第79話 二兎を追う者は

 1週間後、メディスン伯爵は再びグリード侯爵の来訪を受けていた。



「腹は決まったかね。アニー嬢の姿が見えないが、まさか断るのか? ドラゴンが手に入らないぞ?」



「娘を渡すわけにはいかない……」



「ふっ、錬金術ギルドが保つのか? 経営が苦しいのだろう? ドラゴンが手に入れば一気に息を吹き返せるのだぞ」



「それは…… 別の形で必ず借りを返すからどうか娘は!」



「お父さん、私かまわないよ。グリード様のところに行くから」



 メディスン伯爵がどうにか別の方法での援助を求めたところに、アニーが部屋に入ってきた。



「アニー! ここには来るなと言ったはずだ!」



「ほう……物分かりのいいお嬢様だ。それに化粧もしていないのに美しい。我が息子の側妻に、いや本妻にふさわしいな」



「やめろアニー! 意味がわかっているのか!!?」



「お父様、私もいつまでも子どもではありません……。このまま素材が手に入らない状況が続けばいっしょに働くみんなが路頭に迷うこともわかっています。大丈夫、グリード様のところにいっても錬金術は続けますから」



「アニー……」



「フハハハハッ、素晴らしいな! やはり金だ! 金で手に入らないものなどないのだ!」



「金、金、金、貴族として恥ずかしくないの?」



「誰だ!!」



「冒険者アランです。メディスン伯爵、突然ですがこんにちは。そしてグリード侯爵、さようなら。もうすぐ衛兵隊がやってきてあなたを捕らえますから」



 そして、衛兵隊が踏み込んできた。



◇◇◇



 遡ること数日前、王宮にて。



「なんだこの投書は? 『グリード侯爵が王家に納めた税に偽金貨が使われている。至急調べられたし』だと……」



 とある文官は机の上にいつの間にかおかれていた文書の内容を見て驚く。

 その様子に気がついた上官は彼の傍に近付いて文書を見た。



「どうした? 見せてみろ。……これは、すぐにでも調べるのだ!」



「しかし、差出人もないこの怪しい投書を信じて違っていたら大変なことに……」



「これが本当だったらどうする? ここで握りつぶしたことがバレればどうなる? 王家と侯爵家、どちらが恐ろしいかわからないのか?」



「はっ、すぐに調べさせます!」



 顔を青くした文官は急いで部屋を出ていった。



「ギース様、これでよろしいのですね」



 独り言をつぶやく上官は、公爵派の者であった。



◇◇◇



 アランがギース公爵に頼んでグリード侯爵が調査されるように仕向けた。



 もちろん、グリード侯爵とてさすがに王家に納める上納金に偽金貨を使うわけがない。



 だが、アランはグリード侯爵家が王家に納めた金貨を対象に【リバース】を使って全て偽物に変えていた。



◇◇◇◇◇◇



スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】

ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)


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