第4話 問題児達

入学式で発生したレッサードラゴン襲来事件・・・混乱する会場の中で数名の生徒達によって討伐。軽傷数名だが建物以外の被害は無し・・・この話題によって参加した生徒達は一躍ヒーローに・・・ならなかった。


「だは!なんで俺達が反省文書かされなきゃならないんだよ!俺達ヒーローだろ?学園の危機を救った英雄だろ?!」


俺の隣で騒ぎながらも反省文を書いている金髪の男子生徒、レオン・ドーム。彼は魔法銃を使い遠距離からの射撃でレッサードラゴンの注意を引き付けてくれていた生徒の一人だ。


そう、レッサードラゴンと戦った生徒は全員はもれなく生徒指導室へ連れていかれ反省文を書かさえていたのだった。


「レオン・・・俺達は確かに亜龍退治をしたが今思えば軽率な行動だったのは間違いない」


そしてレオンに口出しをしているのは黒い長髪を束ねた刀使いの男子生徒、守王すおう戦国せんごく。俺がステージに上がった時に逃げるように叫んだ人物だ。化粧したら間違いなく美女と間違われるほどの顔立ちの持ち主。


戦国は鉛筆ではなくなぜか筆で反省文を書いているが面倒じゃないか?


「戦国君の言う通りです・・・僕も出てしまったのであまり言えませんが。せめて先生や戦える先輩たちが来るまで持ちこたえるべきだったのではないでしょうか?」


真面目に答えるのは茶髪と少し童顔以外特徴が言いにくい生徒、江戸えど大気たいき。彼は魔法を使ってレッサードラゴンに立ち向かってくれていた。


「・・・だけど俺達が戦わなかったら多分怪我人は出ていた」


そして大気に反論するように未来光はボソリと喋る。


「つーか、お前は手とか大丈夫なのか?素手で闘っていただろ?」

「ん、大丈夫だよ。身体の丈夫さには自信がある」


光はそう言ってレオンに自分の腕を見せる。

一方男子達が喋っている傍ら女子生徒達も女子生徒達で話をしていた。


「まさか入学初日にこんなことが起きるなんて」


制服の上から豪華なカーディガンを羽織った見るからにお嬢様といった女子生徒、平成へいせい宝姫ほうきはそう呟きながら淡々と反省文を書いていく。そしてその隣で制服ではなく黒いスーツを着た女子生徒が返答する。


「だから言ったじゃないですかお嬢様。戦いはそれがしに任せておくようにと」

「あらサヤ、平成財閥の後を継ぐ私があんな目立つ場所に立たない訳にはいかないでしょ」


平成宝姫・・・ゲーム内では1,2位を争うほどのお嬢様生徒。平成財閥のご令嬢でありレッサードラゴン戦では大気と同じように魔法で闘っていた。そして氷室ひむろサヤ。彼女は宝姫の護衛でありこの学園の生徒でもある。彼女は戦いに参戦していたというよりも宝姫を守るために一緒にいたようなものだがステージに上がった時点で俺達と同じように反省文を書かされている。


「ふぅ・・・やっと終わった」


そして最後の一人、過去かこそらは反省文を書き終えた反省文を見直していた。レッサードラゴン戦では男子生徒に混ざって前線で闘っていた女子生徒だ。小柄な外見とは裏腹に身の丈以上のハンマーを振り回していたのは印象的だった。


俺を含め以上の8名が今回の騒動で暴れたメンツである。


「問題児共ちゃんと反省文書いているか?」


そんなやり取りをしていると無精ひげに眼鏡をかけた気だるそうな男性が入ってきた。


ウィリアム・スパロー、この生徒指導室担当の教師だ。普段からやる気のなさそうな言動のせいで生徒から舐められることが多々ある。


「なぁ~ウィリアム先生。俺達一生懸命戦ったんだしこんなの書かなくてもいいじゃないか」


レオンはめんどくさそうな顔をしながらウィリアムに問いかける。彼を含め自分達は悪くないと主張したそうな生徒達を見てウィリアムはため息を吐いた。


「ドーム・・・気持ちは分かるぞ。俺だって面倒だと思っているし、お前達は間違いなく生徒達を守った。だが一歩間違えたら被害がデカくなっていたかもしれない」

「『かも』ではなく実際私達は被害を0でレッサードラゴンを討伐しました。それは偉業なのではないのですか?」

「事実を突きつけられると痛いな平成・・・まあ、会場にいた教師たちの不甲斐なさは明白だ。今頃学園長にしこたま叱られているだろうな」


実際教師達も多くがパニック状態だったし、生徒を誘導する事を優先にしていた。俺達以外レッサードラゴンを足止めする大人はいなかったのだ。


「今回ばかりは学園側に問題があった・・・だから・・・」


そう言ってウィリアムは俺達が書いていた反省文を回収すると火の魔法で全部燃やした。


「反省文を書くのはこれで終わり。一応、人生の先輩として言わせてほしい。勢いで突っ走るな。今回は上手くいったが何度も通用すると思うな。俺から言えるお前達の反省点はそれくらいだな」


そう告げるウィリアムだが俺達は燃える反省文の方にした目がいかなかった。


「っちょ!じゃあ今までの時間は何だったんだ?!せっかく書いた反省文無駄じゃないか!」

「読まないで燃やすとか酷すぎませんか!」

「色々と考えて書いたのに!」


っとまあ、ウィリアムの言葉よりもやったことが無駄になった事にショックを受ける生徒達・・・まあずっとここで書いていて燃やされたら怒りたくもなるわな。


「まぁ落ち着けお前ら。反省文を書く事で自分達の行動を見直せただろ・・・意味はある。それに理由はいくつかある。あのまま他の生徒達に接触させたら色々と面倒な事になる」


まあメッチャ目立っていましたからね。


「ヒーローみたいでいいじゃん。俺は皆にもてはやされたい!」


レオンはブレることなく言うが何名かは彼に同意しているようだ。


「ったく眩しいね。それと学園長がお前達に会いたがっているから、説教が終わるまでの時間つぶしだな」


待っている間に反省文を書かせるのかよこの教師は。


そうツッコミたくなったがタイミングよくウィリアムの携帯端末からかなり渋いメロディが流れる。


「こちらスパロー・・・あ、学園長ですか?ええ、皆生徒指導室にいます・・・はい、了解です」


どうやら相手は学園長のようだ。


「学園長がお前達に会いたがっている」


こうしてこの世界のシナリオが少しずつ進むのであった。

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