第80話 一兎も得ず
「メディスン伯爵殿、大人数での訪問ご容赦ください。王家に背きしグリード侯爵、いや大罪人グリードを捕縛に参りました。大人しく縛につくのだ!」
行方不明になった前隊長に変わり急遽命ぜられた新隊長が武装して伯爵邸に踏み込んできた。
何のことかわからない伯爵と侯爵。
いつの間にか部屋にいた自称冒険者の少年ですら訳が分からない上に衛兵が部屋になだれ込んできたのだ。
最初に反応したのは、大罪人呼ばわりされた侯爵。
「貴様ら、無礼だぞ!! 私が何をしたという!!?」
「反逆者グリード、王家に納めし税金に偽金貨を混ぜるなど不敬極まりない。既に証拠も押さえてある。観念なされよ」
「バカな!! そんなことあるはずがない! 何かの間違いだ! 私はそもそも偽金貨など持っていない!!」
「東方にある領地の山奥で偽金貨を奴隷に作らせていたことも既に王家は把握している。貴族ともあろう者が見苦しいですぞ、潔くなされよ」
「! な、なぜそれを……!!」
だって僕がパーフェクトリサーチで調べてギース公爵に伝えたからね。
あんな大量の偽金貨を用意できるなら相応の施設があるんじゃないかって思ったからさ。
「違う!! 誰かの陰謀だ!! 調べ直せ!!」
「往生際が悪いよ、グリード侯爵さん、いまはもうただの平民かな。これに懲りたら偽金貨で支払なんかしないことだね」
「このガキっ、いったい何の話だ!?」
「ルビードラゴンの落札代金に偽金貨使ったでしょ。そのうえ衛兵に通報して捕まえさせようとしたりしてさ」
「お前、エンリケの手の者か!!」
「エンリケの手の者…… まあ間違ってはいないかな」
衛兵隊により侯爵とそのお供たちが拘束されていく。
「くそっ、放せっ! 私を誰だと思っている!? 私は、私は侯爵なのだぞっ! 本来ならば貴様ら如きが触れることの叶わぬ侯爵だぞっ……」
◇◇◇
衛兵隊がグリード侯爵を拘束して連れて行ったあと。
「君は、冒険者アランと言ったか。いったい何者だ?」
「メディスン伯爵様、僕はただの冒険者です。あなたと同じグリードの被害者でもありますが」
「……そうだったのか。侯爵が捕まって娘が無事なのはよいが、結局ドラゴンは手に入らなかった。侯爵の家は捜索され、今ごろ王家に没収されてしまっているだろう」
アランは、マジックバッグを取り出して伯爵に渡した。
「これは?」
「ルビードラゴンが入っています」
「なぜ、ここに?」
「僕がエンリケの名前でオークションに出してあのグリードが落札したんですが偽金貨で支払われたのでオークションを無効にしました。それで先に取り返してきてたんです」
「……だが、私には金貨150,000枚も払うことはできん」
「いや、別にいりませんよ。対価は侯爵から既にもらってますし。ギース様に聞きましたがあなたなら信用できるとのことでしたのでそのまま差し上げます」
グリード侯爵が支払いに使った偽金貨はリバースで本物の金貨になってるから僕はちゃんと150,000枚の金貨を手に入れてるんだよね。
「ありがとう!!」
横で聞いていたアニー嬢が抱き着いてきた。
錬金術師だけあってちょっと薬っぽい匂いがするけど、まあ役得ということで。
うーん、でかい。
◇◇◇
あれから錬金術ギルドは経営が持ち直したと聞いた。
それからグリード侯爵家はもちろん廃爵だ。
どこかの鉱山に一家まるごと犯罪奴隷として送られたらしい。
劣悪な生活環境に過酷な労働で事実上の死刑だ。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】
ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)
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