまれるし、この先もゲーム通りなのか確証もない。
システムという枷が無くなったこの世界・・・本来会場でのレッサードラゴン戦では傷を負いながらも奴は飛び去って逃げていく。一定以上のダメージを与えたら強制的に逃亡イベントが発生・・・それがゲームシナリオの流れだった。だが俺の指示で逃げられなくしてダメージを与えたことで討伐する事に成功した。
ゲームではレッサードラゴンとの戦いは2年次で行われるイベント・・・それを序盤でクリアした場合、次のイベントがすぐやって来る可能性もあるし、無い可能性もある。
まあ俺にとって重要なのはあの子に出会えるチャンスが出るかだが・・・
「今後もあのような事件が起きる可能性が・・・よし決めました!」
宝姫はパン!っと手を叩くと何か決意した表情で俺達を見る。
「提案なのですけど、私達でチームを組みません?」
『チーム?』
宝姫の提案に俺達は口を揃える。
「ええ!きっとこの先もあのような魔物と戦う機会が訪れるかもしれません。そのためには私達はもっと力をつけるべきです」
力をつけるという言葉に全員が頷く。
「相手の行動、戦力は未知数ですが打てる手は増やしておくべきだと思います」
「それでチームと何の関係が?」
「今回の戦い、司さんの指示が無ければ私達は生徒達に怪我をさせてしまっていた可能性があります。連携の大切さを私は痛感しました、それと同時にこの方達となら何でもできると確信も持てました」
「連携、知識、技量・・・俺達は色々と不足している部分が多い。チームを組むことに俺は賛成だ・・・学べることも多そうだし」
意外にも真っ先に賛同したのは戦国だった。
「僕も賛成です。まだまだ未熟ですが楽しい学園生活を送るためにも脅威に立ち向かわないと」
「いいねいいね!こういう雰囲気俺は好きだぜ!」
「お嬢様が決めたことに某は付いていくだけです」
「俺も入る」
「え?えーと、じゃあ私も」
っと俺以外がチームを組むことに賛成する。
そして期待の眼差しで俺を見つめる。
「分かった、分かった!俺もそのチームに入れてくれ。レッサードラゴンの事とか解き明かしたいし」
っと納得したしぐさでチームに加入する。
「それで?チーム名とかあるのか?」
「それは、司さんが考えてください」
「俺?!」
まさかの宝姫からの爆弾パスに驚く。
「当然です。このチームの指令はあなたです、ならあなたがチーム名を決めてください。言っておきますけど私がリーダーを譲るなんて滅多にないんですからね!」
「司がリーダーなら俺も異存はないぜ」
「そうだね、お願いねリーダー」
とまあ全員が俺にリーダーを押し付ける形になった。
「分かったよ・・・そうだな・・・」
チーム名を考えるシナリオなんて無かったし、ゲームでも彼らの事は『学園自警団(自称)』とか出ていたし、そんな名前で呼ばれたくはない。
「・・・『リベラーズ』ってのはどうだ?」
ぶっちゃけゲームタイトルの『リベラル・ラブ』から取ったんだが。
「いいですね!リベラーズ!気に入りました」
「悪くないんじゃないか?」
「賛成です!」
とまあ全員から好評をいただきました。
『学園自警団(自称)』改めチーム名『リベラーズ』がここに誕生した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます